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さみしい集会
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「まさか全員が欠席なんて……!」
ぼくはがっくりと肩を落とす。
週末の金曜。
今日はより早く帰宅して、コタツと暖房の支度もオッケー、出迎え用のお菓子を用意して、そわそわと時計を見ながら待ち続けること──二時間。
インターホンは鳴らない。
玄関も、何度も確認しに行った。
予定していた七時はとっくに過ぎていて、今日はさすがにみんなが訪れることはないだろう。
「……ユウレイ~」
「にゃあ?」
コタツの上で背中を丸めて、作り置きおかずを食べる黒猫に縋りつこうとする。
手はするっと体をすり抜ける。
ちっくしょー。
もふもふ毛並みが恋しい!
あ、うっとおしそうな顔をされた気がする……
なおさらがっくり……
スマホを見てみても時間が巻き戻るわけはなく、連絡先を聞いておかなかったことを後悔する。
このご時世だというのに、ぼくの部屋で集まる方法しか連絡の取りようがないなんて。
……ほかの人たちは連絡先、交換してたりするのかな?
……う、ネガティブな思考ばかり浮かんでくる。
「はあー! 七時ぴったりに来てくれたのはお前だけだよ……」
「ふに~」
鼻から音を出すように小さく鳴いて、申し訳程度にぼくに返事をすると、黒猫はまた夢中でおかずを食べ続ける。
「生前よりもよく入ってくなぁ。え、それって幽霊特権?」
独り言だ。
しばらく観察する。
黒猫の口から入ったおかずはどこに行ってしまうんだろうな?
すでに個体の大きさの半分くらいの体積のおかずを食べているはずなんだけど?
「お前には食べて貰えて、嬉しいよ」
机に突っ伏して、黒猫を見上げながらそう言うと、ふっと口角が上がった。
黒猫が「しょうがないな」とでも言いたげに、ぼくの元にのそのそ歩いて来て、尻尾で頭を撫でていく。
もちろん透りすぎるんだけど、それでも気持ちが慰められるような気がした。
ぽん、ぽん、と尻尾の上下のリズム。
ゆっくりと流れる時間に身を任せて、ふて寝してしまおうかと思った。
「にゃあ」
ふと、黒猫がテーブルから降りて……玄関へ?
うそ、あの寒がりの黒猫が自ら!?
こんな寒空の日には家から出たがらなかったのに!?
まだいつものさよならの時間にもなってないのに。
ぼくの黒猫耳がへにゃりと伏せたようだ。
「お前もここにいなくなっちゃうの?」
とても拗ねた声が出た。
ぺしぺしと尻尾を床に叩きつけている黒猫は、外に行こうとせずに振り向き、ぼくを急かしている様子。
鼻先で、ふいっと玄関扉を指しては、ぼくを振り返る。
「…………一緒に来いって?」
その通りらしい。
満足げに、猫の口角がにーっと上がる。
「そういえば、最初はみんな、黒猫を追いかけてぼくの家まで来てくれたんだっけ」
待っていたのはぼくだけだ。
……寒そうな窓の外を眺めて、ごくり、と喉を鳴らす。
「行く! 連れてって」
「にゃーお」
黒猫の返事を聞いてから、素早く動く。
コタツの電源を切って、コートを羽織ってマフラーを巻き、お土産用のお菓子を紙袋にまとめて入れた。
作り置きおかずは小さなタッパーに詰める。
何気に大荷物になってしまった。
あ、こら、食べちゃダメだぞユウレイ! って、紙袋の匂いを嗅いでいる黒猫に言う。
さあ、出発だ。
みんなはどうしているだろう?
迷惑だと思われないといいな……。
それでも、会いたいなってぼくは思ってて、黒猫が導いてくれるから、勇気を出して外に出かけた。
平凡なぼくの、いつもの日常に、また変化がちょっぴり生まれた。
ぼくはがっくりと肩を落とす。
週末の金曜。
今日はより早く帰宅して、コタツと暖房の支度もオッケー、出迎え用のお菓子を用意して、そわそわと時計を見ながら待ち続けること──二時間。
インターホンは鳴らない。
玄関も、何度も確認しに行った。
予定していた七時はとっくに過ぎていて、今日はさすがにみんなが訪れることはないだろう。
「……ユウレイ~」
「にゃあ?」
コタツの上で背中を丸めて、作り置きおかずを食べる黒猫に縋りつこうとする。
手はするっと体をすり抜ける。
ちっくしょー。
もふもふ毛並みが恋しい!
あ、うっとおしそうな顔をされた気がする……
なおさらがっくり……
スマホを見てみても時間が巻き戻るわけはなく、連絡先を聞いておかなかったことを後悔する。
このご時世だというのに、ぼくの部屋で集まる方法しか連絡の取りようがないなんて。
……ほかの人たちは連絡先、交換してたりするのかな?
……う、ネガティブな思考ばかり浮かんでくる。
「はあー! 七時ぴったりに来てくれたのはお前だけだよ……」
「ふに~」
鼻から音を出すように小さく鳴いて、申し訳程度にぼくに返事をすると、黒猫はまた夢中でおかずを食べ続ける。
「生前よりもよく入ってくなぁ。え、それって幽霊特権?」
独り言だ。
しばらく観察する。
黒猫の口から入ったおかずはどこに行ってしまうんだろうな?
すでに個体の大きさの半分くらいの体積のおかずを食べているはずなんだけど?
「お前には食べて貰えて、嬉しいよ」
机に突っ伏して、黒猫を見上げながらそう言うと、ふっと口角が上がった。
黒猫が「しょうがないな」とでも言いたげに、ぼくの元にのそのそ歩いて来て、尻尾で頭を撫でていく。
もちろん透りすぎるんだけど、それでも気持ちが慰められるような気がした。
ぽん、ぽん、と尻尾の上下のリズム。
ゆっくりと流れる時間に身を任せて、ふて寝してしまおうかと思った。
「にゃあ」
ふと、黒猫がテーブルから降りて……玄関へ?
うそ、あの寒がりの黒猫が自ら!?
こんな寒空の日には家から出たがらなかったのに!?
まだいつものさよならの時間にもなってないのに。
ぼくの黒猫耳がへにゃりと伏せたようだ。
「お前もここにいなくなっちゃうの?」
とても拗ねた声が出た。
ぺしぺしと尻尾を床に叩きつけている黒猫は、外に行こうとせずに振り向き、ぼくを急かしている様子。
鼻先で、ふいっと玄関扉を指しては、ぼくを振り返る。
「…………一緒に来いって?」
その通りらしい。
満足げに、猫の口角がにーっと上がる。
「そういえば、最初はみんな、黒猫を追いかけてぼくの家まで来てくれたんだっけ」
待っていたのはぼくだけだ。
……寒そうな窓の外を眺めて、ごくり、と喉を鳴らす。
「行く! 連れてって」
「にゃーお」
黒猫の返事を聞いてから、素早く動く。
コタツの電源を切って、コートを羽織ってマフラーを巻き、お土産用のお菓子を紙袋にまとめて入れた。
作り置きおかずは小さなタッパーに詰める。
何気に大荷物になってしまった。
あ、こら、食べちゃダメだぞユウレイ! って、紙袋の匂いを嗅いでいる黒猫に言う。
さあ、出発だ。
みんなはどうしているだろう?
迷惑だと思われないといいな……。
それでも、会いたいなってぼくは思ってて、黒猫が導いてくれるから、勇気を出して外に出かけた。
平凡なぼくの、いつもの日常に、また変化がちょっぴり生まれた。
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