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レティシア15歳 輝く未来へ

第155話 暗雲、希望、旅立ち

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 王都騒乱の日以降、イスパル王国……いや、カルヴァード大陸ではグラナ帝国の動きに対する警戒がいっそう高まる。

 各国の連携がより重要となることから、イスパル王国の主催により国際会議が行われた。
 その中で、グラナ帝国と国境を接する国々への支援軍を派遣することなど、様々な事案が可決された。
 会議は軍事に関するものなので、レティシアが参加することはなかったが……各国代表者の中には鉄道の視察を希望する者も多かったため、期間中は忙しく過ごしていた。


 そして、国際会議の期間中に新たな事件が勃発する。
 発端となったのはメリエルだ。

 その日、各国代表者の歓迎のためエーデルワイス歌劇団の特別公演が行われたのだが……公演が終わったカティアの楽屋にメリエルが表敬訪問したときのことだ。
 にこやかに談笑しているとき、突然彼女がシギルを発動したのだ。
 ウィラー王国の王族に伝わるのは、生命神エメリナのものであるが、それはメリエルの姉が継承していた。
 それにもかかわらず、メリエルが発動……継承したということは、姉の身に何かが起きたということに他ならない。
 それを受け、カティアとメリエルは即座に仲間とともにウィラー王国へ旅立つことを決めた。

 そして、彼女たちが向かったウィラー王国にて。
 密かに森林地帯に潜んでいたグラナ帝国の部隊が王都モリ=ノーイエに攻撃を始める。
 美しき森の都を舞台とした戦闘は熾烈を極めたが……カティアたちシギルの継承者たちの活躍によって、なんとかこれを撃退する事に成功するのだった。

 その戦闘の終結間際に起きた出来事が、のちに世界中を驚愕させることになった。

 なんと、遥かな昔に地上を去ったという神々の一柱……生命神エメリナが、カティアの求めに応じて地上に降臨したのだ。
 そして神は奇跡を起こし、戦闘によって失われた多くの命を復活させた。

 エメリナは今も地上に留まり、さらなる大きな戦いに備えているという。
 それは世界そのものの命運をかけたものであり、神々も他人事ではない。
 そのため、大戦勃発の際には他の神々も地上に降りる準備をしているらしい。




 そしてその時はやって来た。

 ウィラーでの戦いのあと、ついにグラナ帝国がカルヴァード大陸諸国に侵攻を始めたのだ。
 その背後には『黒神教』と、彼らが信奉し復活を目論む邪なる神の存在。

 カティアとその仲間……神々の加護を得た勇者たちは、世界の平和を取り戻すため強大な敵に挑む。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「カティア……みんな……絶対に帰ってきてよね!!」

 これから決戦に挑む親友たちに、レティシアは涙を堪えながら激励の言葉をかける。

 既に兄リュシアンはグラナ帝国の侵攻に備えるため、イスパル王国の派遣軍の指揮官として前線に赴いた。

 ヴァシュロン王国の王子であるフィリップも、物資供給などの後方支援に尽力するため母国に帰った。

 そしてカティアたちは……グラナ帝国との戦いは各国軍に託し、諸悪の根源たる『黒神教』の本拠を叩くため、これから旅立つのである。
 カティアがそう決断した背景として、対グラナ戦線には神々が力を貸してくれると約束してくれた……というのが大きい。

 カティアとともに決戦に挑むのは、テオフィルス、ミーティア、ルシェーラ、シフィル、ステラ、メリエル……そしてシェラと言う女性だ。


「レティ……大丈夫、私達は絶対にここに帰ってくるよ。絶対に平和を取り戻すから……その次はあなたの番だよ!」

「そうですわ。もうすぐ鉄道開業ですもの。楽しみにしておりますわ」

 そうやって再会を約束する言葉を交わしながら、旅立つ勇者たちと見送る者たちが一人ひとり握手を交わす。


 そして……

「それじゃ、行ってきます!!」

「みんながんばって!!!」


 今、一度ひとたびの別れ。
 そこに悲壮感はなかった。


 不安がないわけではない。
 しかし、勇者たちは希望を信じ、ただひたすらに前を向く。
 そして帰りを待つレティシアも……今は彼女たちを信じて送り出す。




 それは転生歌姫と仲間たちの物語の最終章。
 神々の時代に真の意味で終わりを告げるための旅路の始まり。

 そしてそれは新たな時代の幕開けを告げる、新たな物語の始まり。
 勇者たちがもたらす平和な世界の主役となるのは……レティシアのような夢を抱く者たちだ。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……行っちゃった」

 王都外壁の門前でカティア達の旅立ちを見送ったレティシアは、一行の姿が見えなくなるとポツリと呟いた。

 信じて帰りを待つ。
 しかしそうは言っても不安は募るばかりだ。
 それは、レティシアとともに見送りに来ていた両親や国王夫妻、エーデルワイス歌劇団の面々……その他の多くの者たちも同様だろう。


 そんなレティシアの不安な気持ちを慮ったのか、やはり見送りに来ていたリディーが彼女の肩に手を置いて言う。

「レティ。あの方々は必ずやり遂げる。それに……皆それぞれが今やるべき事をやっている。フィリップもな。だったら俺達は……」

「うん、分かってる。カティアも言ってたからね。戦いが終わったら……平和な世界になったら、新たな時代の幕開けを告げるのは、私達の鉄道だよ!!」

「……ああ!!」

「さ~て、こうしちゃいられないよ。開業に向けてやることはまだまだ沢山あるんだからね!私達も行こう!!リディー!!」


 瞳に力強い光を宿し、レティシアは前に進む。

 彼女のその姿は、多くの者に希望を与えるのだった。

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