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第11章 軍団戦争
第217話 大風
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「痛って~な!お前、どこ見て歩いてん
だよ!」
「………………」
「おい、お前に言ってんだよ!そこの杖
と剣を持った変なエルフの!」
「ん?それはもしかして、この俺様に言
っているのか?」
「俺様だぁ?お前、何様なんだよ!」
「だから、言っているだろう。俺様だ
と」
「なんだか変な奴だな……………まぁ、そ
んなことはどうでもいい。それよりもぶ
つかっといて何の謝罪もないのは一体ど
ういう了見なんだ?」
「ぶつかった?身に覚えのないことを言
われても困るな。それは本当に俺様か?
そこら辺に歩いている奴と勘違いしたん
じゃないのか?」
「勘違いなんてする訳ねぇだろ。それに
もしもぶつかったのが堅気の人間だった
ら、こんな街中で堂々と言わねぇよ」
「いや、それこそ街中のこんな広い通り
でぶつかるはずがないだろう」
「いいや、確かにぶつかった。普通に歩
いていたら、肩を押される感覚があって
一瞬よろけたんだ。それで不思議に思っ
て後ろを振り返ったら、ちょうどお前が
去っていくところだった」
「………………あぁ、そういうことか。な
るほど。合点がいった。確認なんだが、
お前は間違いなく何かに押される感覚が
あったんだな?」
「あぁ、あったよ!」
「そうか。であれば、それには俺様が関
わっている。これは間違いないだろう」
「ふんっ!これだけ引っ張ってようやく
白状したか!ここまできたら、謝罪だけ
じゃ済まないな!俺の貴重な時間を使っ
たんだ。持ち金全て置いてってもらわな
いと許さないからな!」
「なるほど。だが、その前に一体何がお
前の肩を押したのか、それを説明しても
いいだろうか?」
「今更、しらばっくれる気か?お前以外
に何があるって…………」
「これだ」
その時、冒険者の男は見た。エルフの男
の周りに発生した風を。それは微力なが
らも成人した男の身体に少しばかり作用
する程度の力はありそうだった。
「俺様は常に風と共にある。そんな俺様
が大地を踏みしめれば、そこには当然風
が吹く。意識していようがしていまいが
だ。それが時には強くなり、周りに大き
な影響を及ぼしてしまうのも稀にある」
「…………お、お前はまさか」
「さて、話を戻そう。結果的には俺様の
せいでこうなったのは間違いなさそう
だ。それは素直に謝罪しよう。すまなか
ったな」
「い、いや。それは……………」
「で、その次にお前が言っていたことだ
が……………持ち金を何だって?」
――――――――――――――――――
シリスティラビンに程近い街、ハングリ
ー。ここは以前、ラミュラとモールが組
員探しの為に訪れた街である。迷宮都市
が近くにある為、ほとんどの冒険者や商
売人はそっちへと向かう。加えて邪神災
害の影響で生活に困窮する者がこぞって
街から出て行ったからか、人の数は急激
に減っていた。未だ街に残る者は迷宮都
市でやっていく自信がない者やそもそも
その日の暮らしも危うい者達ばかりであ
る。そして、今日も今日とて依頼を受け
る意欲を失った冒険者達が昼間からギル
ドで酒を飲んでいた。
「しっかし、楽に金を稼げる方法ねぇか
な~」
「あったら、とっくにやってるっての」
「だよなぁ。俺さ、この職業に憧れて冒
険者になったんだよ。人々を助けて英雄
視され、金もたんまり稼ぐ。んでもって
美人な女と結婚してあとは幸せな隠居ラ
イフを送るってな……………でも、どこで
間違えたんかな。人助けどころか、低ラ
ンクの魔物にすら勝てない、だからもち
ろん稼げない。当然、そんな男にまとも
に取り合ってくれる女なんて存在しな
い……………なんだか泣けてくるわ」
「最初から間違えてたんだろ。お前に冒
険者は向いてないってことだよ」
「うぐっ…………」
「まぁ、仮に向いていたとしてもやたら
と強い後輩も出てきて、どんどん抜かさ
れるしな」
「傷口に塩を塗るなよ。余計、落ち込ん
で仕事に集中できないだろ」
「現実を突き付けて何が悪い。それにお
前はかなり前からこんな調子だろ」
「それはそうだけどよぉ……………ちなみ
に最近の若手はどうだ?」
「よく話に聞くのはやっぱり"黒の系譜
"だろ。以前は"黒天の星"だけだった
けど最近じゃ傘下も頑張っているみたい
だしな。」
「くそっ!ムカつくぜ!強くて金もあっ
て女もいるような環境……………羨ましす
ぎる!特に"黒締"の野郎!あれだけ自
分を慕ってくれる女がいるってどんな気
分なんだ?」
「さぁな……………っと話の続きだが他に
も目立った動きをしているのはいるらし
いぞ。それも若手ではなく、中堅または
ベテラン勢だ。あの"三凶"が何か求め
ているのか各地を動き回っているとか、
"笛吹き"・"赤虎"が"黒天の星"と
接触したとか、後は"麗鹿"それと噂で
は"大風"も……………」
「ん?おい、どうした?」
「いや、ちょうど話に出した人物がいる
もんでな」
「それって…………っ!?まじかよ!何
でこんなところに」
ギルドの入り口。そこには扉を開けて入
ってきた1人のエルフがいた。剣と杖を
腰に携え、綺麗な金色の短髪をしてい
る。周囲にはまるで興味がないのか、視
線は真っ直ぐに受付の方へと向かってい
た。そこからは特に感情を読み取ること
ができず、思わずその場に緊張が走る。
そして、そんなことよりも最も目につく
ことがあった。それは彼の周りにはテー
ブルが揺れる程の風が吹き荒れていたこ
とだった。
だよ!」
「………………」
「おい、お前に言ってんだよ!そこの杖
と剣を持った変なエルフの!」
「ん?それはもしかして、この俺様に言
っているのか?」
「俺様だぁ?お前、何様なんだよ!」
「だから、言っているだろう。俺様だ
と」
「なんだか変な奴だな……………まぁ、そ
んなことはどうでもいい。それよりもぶ
つかっといて何の謝罪もないのは一体ど
ういう了見なんだ?」
「ぶつかった?身に覚えのないことを言
われても困るな。それは本当に俺様か?
