マイアバターに異世界転生したら宰相だった私に救いの手を!

鏑木 うりこ

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ついてる私

6 弱小国宰相の価値

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「なあロウエル。私を売るならどこに売ればいいだろうなぁ?」

 ローテーブルの上に飲みかけのグラスを置いて、差し向かいに座ったロウエルに問うた。
 細い目が、一緒だけ人並みにくっと見開いた。

「カティス・ファディアンだな」

 ああ、良かった。全て伝わった。


 数時間前、私は突然にロウエルの屋敷を訪ねた。約束などないし、ロウエルとルーティアの予定も何も考慮せずに。
 2人は文句の1つもなく、迎え入れてくれる。
 
 私が椅子に座ると2人の愛娘のアレクシアがよちよちと膝に乗ってきた。無作法な夜の訪問で、まだ1歳半の赤ん坊には申し訳ないと思ったが、アレクシアは私の膝の上でご機嫌だ。

 長い私の髪を無遠慮に引っ張って、ぶちぶちと引きちぎって行く。容赦ねぇなー痛い。

 彼女なりの愛情をいっぱいに振りまくと、疲れたのかうとうとし始める。

「寝かせてくるわね。リィン、ゆっくりして行って」

 ルーティアはアレクシアを抱いて、寝室へ消えた。悲しみに満ちた目をしている。私達は幼馴染み、付き合いは無駄に長い。

 私が無作法に訪ねて来たその意味を悟ったんだろう。ふぇぇえ…母親の不安を感じて、アレクシアが泣き始める。
 ああ、泣かせてしまったな。最後に悪い事をしたな。

 ルーティアが退出した後、ロウエルの執務室へ移動した。サロンで話す話題でもないのだから。

「そうか」

 ロウエルはそれ以上、口を開かなかった。分かっている気付いている。どうせ駒として使うのなら、1番効率が上がるように使いたい。
 矜恃も体も一つしかないのだから。

「どうせなら、帝国の財政をひっ迫するくらい高値にしたらどうだろうか?」

 何年も共に戦い、過ごしてきた友が、その身を犠牲にすると言うのに、止める事ができない。その不甲斐なさに打ち震えながら、全てに蓋をして楽しげに言う。

「あー傾国か?それはなかなか商売上手だな」

 私はそういう性質なのだ。昔から、自分より他人に重きを置く。幼馴染みだったり、マスターのソレルだったり。

 今はこの国の全てになってしまった。大きくなり過ぎて、手足じゃ足りなくなってしまった。
 だから、全部使おうかな?と。きっと、できる事をしないと、後悔で生きてはいられない。

「いつ?」

「明日かな。決心が鈍っちゃいけないだろう?早い方が良い」

 鈍れば良いのに。ほっそいロウエルの目に書いてある。口には出さない。出しても何の役にも立たない。犬の餌にもなりはしない。 
 
 私は笑う。

「国に居つかぬ有能な男を、要石として縛っておけるんだ。こんなに安い買い物はないじゃないか?」

 そうだろう?良心の呵責と言うどす黒く重い鎖でがんじからめにして、お前を国の護りにするのだから。

「違いない。」

 ロウエルも笑う。それで良い。

「この国が私の帰る場所なんだから、家が無くなったら困るんだよ」

「ははっ確かにな」

 カチンとグラスを合わせる。



 シターン国宰相 リィン・ファランが王城の執務室から、何者かによって拉致されたと言う情報はあっという間に広がった。
 
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