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第一部
23.恐怖政治~ティオの場合~
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王都の街には、内部を守るために張り巡らされた外壁がある。
それは当然、この学園区画にも存在するのだが、そこの一画が取り除かれていた。人工的に、まるで裏口のようにあいていたため、上空から見ただけのティオには分からなかったのだ。
「アンタらが開けたの?」
問題の『穴』の前に、ティオ及び彼女が連れてきた容疑者が、ずらっと並んで立っていた。
ティオの、底の無い闇のような黒い瞳に見据えられ、軍人は恐怖を覚えた。歴戦の勇者と言えるような屈強な戦士は、この場に存在しなかった。
権力者に尻尾を振り、力無き民を平気で見捨てることができる程度の者しか、この場にはいなかった。
「ぶ、部下が――」
ティオの詰問のような視線に耐えきれず、軍上層部の一人が口を割った。
「そ、そうだ! 全部部下がやったんだ!」
「我々は知らん!」
「こんなことをするとは思ってなか――」
糾弾合戦が始まりそうになったが、突如、ティオが全員の前に突きつけた『魔獣の首』に、全員の動きが止まる。
獰猛な、命無き黒い獣――その生首が、自分達に突きつけられている。誰もが恐れる魔獣を平然とつかみ上げている少女に対し、得体の知れない恐怖を覚える。
「こんな穴があるからね? こんな獣が街に入って来ちゃうじゃない? 危ないじゃない? こんな獰猛な獣が街中ブラブラしてたら。ねえ? 貴方はそうは思わない?」
ティオは一番反抗的で、自己主張の激しい、軍上層部の男の目に、獣がよく映るよう、間近に掲げてやった。
総司令官は完全に腰が抜け、地面を這いずり回っている始末。
「でね、この穴を塞ぎたいんだけど――資材が足りないんだって。私ってばバカだから、ちゃんと仕切ってくれないと、適当なお家の壁を持って来ちゃうかもしれないわ! ねえ、アンタらのお屋敷ってどの辺にあるのかしら?」
にっこりと微笑むティオに、連中はもう言葉もない。
得体の知れない非常識なまでに凶悪な暴挙の限りを尽くす少女に対し、打つ手無しなのだ。
「わ、わたくしが資金を出させていただきます! 適切な採掘場で用意しましょう!!!」
口を開いたのは一人の貴族だ。平民相手に敬語で怯えながらの発言。しかし、それを恥だと感じる余裕はもうない。
「とりあえず仮でいいから、今すぐ穴だけでも塞いでおきたいな」
「よし。採掘場はこの近くだな、おいそこのお前! 労働者をぉぉぉ?!」
ティオにはようやくへりくだることを覚えた貴族連中だが、学園区画へ戻ってきた肉体労働者に対しては、高圧的だった。
「仮だし、土嚢でいいよね!」
当然のように平民に命令しようとする貴族を、次々と土嚢袋に収納するティオ。
「わあああ! やめてくれええええ! やります、やります! 自分達でやりますからっ!!!」
ひとまず、穴が見えなくなるまで土嚢を積み上げ、板で固定。貴族と軍上層部を馬車馬の如くこき使いまくり、壁と言える形へ整えることができた。
――それは、
「なに休んでんの? 夜になるよ? アンタらはこの後、『巣』にも行かなきゃならないんだからね? 魔獣蠢く夜の森を散策したいなら止めないけど、私はアンタらの命なんて知ったこっちゃないからね? 自分たちでペース配分考えて動いてね?」
と、ティオが貴族と軍上層部に逆パワハラをしていたせいなのだけれど。
「……おっかねぇ。御貴族様になんてことすんだ……イケメンじゃないからか?!」
「悪魔か……あの娘、悪魔の化身か……!」
