銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕はロロの足を止めて俯く。
 リアムも隣で馬を止め「どうした?」と顔を覗き込んでくる。
 僕は今更ながらに感じた不安を口にした。

「あの…聞いてもいい?」
「なんだ?」
「リアムが僕を妻にすると言ってくれて、嬉しくて失念していたんだけど…。きっと皆には反対されると思う…。僕は男だし、他の人達から見たら得体が知れないし…。なのに僕を城に入れていいの?」
「なんだ、そんなことか。改まって聞いてくるから不安になったじゃないか」

 リアムが困ったように笑う。
 いつもの笑顔や凛々しい顔も好きだけど、今みたいな顔もなんだか可愛くて好きだ。
 そんなことをリアムの目を見て思った。

「そんなことって…」
「何も問題はない。むしろ歓迎されると思うぞ」
「ええっ!どうして?バイロン国では同性婚が認められているの?」
「いる。まあ、王族ではまだいないが」
「ほらっ、問題ありじゃないか」

 リアムが馬を降りたのを見て、僕も慌ててロロから降りる。
 リアムは僕に近寄り手を握って引くと、僕を胸に抱き寄せた。

「俺は第二王子だ。跡継ぎではない。でも兄よりも俺を次の王にしようと企む者がいる。兄の母親の方が身分が高いのに、くだらん話だ。だから兄を推す派閥の者達は、俺を消したくてたまらない。その俺が妻にする者を連れて帰ったと知ったらどうなると思う?事故に見せかけておまえを消しに来るかもな」
「…リアムがいるから…大丈夫」
「ははっ、よくわかってるじゃないか」

 リアムが僕のつむじにキスをする。

「だが俺が妻にと連れ帰った人物が男だと知れば、襲ってはこない。男だと子は産めないからな。兄を推す者達も安堵するだろう。だからフィーとのことは反対されない」
「でも…それだとリアムを推す人達は怒るんじゃ…。それにバイロン王はどう思うの…?」
「父も反対はしないさ。あの人は揉め事を嫌うからな。兄を王にするために、俺には大人しくしてて欲しいのさ」
「でも…」
「フィー。おまえは何も心配しなくていい。俺が必ず幸せにするから、傍にいて欲しい」

 リアムがまっすぐに僕を見つめる。
 紫の瞳がとても美しく澄んでいて、そのhitomi見ていると僕の中の不安がすーっと消えた。
 僕は頷いて微笑む。

「わかった。僕も皆に反感を買われないように頑張って笑顔でいるね」
「…それはやめろ」
「えっ、どうして?」
「おまえの笑顔は誰にも見せたくない」
「あ…ごめ…僕、笑うの苦手だから…変だもんね」
「違う。違うけどそう思っててくれた方が…」

 リアムがブツブツと呟いている。
 僕はどうすればいいんだろうと目を伏せていると、頬にキスをされた。ゆっくりと顔を上げると、今度は唇を塞がれる。優しく触れて離れていく端正な顔を見る。
 リアムが片方の眉を上げて息を吐いた。

「あのな、おまえは笑うと可愛いんだ。すごく可愛い。だから誰にも見せたくない。俺の独占欲だ」
「…え?あ…そう、なの…?じゃあ…気をつけるね」
「そうしてくれ。では入るぞ。迎えが来たようだ」

 どこに迎えが…と門に目を向けたその時、音もなく扉が向こう側へと開いて、黒髪に青い目の長身の騎士が出てきた。
 
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