1 / 30
1
しおりを挟む
「おい、雑魚テイマー。今日も薬草採取か?」
「さっさと、冒険者辞めちまえ!!」
俺がギルドに入ると、そんな声が投げかけられた。
正直腹が立つが、この手の輩は無視するに限る。
笑い声から逃げるように俺はギルドをあとにした。
「わふ」
俺の足にすり寄ってくる白い子犬が小さく鳴いた。俺の唯一の相棒であるシロだ。
特技と言ったら薬草の匂いを嗅ぎ分けることしかないが、俺の大切なパートナーである。
「今日も薬草採取だよ」
そう言ってシロの頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めた。
「今日は草原の方にでも行くか?」
「わふ!」
シロは嬉しそうに尻尾を振った。
そんな俺達の様子を見て、すれ違う冒険者が苦笑いを浮かべていた。
俺の名はカイト・ユーフィリア。最弱テイマーという不名誉な異名をもつ冒険者だ。職業柄、毎日採取クエストをこなしているせいで、『薬草採取』というあだ名までついている。
俺は子犬しかテイムできないという特技のせいで、冒険者ギルドではバカにされていた。そんな俺にも相棒であるシロがいるから毎日楽しく冒険者として活動できている。
「この薬草は傷薬の材料になるからな」
シロを従魔にしてから一ヶ月が経った。今では一緒にクエストを受けることも多くなってきた。今日も草原で薬草採取のクエストを受けているところだ。
「わふわふ」
シロは嬉しそうに尻尾を振った。初めて出会った時は、こんなにも懐いてくれるようになるとは思わなかった。
「今日もたくさん採取したし帰るか」
「わふ!」
シロは薬草の束を咥えて、俺の隣を歩く。シロもなかなかに成長してくれたと思う。最初はダメダメだと思っていたが、今では頼れる相棒である。
「グォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
突然、モンスターの咆哮が聞こえた。シロが俺を庇うように前に出る。
「グルルルルルルルルルルルルルルッ……」
唸り声をあげながら現れたのは、巨大なドラゴンだった。
「どうしてこんな所にドラゴンがいるんだ……?」
この草原にはゴブリンやウルフなどの弱いモンスターしか生息していないはずだ。そんな場所にドラゴンが現れるなんて普通ありえない。そもそも王都から遠く離れたこんな田舎町に現れること自体がおかしい。
「お前だけでも逃げろ!」
俺はシロに逃げるように指示をした。ドラゴンが相手では俺でも勝てる気がしない。だからシロだけでも生き延びてほしかった。
「わふ?」
しかし、シロは俺の指示に従うことはなかった。むしろやる気満々といった様子である。
「グォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ドラゴンは大きな翼を広げながら突進してきた。その巨体からは考えられないようなスピードだった。
(まずい……)
俺は死を覚悟して目を瞑った。次の瞬間、凄まじい衝撃波に襲われる。
「わふっ!」
だがシロの鳴き声を聞いて、俺は目を開けた。するとそこには、ドラゴンの攻撃を防いでいる白銀の狼の姿があった。
「グルルルッ……」
狼は唸り声をあげて、ドラゴンに嚙みついた。
「グォッ!!」
狼の牙がドラゴンの鱗を貫いた。すると、そこから血が溢れ出す。
「グルルルッ……」
ドラゴンは苦しそうに唸りながら、狼に向かって炎を吐き出した。
しかし、その炎は狼に届く前にかき消されてしまう。
「グルルルッ……」
狼の口から凄まじい冷気が放たれると、一瞬でドラゴンを凍らせた。そして次の瞬間には氷漬けになったドラゴンが崩れ去った。
「グルルルッ……」
狼は勝利の雄叫びをあげた。その姿を見て、俺は確信した。
「もしかしてシロなのか?」
「わふ!」
狼は嬉しそうに鳴いてから、子犬の姿に戻った。
「どういうことだ?」
俺は目の前の光景が信じられなかった。さっきまでは巨大なドラゴンだったはずだ。それが今は可愛らしい子犬になっている。
「わふ」
シロは俺の足にすり寄ってきた。まるで褒めて欲しいと言っているみたいだった。
(もしかして、さっきの姿は幻術か何かだったのか?)