そこら辺に歩いている奴と勘違いしたん
じゃないのか?」
「勘違いなんてする訳ねぇだろ。それに
もしもぶつかったのが堅気の人間だった
ら、こんな街中で堂々と言わねぇよ」
「いや、それこそ街中のこんな広い通り
でぶつかるはずがないだろう」
「いいや、確かにぶつかった。普通に歩
いていたら、肩を押される感覚があって
一瞬よろけたんだ。それで不思議に思っ
て後ろを振り返ったら、ちょうどお前が
去っていくところだった」
「………………あぁ、そういうことか。な
るほど。合点がいった。確認なんだが、
お前は間違いなく何かに押される感覚が
あったんだな?」
「あぁ、あったよ!」
「そうか。であれば、それには俺様が関
わっている。これは間違いないだろう」
「ふんっ!これだけ引っ張ってようやく
白状したか!ここまできたら、謝罪だけ
じゃ済まないな!俺の貴重な時間を使っ
たんだ。持ち金全て置いてってもらわな
いと許さないからな!」
「なるほど。だが、その前に一体何がお
前の肩を押したのか、それを説明しても
いいだろうか?」
「今更、しらばっくれる気か?お前以外
に何があるって…………」
「これだ」
その時、冒険者の男は見た。エルフの男
の周りに発生した風を。それは微力なが
らも成人した男の身体に少しばかり作用
する程度の力はありそうだった。
「俺様は常に風と共にある。そんな俺様
が大地を踏みしめれば、そこには当然風
が吹く。意識していようがしていまいが
だ。それが時には強くなり、周りに大き
な影響を及ぼしてしまうのも稀にある」
「…………お、お前はまさか」
「さて、話を戻そう。結果的には俺様の
せいでこうなったのは間違いなさそう
だ。それは素直に謝罪しよう。すまなか
ったな」
「い、いや。それは……………」
「で、その次にお前が言っていたことだ
が……………持ち金を何だって?」
――――――――――――――――――
シリスティラビンに程近い街、ハングリ
ー。ここは以前、ラミュラとモールが組
員探しの為に訪れた街である。迷宮都市
が近くにある為、ほとんどの冒険者や商
売人はそっちへと向かう。加えて邪神災
害の影響で生活に困窮する者がこぞって
街から出て行ったからか、人の数は急激
に減っていた。未だ街に残る者は迷宮都
市でやっていく自信がない者やそもそも
その日の暮らしも危うい者達ばかりであ
る。そして、今日も今日とて依頼を受け
る意欲を失った冒険者達が昼間からギル
ドで酒を飲んでいた。
「しっかし、楽に金を稼げる方法ねぇか
な~」
「あったら、とっくにやってるっての」
「だよなぁ。俺さ、この職業に憧れて冒
険者になったんだよ。人々を助けて英雄
視され、金もたんまり稼ぐ。んでもって
美人な女と結婚してあとは幸せな隠居ラ
イフを送るってな……………でも、どこで
間違えたんかな。人助けどころか、低ラ
ンクの魔物にすら勝てない、だからもち
ろん稼げない。当然、そんな男にまとも
に取り合ってくれる女なんて存在しな
い……………なんだか泣けてくるわ」
「最初から間違えてたんだろ。お前に冒
険者は向いてないってことだよ」
「うぐっ…………」
「まぁ、仮に向いていたとしてもやたら
と強い後輩も出てきて、どんどん抜かさ
れるしな」
「傷口に塩を塗るなよ。余計、落ち込ん
で仕事に集中できないだろ」
「現実を突き付けて何が悪い。それにお
前はかなり前からこんな調子だろ」
「それはそうだけどよぉ……………ちなみ
に最近の若手はどうだ?」
「よく話に聞くのはやっぱり"黒の系譜
"だろ。以前は"黒天の星"だけだった
けど最近じゃ傘下も頑張っているみたい
だしな。」
「くそっ!ムカつくぜ!強くて金もあっ
て女もいるような環境……………羨ましす
ぎる!特に"黒締"の野郎!あれだけ自
分を慕ってくれる女がいるってどんな気
分なんだ?」
「さぁな……………っと話の続きだが他に
も目立った動きをしているのはいるらし
いぞ。それも若手ではなく、中堅または
ベテラン勢だ。あの"三凶"が何か求め
ているのか各地を動き回っているとか、
"笛吹き"・"赤虎"が"黒天の星"と
接触したとか、後は"麗鹿"それと噂で
は"大風"も……………」
「ん?おい、どうした?」
「いや、ちょうど話に出した人物がいる
もんでな」
「それって…………っ!?まじかよ!何
でこんなところに」
ギルドの入り口。そこには扉を開けて入
ってきた1人のエルフがいた。剣と杖を
腰に携え、綺麗な金色の短髪をしてい
る。周囲にはまるで興味がないのか、視
線は真っ直ぐに受付の方へと向かってい
た。そこからは特に感情を読み取ること
ができず、思わずその場に緊張が走る。
そして、そんなことよりも最も目につく
ことがあった。それは彼の周りにはテー
ブルが揺れる程の風が吹き荒れていたこ
とだった。
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