それを見聞きしていた、学園区画の修繕に戻ってきた人々から、不名誉な二つ名をつけられていたことを、ティオ・ファーバーは知らない……。
◇
軍上層部が『巣』だと断定した森。
ティオ一行が、そこへ到着した頃、空は赤くなり始めていた。
白龍があらかた、魔獣を食い尽くした後ということもあり、その姿も今はない。『巣』の場所を確かめる方法は二つ。一つは、肉眼で分かるほどの変化を確認すること。もう一つは、穢れの集合体とも言える『瘴気濃度』の観測。
ティオは生来、抵抗値が高いためか、穢れに対して疎かった。
だから、森が穢れに満ちているようには見えず、『巣』の場所が分からなかった。こうなったのは軍上層部のせいだ。
魔獣を誘導するために施した処置がいけなかった。瘴気を霧散させ、鬱蒼と生い茂る緑の下に穢れは隠されてしまった。
――うーん、どうしよう? 誰か、降りて確認して来てくれないかな……と、白龍の上で、ティオが頭を抱えていると、
「ふ、ふん! 高々、市井の小娘に何ができると言うのだ!」
一人の貴族が文句を言っているのが聞こえてきた。
白龍の鉤爪に、かろうじて引っかかっている貴族の一人だ。他の面々は、ここに至るまでに色々あり、反抗する気力を失っているようだ。
「いやぁ、さすが貴族様だわぁ。命をかけて瘴気濃度を確かめてくれるとは!」
「え? あ、いや――」
「アンタ肉体労働に参加してなかったもんね! いや~さすが、私、貴族を見くびっていたわ~」
そう言いながら、ティオは白龍の体毛をつかみながら、白龍の右前足に滑り降りる。そこに、その男はひっかかっていたから。
「お、おい?」
男は今更に気づいた。
ティオの手にはロープのようなものが握られている。男は後悔した。目の前の小娘が、何やらとんでもないことを、自分に仕出かそうとしている!
「――ってことで、えいっ!」
「うわあああぁぁぁーっ!!!」
ティオは男の腰に命綱をくくりつけると、そのまま男を蹴り落とした!
そして、適当な頃合いを見て、彼に向かい大声で問いかける。
「瘴気の具合はどーお? おーい?」
「…………」
返事はない。
「死んでるようには見えないなぁ……」
返事をしない、しかし動かないロープの向こうに見える男を一瞥すると――次のカナリアを探すべく、残った者達へと視線を向けた。
当然、向けられた相手から悲鳴が上がる。しかし、ティオは彼等の特性を的確にとらえていた。
「民のための積極的な行いの数々! これは皆に報告しなくては! 王太子殿下や教会上層部の皆様も、さぞ、お喜びになることでしょう」
「や、やりますよっ!!!」
次のカナリアを手に入れて、順調に事は進んだ。
『巣』となっていた箇所を特定し、その場に主として君臨していた魔獣を瞬殺。その間、連れてこられた貴族や軍上層部の人間は、白龍の爪に引っかかったまま。
『巣』の場所を特定し、森の中へ消えていったティオが何をしているのかは分からない。しかし、たった一度の閃光と、獣と思しき断末魔の叫び声に理解した。
そして、恐れた。
『巣』の浄化が終わると、一同は一旦、地上へ降ろされた。
もうすっかり辺りは暗くなっている。空腹を覚えても不思議ではない頃合いだが、度重なる過酷な状況に、それどころではない。
「あとは番犬よね!」
「ばんけん?」
次はなんだと、声をかけられた軍上層部の男は身構える。
学園区画で、今までしたことも無いような重労働をさせられた者達は疲労困憊。森の瘴気濃度を確認するために蹴り落とされた男たちは、今も放心状態のままだ。
むちゃぶりが過ぎる――と、思っても誰も口には出せない。
「うん……ねえ、どっちが怖くない?」
明るくそう訪ねるティオの手には、二体の首の無い魔獣のような何かがいた!
