最弱テイマーのペットの子犬は実はフェンリルだった〜SSSランクモンスターを従魔にした俺は見下してきた奴らをざまぁする〜

17

翌日、俺たちはギルドの依頼で街外れの古びた屋敷に向かっていた。なんでもこの屋敷には幽霊が出るという噂があるらしい……。


「それにしても不気味な場所だな……」


周囲を見回しながら呟いた。するとエレナさんが話しかけてきた。


「確かにちょっと不気味よね……でも大丈夫よ、私たちならなんとかなるわ！」


そう言って励ましてくれた。彼女の優しさに感謝しながら俺たちは屋敷の中へと入っていった──。


「暗いな……」


中に入ってみると薄暗くて不気味な雰囲気が漂っていた……。恐る恐る進んでいくと、前方に人影のようなものが見えた……。


（あれは！？）


よく見るとそれは少女だった。長い黒髪で可愛らしい顔立ちをしているが、どこか悲しげに見えた……。彼女はじっとこちらを見つめていたかと思うと不意に口を開いた──。


「あなたたちは冒険者ですか……？」


突然話しかけられたので驚いたが、とりあえず答えることにした……。


「えっと……そうですけど……」


すると少女は嬉しそうな表情を浮かべた後、ゆっくりと近づいてきた……。そして俺の手を取ると握りしめてきた……！


（えっ！？）


突然のことに動揺していると彼女は話し始めた──。


「やっと来てくれたんですね……！ お願いします、私の願いを叶えてください……！」


そう言われて戸惑っているとエレナさんが話しかけてきた。


「あなたの名前を教えてもらえるかしら？」


「私はアリスといいます」


「そう、アリスさんね……それであなたの願いというのは？」


エレナさんが問いかけると彼女は答えた──。


「私をここから連れ出して欲しいのです……」


「えっ……！？」


思わず声を上げてしまった。なぜなら彼女の目には涙が浮かんでいたからだ……。


（どういうことだ……？）


困惑していると今度はエレナさんが問いかけた。


「アリスさん、あなたはここで何をしていたの？」


すると彼女は語り始めた──。


「私はこの屋敷で生まれ育ちました……両親はおらず身寄りもなくずっと一人で過ごしていましたが……」


そこまで言うと一旦言葉を切った後、再び話し始めた──。


「ですがある日、私は屋敷を訪れた男性に誘拐されてしまい……この地下室に閉じ込められてしまいました……」


「どうしてそんなことを……？」


エレナさんが問いかけると彼女は答えた。


「その人はある貴族の方でした……。彼は私を奴隷として利用するつもりだったのです……。そして毎日のように酷い扱いを受けました……鞭で打たれたり、暴力を振るわれたりして……それでも耐え続けていたのですがある日を境に急に何も言わなくなってしまい、代わりに不気味な笑い声を発するようになったんです……！ それ以来、私は怖くてずっとここで過ごしていました……」


「なるほど、そういうことだったのね……辛かったでしょう……？」


エレナさんが言うと彼女は頷いた。そして涙を流しながら語り続けた──。


「それから私は幽霊になりました……。最初は自分が死んだことも理解できずにいましたが、やがて自分が幽霊になったことに気付きました……」


そこまで話すと彼女は黙り込んでしまった……。そしてしばらく沈黙が続いた後、エレナさんが口を開いた──。


「分かったわ！ 私たちがあなたをここから連れ出してあげる！」


それを聞いて安心したのか、アリスさんの目から大粒の涙が溢れ出した。そんな彼女を慰めるように肩に手を乗せると優しく微笑んだ……。


（よし、何とかしてここから脱出しないとな……！）


心の中で決意を固めていると、不意に声をかけられた──。


「あの……ありがとうございます……！」


涙を拭いながら感謝の言葉を述べる彼女を見ていると、なんだか微笑ましい気持ちになった……。するとエレナさんが話しかけてきた。


「カイトくん、この子を連れて脱出するわよ……！」


「ええ、もちろんです！」


2人でアリスさんを連れて屋敷から抜け出すことに成功した──。


「カイトさん……私をテイムしてくださいませんか……？」


アリスさんがそう言うとエレナさんは驚いた表情を浮かべた。


「テイムってモンスターを仲間にするってこと！？」


エレナさんの問いに彼女は頷いた。すると彼女は俺のほうを向いて問いかけてきた。


「カイトくん、大丈夫かしら？」


（うーん、どうしようか……）


少し考えた後、答えを出した──もちろん答えは決まっている！ アリスさんを救いたいという気持ちもあるし、何より彼女の目が本気であると語っていたからだ……！


「よし、分かった！ 君を仲間にするよ！！」


アリスさんの目をしっかりと見つめて宣言すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます……カイトさん……！」


こうして俺たちは新たな仲間を得たのであった。