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本編

第30話 『この気持ちは……何?』 ③

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「……ヴィニー、お茶を、お願いできる?」
「はい、モニカ様。ただいま」

 自室に戻った私は、ヴィニーにお茶を頼んだ後、倒れこむようにソファーに腰を下ろしました。いろいろと思うことがあり、疲れてしまったのです。思うことは主に二つ。でも、とりあえずはお茶でも飲んでから考えましょう。そう、思っていました。

(……はぁ)

 心の中でため息をつきながら、ヴィニーが用意してくれるお茶を待ちます。それから数分経った時。ヴィニーがお茶を持ってきてくれました。まだ湯気の上がるカップに手を付けて、お茶をいただきます。……あぁ、やっぱり落ち着くわ。どうやら、ヴィニーは心が落ち着くようなブレンドを選んでくれたようです丸やっぱり、ヴィニーは私のことをとてもよくわかってくれている。そう思って、ほんの少しだけ気持ちが落ち着きました。

「……モニカ様」

 ヴィニーのそんな心配そうな声が耳に届いた時、私はとりあえず「ごめんなさい」とだけ言っていました。謝ってしまった理由なんて簡単、心配をかけたことについて謝っていたのです。ですが、ヴィニーは「別に謝っていただきたいわけでは、ありません」と言ってきます。……どうやら、ヴィニーは何処までも私のことを大切に思ってくれているようです。まぁ、分かっていましたが。

 それに、他でもない私だってどうしてあんな風に声を荒げてしまったのかが、分からないのです。だから、理由を尋ねられても答えることは出来なかったでしょうし。

 どうして、私はあんな風に声を荒げてしまったのでしょうか。それが、どれだけ考えても考えても、分かりません。そして、どうして逃げてきてしまったのだろうか。もっときちんと向き合ってお話をするべきだったのではないだろうか。そう思って、後悔もしてしまいます。……今更、後悔したところで何も変わらないのに、です。

(……それに、どうしてあんな風に心が痛んだのかしら……)

 そして、もう一つ思うこと。それが、どうしてあの時に胸がチクリと痛んだのか、ということでした。アイザイア様とレノーレ様がお会いしている。それは、ただの噂なのに。噂の域を出ていないのに、どうしてあんなにも不安に思ってしまったのか。だって、それはただの噂ですよ? 真実かどうかなんて、分からないのに。

(でも、やっぱり……)

 心が、痛む。それは、間違いではありませんでした。私は、一体どうしたいのか。それさえ、分からなくなってしまいます。……本当に、どうすればいいのでしょうか? それに、この気持ちの正体を誰かに教えてもらいたかった。胸がチクリとして、痛む。その感情の正体が、私には分からなかったから。

(誰かに、相談するべきなのかしら……?)

 ふと思い浮かんだそんな案ですが、私はすぐにかき消しました。こんなこと、相談できるわけがありません。余計な心配をかけるだけになります。そう思い込んで、私はこの気持ちとこの悩みに蓋をしました。だって、そうじゃないと……ヴィニーに、この感情のすべてをぶつけてしまいそうになったから。また、八つ当たりをしてしまいそうになったから、です。
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