これは、ファイエル領においてきた番犬の兄妹で害はない。しかし、そんなことが連中に分かるはずも無く。
「ぎゃあああっ!!!」
「顔が怖い? じゃあ切り落としちゃおう」
「いやあああっ!!!」
「おかーさまーっ!!!」
「何泣いてンのよ! アンタ等、本当に軍人なの?!」
ティオはご立腹だ。無理もない。彼等は違うのだ。
彼女が思うこうあるべきという軍人と、彼等は。絶望的なまでに。ここにいるのは、上に媚び、下を誹り、その地位にいる者達だ。
だからこそ、必死になって責任を押しつけ合った。エミールに速攻で取り入ろうとした。彼等はいつでもそうして、生きるための力を手に入れてきた。
「あのねぇ、軍人でも貴族でもどっちでもいいけど、代替案も出さないで嘗めた口利かないでね? アンタらの血肉で封印の儀式をしてもいいのよ?」
もちろん、そんな儀式は存在しない。
◇
時刻は夜の八時過ぎ。
全ての行程を終え、一行は再び学園区画に戻ってきた。正確には、昼過ぎに来たとき同様、白龍に投げ落とされたわけだが。
既に完全に日は落ちていたが、少ないとはいえ外灯もある。そのため、一行が戻ってきたことに、多くの居住者が気づき、家から出てきた。
ティオの、あまりの暴挙振りに、連れて行かれた一行の身を案じていたから。
「お、おい、大丈夫か?」
思わず声をかけてしまった平民は、一人ではなかった。
現れた貴族や軍上層部の面々が、まるで強制労働者のような面構えをしていたのだから! しかも、服も身体もボロボロだ!
まあ、心配したところで腹立たしい台詞が返ってくるのだろうな、と平民は身構えていたのだが――、
「……私共のような穢らわしい、卑しく中身の無い人間にそのようなお言葉、もったいのうございます」
「身に余るお言葉でございます」
「私のような、品性下劣な人間の屑が、街の復興に役立てる機会を下さり、御高恩にむせび泣いております」
と、深々と頭を下げる貴族と軍上層部の面々……。
そんな連中を目の当たりにして、人々が思うことは一つ。
――恐怖政治、怖っ!!!
人々はこの日初めて、貴賤を問わない真の恐怖があることを知るのだった――。
それは当然、この学園区画にも存在するのだが、そこの一画が取り除かれていた。人工的に、まるで裏口のようにあいていたため、上空から見ただけのティオには分からなかったのだ。
「アンタらが開けたの?」
問題の『穴』の前に、ティオ及び彼女が連れてきた容疑者が、ずらっと並んで立っていた。
ティオの、底の無い闇のような黒い瞳に見据えられ、軍人は恐怖を覚えた。歴戦の勇者と言えるような屈強な戦士は、この場に存在しなかった。
権力者に尻尾を振り、力無き民を平気で見捨てることができる程度の者しか、この場にはいなかった。
「ぶ、部下が――」
ティオの詰問のような視線に耐えきれず、軍上層部の一人が口を割った。
「そ、そうだ! 全部部下がやったんだ!」
「我々は知らん!」
「こんなことをするとは思ってなか――」
糾弾合戦が始まりそうになったが、突如、ティオが全員の前に突きつけた『魔獣の首』に、全員の動きが止まる。
獰猛な、命無き黒い獣――その生首が、自分達に突きつけられている。誰もが恐れる魔獣を平然とつかみ上げている少女に対し、得体の知れない恐怖を覚える。
「こんな穴があるからね? こんな獣が街に入って来ちゃうじゃない? 危ないじゃない? こんな獰猛な獣が街中ブラブラしてたら。ねえ? 貴方はそうは思わない?」
ティオは一番反抗的で、自己主張の激しい、軍上層部の男の目に、獣がよく映るよう、間近に掲げてやった。
総司令官は完全に腰が抜け、地面を這いずり回っている始末。
「でね、この穴を塞ぎたいんだけど――資材が足りないんだって。私ってばバカだから、ちゃんと仕切ってくれないと、適当なお家の壁を持って来ちゃうかもしれないわ! ねえ、アンタらのお屋敷ってどの辺にあるのかしら?」
にっこりと微笑むティオに、連中はもう言葉もない。
得体の知れない非常識なまでに凶悪な暴挙の限りを尽くす少女に対し、打つ手無しなのだ。
「わ、わたくしが資金を出させていただきます! 適切な採掘場で用意しましょう!!!」
口を開いたのは一人の貴族だ。平民相手に敬語で怯えながらの発言。しかし、それを恥だと感じる余裕はもうない。
「とりあえず仮でいいから、今すぐ穴だけでも塞いでおきたいな」
「よし。採掘場はこの近くだな、おいそこのお前! 労働者をぉぉぉ?!」
ティオにはようやくへりくだることを覚えた貴族連中だが、学園区画へ戻ってきた肉体労働者に対しては、高圧的だった。
「仮だし、土嚢でいいよね!」
当然のように平民に命令しようとする貴族を、次々と土嚢袋に収納するティオ。
「わあああ! やめてくれええええ! やります、やります! 自分達でやりますからっ!!!」
ひとまず、穴が見えなくなるまで土嚢を積み上げ、板で固定。貴族と軍上層部を馬車馬の如くこき使いまくり、壁と言える形へ整えることができた。
――それは、
「なに休んでんの? 夜になるよ? アンタらはこの後、『巣』にも行かなきゃならないんだからね? 魔獣蠢く夜の森を散策したいなら止めないけど、私はアンタらの命なんて知ったこっちゃないからね? 自分たちでペース配分考えて動いてね?」
と、ティオが貴族と軍上層部に逆パワハラをしていたせいなのだけれど。
「……おっかねぇ。御貴族様になんてことすんだ……イケメンじゃないからか?!」
「悪魔か……あの娘、悪魔の化身か……!」
それを見聞きしていた、学園区画の修繕に戻ってきた人々から、不名誉な二つ名をつけられていたことを、ティオ・ファーバーは知らない……。
◇
軍上層部が『巣』だと断定した森。
ティオ一行が、そこへ到着した頃、空は赤くなり始めていた。
白龍があらかた、魔獣を食い尽くした後ということもあり、その姿も今はない。『巣』の場所を確かめる方法は二つ。一つは、肉眼で分かるほどの変化を確認すること。もう一つは、穢れの集合体とも言える『瘴気濃度』の観測。
ティオは生来、抵抗値が高いためか、穢れに対して疎かった。
だから、森が穢れに満ちているようには見えず、『巣』の場所が分からなかった。こうなったのは軍上層部のせいだ。
魔獣を誘導するために施した処置がいけなかった。瘴気を霧散させ、鬱蒼と生い茂る緑の下に穢れは隠されてしまった。
――うーん、どうしよう? 誰か、降りて確認して来てくれないかな……と、白龍の上で、ティオが頭を抱えていると、
「ふ、ふん! 高々、市井の小娘に何ができると言うのだ!」
一人の貴族が文句を言っているのが聞こえてきた。
白龍の鉤爪に、かろうじて引っかかっている貴族の一人だ。他の面々は、ここに至るまでに色々あり、反抗する気力を失っているようだ。
「いやぁ、さすが貴族様だわぁ。命をかけて瘴気濃度を確かめてくれるとは!」
「え? あ、いや――」
「アンタ肉体労働に参加してなかったもんね! いや~さすが、私、貴族を見くびっていたわ~」
そう言いながら、ティオは白龍の体毛をつかみながら、白龍の右前足に滑り降りる。そこに、その男はひっかかっていたから。
「お、おい?」
男は今更に気づいた。
ティオの手にはロープのようなものが握られている。男は後悔した。目の前の小娘が、何やらとんでもないことを、自分に仕出かそうとしている!
「――ってことで、えいっ!」
「うわあああぁぁぁーっ!!!」
ティオは男の腰に命綱をくくりつけると、そのまま男を蹴り落とした!
そして、適当な頃合いを見て、彼に向かい大声で問いかける。
「瘴気の具合はどーお? おーい?」
「…………」
返事はない。
「死んでるようには見えないなぁ……」
返事をしない、しかし動かないロープの向こうに見える男を一瞥すると――次のカナリアを探すべく、残った者達へと視線を向けた。
当然、向けられた相手から悲鳴が上がる。しかし、ティオは彼等の特性を的確にとらえていた。
「民のための積極的な行いの数々! これは皆に報告しなくては! 王太子殿下や教会上層部の皆様も、さぞ、お喜びになることでしょう」
「や、やりますよっ!!!」
次のカナリアを手に入れて、順調に事は進んだ。
『巣』となっていた箇所を特定し、その場に主として君臨していた魔獣を瞬殺。その間、連れてこられた貴族や軍上層部の人間は、白龍の爪に引っかかったまま。
『巣』の場所を特定し、森の中へ消えていったティオが何をしているのかは分からない。しかし、たった一度の閃光と、獣と思しき断末魔の叫び声に理解した。
そして、恐れた。
『巣』の浄化が終わると、一同は一旦、地上へ降ろされた。
もうすっかり辺りは暗くなっている。空腹を覚えても不思議ではない頃合いだが、度重なる過酷な状況に、それどころではない。
「あとは番犬よね!」
「ばんけん?」
次はなんだと、声をかけられた軍上層部の男は身構える。
学園区画で、今までしたことも無いような重労働をさせられた者達は疲労困憊。森の瘴気濃度を確認するために蹴り落とされた男たちは、今も放心状態のままだ。
むちゃぶりが過ぎる――と、思っても誰も口には出せない。
「うん……ねえ、どっちが怖くない?」
明るくそう訪ねるティオの手には、二体の首の無い魔獣のような何かがいた!
これは、ファイエル領においてきた番犬の兄妹で害はない。しかし、そんなことが連中に分かるはずも無く。
「ぎゃあああっ!!!」
「顔が怖い? じゃあ切り落としちゃおう」
「いやあああっ!!!」
「おかーさまーっ!!!」
「何泣いてンのよ! アンタ等、本当に軍人なの?!」
ティオはご立腹だ。無理もない。彼等は違うのだ。
彼女が思うこうあるべきという軍人と、彼等は。絶望的なまでに。ここにいるのは、上に媚び、下を誹り、その地位にいる者達だ。
だからこそ、必死になって責任を押しつけ合った。エミールに速攻で取り入ろうとした。彼等はいつでもそうして、生きるための力を手に入れてきた。
「あのねぇ、軍人でも貴族でもどっちでもいいけど、代替案も出さないで嘗めた口利かないでね? アンタらの血肉で封印の儀式をしてもいいのよ?」
もちろん、そんな儀式は存在しない。
◇
時刻は夜の八時過ぎ。
全ての行程を終え、一行は再び学園区画に戻ってきた。正確には、昼過ぎに来たとき同様、白龍に投げ落とされたわけだが。
既に完全に日は落ちていたが、少ないとはいえ外灯もある。そのため、一行が戻ってきたことに、多くの居住者が気づき、家から出てきた。
ティオの、あまりの暴挙振りに、連れて行かれた一行の身を案じていたから。
「お、おい、大丈夫か?」
思わず声をかけてしまった平民は、一人ではなかった。
現れた貴族や軍上層部の面々が、まるで強制労働者のような面構えをしていたのだから! しかも、服も身体もボロボロだ!
まあ、心配したところで腹立たしい台詞が返ってくるのだろうな、と平民は身構えていたのだが――、
「……私共のような穢らわしい、卑しく中身の無い人間にそのようなお言葉、もったいのうございます」
「身に余るお言葉でございます」
「私のような、品性下劣な人間の屑が、街の復興に役立てる機会を下さり、御高恩にむせび泣いております」
と、深々と頭を下げる貴族と軍上層部の面々……。
そんな連中を目の当たりにして、人々が思うことは一つ。
――恐怖政治、怖っ!!!
人々はこの日初めて、貴賤を問わない真の恐怖があることを知るのだった――。
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