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我、知る
29 ただいま 我が家
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ガタゴトと馬車は進み、とうとうロジデント王国に着いた。
「リジー」
「ついたな!助かったであるぞ!さらばじゃ!」
この国ならば我が家までの道のりくらい覚えておるわ!我はぴょんと馬車から降りて走った。早くクロードに会いたいのう!……父には会いたくないが。
「……なんだよ!あいつ!全く感傷もなしかよ!」
「あんだけしといて、あっさりすぎるなぁ」
小さくなる我の後ろ姿を見送っていた男達の声は全く我には届かなかった。
ベルスタッドの屋敷につくと、小間使いが、庭をはいておった。我の見知らぬ者であった……まあ、なんとかなるか?
「おい、お主、すまんがここの執事を呼んでくれんか?いいか、執事だぞ?間違っても主人ではないぞ?あ、ミラという侍女でも良いぞ?」
「おかしな奴だ!帰れ!」
「そう言わずに、呼んでこい。飴やるゆえ」
「いらん!帰れ!」
むう……困ったな!
「頼むからちょっとで良い、呼んでこい」
「しつこい!人を呼ぶぞ!」
「うむ、だから呼べと言ったのじゃ」
「あー!なんだお前!あっち行けよ!」
うお、ほうきを振り上げられた!やめんか!我は野良猫ではないのじゃぞ!
「やめんかー!」
「なんですか、騒々しい。奥様がお困りですよ」
懐かしい声が聞こえて来た。お、やったぞ!
「ミラか!我じゃ!リズレットじゃー!」
「?!リズレットさま?!」
ホウキで殴られようとしておる我に助けが現れた!
「あああ!!本当に!本当にリズレット様でございますか?!」
「うむ!こんなに可愛い男子は我の他におらなんだぞ?」
「その言い方!本当にリズレット様でございますのね!奥様!奥様ぁー!」
い、いかんぞ!ミラ!そのような大声をだしては!
「ミラ!ホンテイノオクサマに気取られてしまう!声を小さくするのだ!」
ミラは一瞬、キョトンとしたがにっこり笑った。
「もう、大丈夫なんです!もう我慢したくていいのです!奥様ーー!」
ミラの言う事はよう分からなんだが、奥様と呼ばれて返事をしたのは
「なんです?ミラ騒々しい。一体何の騒ぎなの?」
「母!」
「あら、どなたかしら。私を母とよ、ぶの……は……リジー!!!!」
「母!我じゃ!我!」
「リジー!リズレット!私の愛しい子!!よく!良く無事で……無事で……リジー!!」
母は我に抱きついて泣き出してしもうた。
「母はまだ泣き虫であるな!」
こうして我は久しぶりに我が家へ帰宅したのだった。
「リジー!!!!」
首の怪我の跡に薬を塗り込んでもらっている時にクロードが飛び込んで来た。
「クロードぉおおお?!」
我は見事にソファに押し倒され、クロードにぎゅうぎゅうに抱き締められた。
「リジー!リジー!私のリジー!!無事で!無事で良かった!!!!」
「うむ、帰りが遅くなってすまんの、クロード!」
「お馬鹿ーーー!お馬鹿リジー!!」
「むう!心外であるぞ!」
我も頑張ったのじゃから!
とりあえず、我はことの顛末をクロードに覚えている限り使えた。最初の事はほとんど覚えて無かった。
なにせ、母やミラに教えたら卒倒しかねん。夜の事情関係は特にな!
「まず、リジーと一緒に拐われた令嬢3名は獣人国・フェイワースで幸せに暮らしているんですね?」
「うむ。ウンメイノツガイという物凄い呪いで幸せじゃ」
運命の番ですか、とクロードは冷静だ。
「……どうしてフェイワースにいる時に、私宛に手紙を出さなかったのです?すぐ迎えに行ったのに」
「あ」
とんと、失念しておったわ!
「お馬鹿……」
泣き笑いでクロードは頭を抱えた。すまん、本当に思いつかなかったんじゃ!
「自分一人で何とかしようとした?でも、もっと私を頼ってください、リジー。私は貴方の兄で、貴方の夫なのですから」
「分かったー」
クロードは頼りになるからなー!
「……お馬鹿っ!」
「へ?!」
何故、馬鹿にされねばならん!いくらクロードでも許さんぞ!
「ところでクロード。父はどうした。あとホンテイノオクサマは?」
今、クロードと我が話している場所は父の書斎だ。しかし父の姿はなく、代わりにクロードが座っている。
「ああ、あの男なら派手にやらかしまして、領地に押し込めてあります。リジーの嫌いなホンテイノオクサマと一緒にね。いま当主は私です。リジーのお母様には色々と社交界のお手伝いをしていただいていますよ」
「そ、そうか!良かった!父がいてはまた誰かを籠絡してこいと言われるのかと思ってのう!あれは気乗りせん!」
「……もう、そんなことないから大丈夫ですよ。リジーは私の側にいてくれれば良いんです」
クロードはため息をついたり、笑ったり忙しかった。ふーん?そうなのであるか?
「リジー」
クロードに手を引かれた。
「なんじゃ?」
「しばらく見ないうちに、美人になりましたね?」
ん?そうであるか??
「まだまだ可愛いであろう?」
そうですね、可愛くもあります。クロードは首の怪我の跡に顔を埋めた。
「痛い?」
「今は痛くないぞ」
「そう」
なんじゃ?クロード?
