俺は善人にはなれない

気衒い

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第13章 魔族領

第261話 報

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"聖義の剣"、壊滅。突然届いたその報

を受けた国々は歓喜に咽び泣き、各々が

健闘を讃え合った。そして、それは川が

上流から下流へと流れていくように国か

ら都市へ、都市から街へと伝わっていき

結果、様々な場所で三日三晩、飲んで騒

いでの大宴会が行われた。とはいっても

1人の犠牲者も出さない完全勝利という

形ではもちろんなく、被害状況は決して

小さいとはいえない。しかし、以前起こ

った邪神災害の件以降、防衛力を高めて

迎撃要員を増やしていたところが多かっ

た為か、被害を抑えることに成功してい

たことは確かだった。また成功といえ

ば、戦闘を生業とする者達による敵の殲

滅も挙げられる。それは何かというと力

のある冒険者や傭兵達が各地で獅子奮迅

の立ち回りを見せて大活躍し、結果的に

彼らにとっての一種のプロモーションに

もなって指名依頼などの仕事へと直結す

ることとなったのだ。つまり、冒険者達

にとっては"災い転じて福となす"状態

となり、その他の者達にとっては"不幸

中の幸い"な状態となったという訳なの

だ。ちなみにそんな中で"聖義の剣"の

壊滅に最も尽力し、目立った者達が誰で

あったのか……………それは言うまでもな

いことである。






――――――――――――――――――





「邪神災害が起こったのがついこの間だ

ぜ?舌の根も乾かねぇうちから、似たよ

うなことしやがって……………一体、何が

目的だったんだ?」

「そういえば何か言っていたな。ええと

確か……………"俺(勝者)が世界中のゴ

ミ共(敗者)に絶望を与えることだ。こ

の世には絶対に越えられない壁、すなわ

ち覆しようのない差というものがあるの

を教えてやるんだ"……………とか」

「驚いた。お前、そんなのよく覚えてい

るな」

「驚くべきところはそこじゃないだろ。"黒締"と奴のやり取りが何故か・・・・・・・・・・・・・途中まで映し出されていた・・・・・・・・・・・・ことだろ」

「それ!俺も気になってたんだよ。わざ

わざ、あのハジメとかいう奴が映像の魔

道具を用意したのか?それにしては違和

感があるが」

「いいや。それは違うな」

「じゃあ、"黒締"達か?だったら、い

つ置いたんだよ?そんな暇があったの

か?」

「それは分からんさ。だが、奴らのやる
ことはいつもぶっ飛んでるからな。何が

起きたって不思議じゃない。それこそ、

あんな状況だっていうのに魔道具を持ち

込み、それを敵にバレないように設置す

るなんてこともな」

「やっぱりとんでもねぇ集団だな、"黒

天の星"は」

「それもそうだが、あのハジメとかって

いう敵の親玉もおそらく相当やばい奴だ

と思うぞ」

「ん?それは何でだ?」

「今回、ハジメを討ち取る為に"黒締"

は幹部達を全員、引き連れて奴の待つ場

所へと向かったからだよ」

「それがどうしたっていうんだよ」

「分からないのか?あの"黒締"が単騎

ではなく、複数で向かったんだぞ。これ

まで幾度となく強者を倒してきた"黒締

"だが、それは全てたった1人で行った

ものだ。それが今回はどうだ?敵1人に

対して、あんなに大勢で立ち向かったり

して……………」

「ごくっ…………つ、つまり、それはど

ういう…………」

「だから、あのハジメとかいう男がとん

でもない奴だったってことだよ。"黒締

"が軽く危機感を覚える程にはな」









「ちっ……………また、でしゃばりやがっ

た。いつもそうだ。何故か、あいつらが

話題を掻っ攫っていく」

「仕方ねぇよ。いまや"黒天の星"は注

目の的だ。しかもその知名度は同業者だ

けに留まらない」

「目障りな奴らだ」

「最近では軍団レギオンの方の知

名度も上がってきているみたいだぜ?ど

うやら傘下も親クランの勢いに感化され

て、頑張っているみたいだし

な………………俺も"黒の系譜"に何か指

名依頼でもしようかな」

「さらに情報を補足してんじゃねぇよ!

奴らにとっての躍進はこっちにとっての

後退だ。そんなの聞いたところでイライ

ラしかしねぇ……………ってか、お前なに

さりげなく裏切ろうとしてんだよ」

「裏切り?ただ依頼するだけで?」

「お前、今の台詞は間違っても俺以外の

前で言うなよ?八つ裂きにされるぞ」

「何でだ?」

「今、上の方…………幹部やクランマス

ター、それから軍団長レギオンマスターは奴らの名前を出すだけでピリつ

く状態だからだ。考えれば分かることだ

ろう?勢力を広げようとずっと裏で計画

を練っていた中、突如現れた新人冒険者

にことごとく出し抜かれてんだ。そりゃ

あ、そうなる」

「だったら、おかしくないか?お前だっ

て幹部なのに奴らの話題を出した俺を八

つ裂きにしないじゃん」

「それは俺とお前の関係が昨日今日で始

まった訳じゃねぇからだよ。お前には他

のどんな奴よりも信頼を置いている」

「っ!?て、照れるじゃねぇかよ!ちな

みに俺も同じ気持ちだぞ!」

「そうか」

「いや、軽っ!?全然同じ温度感じゃな

い!」

「とにかく、俺はあいつらの名前を出さ

れても平気だ。むしろ、余計にやる気が

出る」

「やる気?一体何の?」

「俺達、"紫の蝋"の勢力拡大に対して

だ」








陽の光が射し込む広い一室。そこには統

一された装いで円卓を囲む者達がいた。

皆、一様に難しげな顔をしており、それ

は議題内容がいかに難解なものであるか

を示していた。

「奴ら、またもや大金星だな」

「これで周りからの評価も上がる一方

だ」

「民衆の支持を得たのは強い」

「いや、それよりも同業者……………特に

高ランク冒険者やギルド幹部以上の者達

に完全に認められつつあるというのが厄

介だ」

「どちらにせよ、我々がやることはただ

1つだけだ」

その中で最も立場が上の者は立ち上がる

とこう高らかに宣言した。



「我々の前に立ちはだかる者は何者であ

ろとも全て排除する。それが……………"

殲滅連合"のたった1つの掟だ」
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