銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「リアム様!よろしいでしょうかっ?」

 激しく扉が叩かれて、ゼノの焦った声が聞こえる。
 リアムは大きく息を吐くと、ベッドを降りて扉に向かった。
 僕もゆっくりと起き上がりベッドの端に座る。

「なんだっ、騒がしいぞ」
「開けても…?」
「許す」

 静かに扉が開いてゼノが顔を覗かせる。

「おはようございますリアム様」
「ああ」
「フィル様、おはようございます。体調はいかがですか?」
「…おはようございます。もう大丈夫です」
「そうですか。それは安心致しました」
「おい、早く入れ」
「いえ、リアム様…こちらへ」
「なぜだ。いいから中へ入れ」
「しかし…」

 ゼノが僕をチラリと見て口を噤む。
 リアムが「フィーはもうバイロンの者だ。俺と同等に扱え」と言うと、ようやくゼノが頷いた。
 僕に目礼をしてゼノが部屋に入り扉を閉める。そしてリアムの前で片膝をつくと、驚くことを言った。

「朝からなんの用だ。父には昼から挨拶に行くつもりにしている。だから午前は予定がないはずだが」
「それが…たった今、イヴァル帝国からの使者が到着致しまして」
「なにっ?」
「えっ!」

 僕は思わず声を出して立ち上がった。
 リアムとゼノが揃って僕を見る。
 ゼノの様子からして、僕がイヴァル帝国出身だときっと気づいている。
 僕はふらつきながらリアムの傍へ行き、腕にしがみついた。

「僕を…追いかけて…」
「フィーがここにいることが、もうバレたのか?」
「いえ、そうではありません。フィル様のことは知らないと思います」
「ではなんの用件で?」

 ゼノが一度僕を見て、リアムを見上げた。

「イヴァル帝国の王が、一昨日に亡くなられたそうです。そして即日、新たな王が立たれたと」
「なんだと?」
「うそ…だ、母上…が?」

 僕はそう呟くと、全身の力が抜けてよろめいた。
 床に崩れ落ちる前に、リアムが抱きとめてくれる。そして僕に顔を寄せて何かを言ってるけど、頭がガンガンと痛くて耳鳴りがする僕には聞こえない。
 母上が病気だったという話は聞いていない。なのにどうして?もしや…殺された?母上…、母上はきっと、僕を憎んだままだ。本当にもう、この世にはいないの?姉上が王になった?大丈夫かな…。いや大丈夫か。姉上の傍にはラズールがいるから。きっとラズールが助けてくれる。だから僕が心配する必要は…ない…よね?
 薄れていく意識の中で、いろんな思いが交差する。
 母上がいなくなったのなら、もう僕は狙われることはないのかな。自由なのかな。なんて…そんなわけないか。僕の身体には呪われた子の印が現れたのに。あ、この痣が現れたのは…母上が亡くなった日と同じだ。まさか…関係がある?
 
 そして深く落ちた意識の中で、母上の夢を見た。

 
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