「言いたいことかあるなら、はっきりせよ!」
「抱きたい」
「良いぞ」
まあ、我らはそんなもんじゃ。
「リジー」
「ついたな!助かったであるぞ!さらばじゃ!」
この国ならば我が家までの道のりくらい覚えておるわ!我はぴょんと馬車から降りて走った。早くクロードに会いたいのう!……父には会いたくないが。
「……なんだよ!あいつ!全く感傷もなしかよ!」
「あんだけしといて、あっさりすぎるなぁ」
小さくなる我の後ろ姿を見送っていた男達の声は全く我には届かなかった。
ベルスタッドの屋敷につくと、小間使いが、庭をはいておった。我の見知らぬ者であった……まあ、なんとかなるか?
「おい、お主、すまんがここの執事を呼んでくれんか?いいか、執事だぞ?間違っても主人ではないぞ?あ、ミラという侍女でも良いぞ?」
「おかしな奴だ!帰れ!」
「そう言わずに、呼んでこい。飴やるゆえ」
「いらん!帰れ!」
むう……困ったな!
「頼むからちょっとで良い、呼んでこい」
「しつこい!人を呼ぶぞ!」
「うむ、だから呼べと言ったのじゃ」
「あー!なんだお前!あっち行けよ!」
うお、ほうきを振り上げられた!やめんか!我は野良猫ではないのじゃぞ!
「やめんかー!」
「なんですか、騒々しい。奥様がお困りですよ」
懐かしい声が聞こえて来た。お、やったぞ!
「ミラか!我じゃ!リズレットじゃー!」
「?!リズレットさま?!」
ホウキで殴られようとしておる我に助けが現れた!
「あああ!!本当に!本当にリズレット様でございますか?!」
「うむ!こんなに可愛い男子は我の他におらなんだぞ?」
「その言い方!本当にリズレット様でございますのね!奥様!奥様ぁー!」
い、いかんぞ!ミラ!そのような大声をだしては!
「ミラ!ホンテイノオクサマに気取られてしまう!声を小さくするのだ!」
ミラは一瞬、キョトンとしたがにっこり笑った。
「もう、大丈夫なんです!もう我慢したくていいのです!奥様ーー!」
ミラの言う事はよう分からなんだが、奥様と呼ばれて返事をしたのは
「なんです?ミラ騒々しい。一体何の騒ぎなの?」
「母!」
「あら、どなたかしら。私を母とよ、ぶの……は……リジー!!!!」
「母!我じゃ!我!」
「リジー!リズレット!私の愛しい子!!よく!良く無事で……無事で……リジー!!」
母は我に抱きついて泣き出してしもうた。
「母はまだ泣き虫であるな!」
こうして我は久しぶりに我が家へ帰宅したのだった。
「リジー!!!!」
首の怪我の跡に薬を塗り込んでもらっている時にクロードが飛び込んで来た。
「クロードぉおおお?!」
我は見事にソファに押し倒され、クロードにぎゅうぎゅうに抱き締められた。
「リジー!リジー!私のリジー!!無事で!無事で良かった!!!!」
「うむ、帰りが遅くなってすまんの、クロード!」
「お馬鹿ーーー!お馬鹿リジー!!」
「むう!心外であるぞ!」
我も頑張ったのじゃから!
とりあえず、我はことの顛末をクロードに覚えている限り使えた。最初の事はほとんど覚えて無かった。
なにせ、母やミラに教えたら卒倒しかねん。夜の事情関係は特にな!
「まず、リジーと一緒に拐われた令嬢3名は獣人国・フェイワースで幸せに暮らしているんですね?」
「うむ。ウンメイノツガイという物凄い呪いで幸せじゃ」
運命の番ですか、とクロードは冷静だ。
「……どうしてフェイワースにいる時に、私宛に手紙を出さなかったのです?すぐ迎えに行ったのに」
「あ」
とんと、失念しておったわ!
「お馬鹿……」
泣き笑いでクロードは頭を抱えた。すまん、本当に思いつかなかったんじゃ!
「自分一人で何とかしようとした?でも、もっと私を頼ってください、リジー。私は貴方の兄で、貴方の夫なのですから」
「分かったー」
クロードは頼りになるからなー!
「……お馬鹿っ!」
「へ?!」
何故、馬鹿にされねばならん!いくらクロードでも許さんぞ!
「ところでクロード。父はどうした。あとホンテイノオクサマは?」
今、クロードと我が話している場所は父の書斎だ。しかし父の姿はなく、代わりにクロードが座っている。
「ああ、あの男なら派手にやらかしまして、領地に押し込めてあります。リジーの嫌いなホンテイノオクサマと一緒にね。いま当主は私です。リジーのお母様には色々と社交界のお手伝いをしていただいていますよ」
「そ、そうか!良かった!父がいてはまた誰かを籠絡してこいと言われるのかと思ってのう!あれは気乗りせん!」
「……もう、そんなことないから大丈夫ですよ。リジーは私の側にいてくれれば良いんです」
クロードはため息をついたり、笑ったり忙しかった。ふーん?そうなのであるか?
「リジー」
クロードに手を引かれた。
「なんじゃ?」
「しばらく見ないうちに、美人になりましたね?」
ん?そうであるか??
「まだまだ可愛いであろう?」
そうですね、可愛くもあります。クロードは首の怪我の跡に顔を埋めた。
「痛い?」
「今は痛くないぞ」
「そう」
なんじゃ?クロード?
「言いたいことかあるなら、はっきりせよ!」
「抱きたい」
「良いぞ」
まあ、我らはそんなもんじゃ。
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