そして還るもの

広がり始めた世界

誰かの物語(永遠視点)

　ある時誰かが言っていた。
　あなたは私たちが決めた将来を歩いていけばいいと。
　ある時誰かはこう言った。
　お前は私たちを幸せにするためにいるのだと。

　それに純粋なあなたは期待に応えようと努力して。
　気付けば誰かの前のあなたはあなたじゃなくなってしまいました。
「これが親孝行だ」
「あなたが頑張ればあの子は自由に生きられるのだ」と言われ続け
それを果たすためにあなたは生きていました。

　けどあなたは知ってしまった。
「誰かを愛するということ」を。
そしてとうとう気づきました。
「目の前の幸せ」に。

　私がそれを気づかせました。
あまりに見ていられなかったから。
そしたらあなたは誰かに反抗しだしました。

　ある日、あなたは誰かに砂浜に呼びだされて出かけていきました。
「大丈夫。何も心配しなくていいよ」そう言い残して。

　その日からあなたはいなくなって
時がたちあなたが違う人になったと知りました。
　はじめは異形になったあなたでもいいと。あなたが欲しいと願いました。

　それでも、諦めました。

　違うあなたを見るたびにあなたを思い出してしまうから。

　私はいまだにあなたが帰ってくると信じてしまう。違うあなたのことなんかどうでもいいなんて。

　最低、最低。でも信じたい。
あなたがあなたの姿で私の隣に帰ってきてくれると。

　乃亜が帰ってきてくれると。