スポットライトは勿体ない恋
光前 岳(みつまえ がく)、三十三歳、しがない会社員兼β男。一か月前、めでたくΩの恋人と別れた。理由はΩの運命の番が現れたから。
恋人が運命に屈する姿に恐れて自分から別れを告げたくせに、めそめそと引き摺る光前の隣の部屋に引っ越してきたのは、どこか影のある大食漢美男子の香椎(かしい)。
『運命の、番とか。アルファとかオメガとか、そう言うの全部、クソみたいなシステムだって思うの、心底分かります。獣みたいで気持ち悪いすよね』――。運命の番というものが賞賛される世界で、香椎は顔色一つ変えずにそう言い放った。
そのあまりにも差別的な思考にいけないと思いつつ共感した光前は、お隣さんとして香椎と交流を深めていく。香椎もまた、面倒見がよくも少し危うい部分がある光前が放っておけないようで、二人は立派な晩酌友達となっていった。そんなある日、光前の勤める会社に中途採用の人材として香椎が入社してきて……。
主役にスポットライトが当たるこの世界で、端役にしかなれない二人は、舞台の端の暗がりで手を繋いでいく。運命じゃなかった男と、αの価値からあぶれた男が織り成す、『じゃない方』の二人のとるに足らないお話。
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