俺には理解不能な出来事だが、狼の姿になった時も驚きすぎて反応できなかったせいで、ただ見ていることしかできなかった。それに今もまだ頭が混乱している状態だ。
「とりあえず帰るか」
「わふ!」
俺はシロを抱き抱えた。そして一緒に冒険者ギルドへと向かうことにした。
「さっさと、冒険者辞めちまえ!!」
俺がギルドに入ると、そんな声が投げかけられた。
正直腹が立つが、この手の輩は無視するに限る。
笑い声から逃げるように俺はギルドをあとにした。
「わふ」
俺の足にすり寄ってくる白い子犬が小さく鳴いた。俺の唯一の相棒であるシロだ。
特技と言ったら薬草の匂いを嗅ぎ分けることしかないが、俺の大切なパートナーである。
「今日も薬草採取だよ」
そう言ってシロの頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めた。
「今日は草原の方にでも行くか?」
「わふ!」
シロは嬉しそうに尻尾を振った。
そんな俺達の様子を見て、すれ違う冒険者が苦笑いを浮かべていた。
俺の名はカイト・ユーフィリア。最弱テイマーという不名誉な異名をもつ冒険者だ。職業柄、毎日採取クエストをこなしているせいで、『薬草採取』というあだ名までついている。
俺は子犬しかテイムできないという特技のせいで、冒険者ギルドではバカにされていた。そんな俺にも相棒であるシロがいるから毎日楽しく冒険者として活動できている。
「この薬草は傷薬の材料になるからな」
シロを従魔にしてから一ヶ月が経った。今では一緒にクエストを受けることも多くなってきた。今日も草原で薬草採取のクエストを受けているところだ。
「わふわふ」
シロは嬉しそうに尻尾を振った。初めて出会った時は、こんなにも懐いてくれるようになるとは思わなかった。
「今日もたくさん採取したし帰るか」
「わふ!」
シロは薬草の束を咥えて、俺の隣を歩く。シロもなかなかに成長してくれたと思う。最初はダメダメだと思っていたが、今では頼れる相棒である。
「グォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
突然、モンスターの咆哮が聞こえた。シロが俺を庇うように前に出る。
「グルルルルルルルルルルルルルルッ……」
唸り声をあげながら現れたのは、巨大なドラゴンだった。
「どうしてこんな所にドラゴンがいるんだ……?」
この草原にはゴブリンやウルフなどの弱いモンスターしか生息していないはずだ。そんな場所にドラゴンが現れるなんて普通ありえない。そもそも王都から遠く離れたこんな田舎町に現れること自体がおかしい。
「お前だけでも逃げろ!」
俺はシロに逃げるように指示をした。ドラゴンが相手では俺でも勝てる気がしない。だからシロだけでも生き延びてほしかった。
「わふ?」
しかし、シロは俺の指示に従うことはなかった。むしろやる気満々といった様子である。
「グォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ドラゴンは大きな翼を広げながら突進してきた。その巨体からは考えられないようなスピードだった。
(まずい……)
俺は死を覚悟して目を瞑った。次の瞬間、凄まじい衝撃波に襲われる。
「わふっ!」
だがシロの鳴き声を聞いて、俺は目を開けた。するとそこには、ドラゴンの攻撃を防いでいる白銀の狼の姿があった。
「グルルルッ……」
狼は唸り声をあげて、ドラゴンに嚙みついた。
「グォッ!!」
狼の牙がドラゴンの鱗を貫いた。すると、そこから血が溢れ出す。
「グルルルッ……」
ドラゴンは苦しそうに唸りながら、狼に向かって炎を吐き出した。
しかし、その炎は狼に届く前にかき消されてしまう。
「グルルルッ……」
狼の口から凄まじい冷気が放たれると、一瞬でドラゴンを凍らせた。そして次の瞬間には氷漬けになったドラゴンが崩れ去った。
「グルルルッ……」
狼は勝利の雄叫びをあげた。その姿を見て、俺は確信した。
「もしかしてシロなのか?」
「わふ!」
狼は嬉しそうに鳴いてから、子犬の姿に戻った。
「どういうことだ?」
俺は目の前の光景が信じられなかった。さっきまでは巨大なドラゴンだったはずだ。それが今は可愛らしい子犬になっている。
「わふ」
シロは俺の足にすり寄ってきた。まるで褒めて欲しいと言っているみたいだった。
(もしかして、さっきの姿は幻術か何かだったのか?)
俺には理解不能な出来事だが、狼の姿になった時も驚きすぎて反応できなかったせいで、ただ見ていることしかできなかった。それに今もまだ頭が混乱している状態だ。
「とりあえず帰るか」
「わふ!」
俺はシロを抱き抱えた。そして一緒に冒険者ギルドへと向かうことにした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
917
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる