婚約破棄の原因は婚約者が妹を気に入ったから ~偽聖女と認定するのは結構ですが、どうなっても知りませんよ?~

岡暁舟

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その15

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「そこにいたのか……????あいつは人間か?????」

「ああ、上物の人間だ……」

魔物は姿を変えて、人間のようにふるまうことができる。だから、メプチンの目の前に現れたとしても、メプチンはそれに気が付かないのだ。

「やあやあ、そこの美しいお嬢さん。お一人ですかい???」

ある魔物が人間に姿を変えて、メプチンに話しかけた。

「なに、あんたは???」

メプチンはあしらおうとした。だが、魔物はすぐさま退散しなかった。

「いえいえ、少しお話がしたいだけなんですよ。一緒に来ませんか???」

魔物はしつこく、メプチンを誘おうと試みた。だがしかし、人一倍プライドの高いメプチンは、これほど得体のしれない男の招きを力づくで断ろうとした。

「ああ、だから人間っていうのは、本当につまらない生き物なんだよな……」

そう言って、他の魔物たちも、メプチンの前に姿を現した。この異常事態を察知したメプチンは、ようやく気が付いた。この人間に似た奴らは全て魔物であるということを……。

その時、メプチンの脳裏には一瞬、姉の聖女エランが頭に浮かんだ。いまさら……本当に今更だった。でも、忘れようとしても、あの時負った傷を忘れることはできなかった。そして、あの時の真剣なまなざし……自分を守り抜いたエランのまなざしを今でも心の奥底にしまい込んでいた。

「お姉さま……」

メプチンはそっとつぶやいた。まあ、これで聖女エランが現れるのであれば話は早い。しかしながら、そううまくはいかないのがこの人間世界なのだ。

「ああ、私はここで死ぬのかしら???ハハハハハハハ……ねえ、あなたたちは魔物何でしょう???隠さなくてもいいわよ????私にはわかるの。だって、私はね、聖女だから……」

聖女と言えば驚いて逃げる……そんな嘘が通用するとは思わなかったが、とりあえず試してみた。すると、魔物たちはいっせいに笑い出した。

笑われるのを一番の屈辱だと自覚していたメプチンは再び怒り出した。

「ちょっと!!!!!何をそんなに笑っているのよ!!!!!!」

すると、魔物たちは言った。

「いいえね、どうして人間というのはこれほどまでに滑稽な生き物なのかって……」

「あなたたち、私たちをバカにしてるんじゃないの?????」

メプチンは本気で怒った。

「ええ、してますとも。だって、あなた方人間に勝ち目はないじゃないですか????」

その通りだ。だが……彼女だけは違う。

「私のお姉さまだったら!!!!!あんたらを簡単に亡ぼすことができるんだから!!!!」

「ほお、そうですか????エラン様のことをおっしゃっているんですね?????あれ、あなたがかの有名な聖女様なのではなかったのですか??????」

こんな話をされてしまったら、メプチンはもはや、返す言葉がなかった。屈辱……あるいは、それ以上の敗北が身に染みるようだった。


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