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トラビスに促されるように進んで行くと、厩舎の前に着いた。草を食むロロを見つけて駆け出そうとする僕を、トラビスが腕を引いて止める。
「お待ちください。見張りがいます」
「じゃあ…どうするの?」
「お任せを」
トラビスが僕を近くの木の後ろに押しやり、厩舎の方へと歩いていく。
厩舎の周りを歩いていたらしい見張りの男が戻って来て、トラビスと何かを話している。すると突然、男の身体が崩れ落ちた。
トラビスは男を厩舎の裏側へと引きずって行き、すぐに戻って来た。
「さあ、今のうちに馬を連れ出しましょう。あまり使用されていない門があります。そこから外に出ますよ」
「おまえ…殺したのか?」
「いえ、眠ってもらっただけです」
トラビスが、無表情で指に挟んだ針を見せる。
さすがに優秀だなと息を吐いて、僕は厩舎に近づく。
「ロロ、おいで。イヴァル帝国に帰るよ」
ロロは僕に気づくと、嬉しそうに首を縦に振った。
トラビスがロロと自分の馬を出して「ついて来てください」と歩き出す。
途中で数人の兵に呼び止められたが、トラビスがポケットから紙を出して見せ、何かをこそこそと話すと、すんなりと行かせてくれた。
トラビスに隠れるように歩いていた僕は、フードの下からトラビスを見上げて疑問を口にする。
「その紙はなに?」
「城内を自由に動いていい許可証です。決められた場所だけですが」
「そんなのもらってたの?」
「いえ、勝手に頂戴しました」
「えっ、盗んだの?」
「人聞きの悪い…。少し借りただけです」
「おまえって…やっぱり性格が悪い…」
「なんです?」
「いや…。馬を連れていることは不審がられないの?」
「散歩していると言ったら納得してましたよ」
「……」
僕は黙ってトラビスの琥珀色の目を見つめた。
一瞬目が合い、すぐにトラビスが目が泳がせて顔を背けた。トラビスのさらけ出された首が赤くなっている。
「トラビス、もしや熱があるの?ここ…赤くなってる」
僕は手袋を外すと、手を伸ばしてトラビスの首に触れた。触れた瞬間、素早く手を握られて驚いた。
「びっくりした…。トラビス、手が痛い」
「あ…申しわけありませんっ」
トラビスは慌てて僕の手を離すと、困った顔をして首をさする。
僕に触れられたことがそんなに嫌だったのかと、僕は謝りながら手袋を嵌めた。
「ごめん…勝手に触って。嫌だよね。気をつける」
「いえっ…!そうではっ」
「いいよ。僕は呪われた子だし。証もある。見てみる?」
「え…」
僕はマントから左腕を出してシャツの袖をめくる。手首にまで伸びた蔦のような痣を改めて見て、自分でもゾッとする。
黙って僕の痣を見ていたトラビスが、僕に近づくと大きな手で僕の腕を撫でた。
「なにして…っ!触るな…移るよ」
「大丈夫…なんと美しい…」
「は?ばかなの?目が悪いの?こんなにも禍々しく気持ち悪いのに」
「そんなことはありません。しかしこれは、本当に呪いの証なのですか?」
「そうだよ。ラズールに聞いたことがあるから」
「ラズール…あの男が…」
トラビスがブツブツと口の中で呟く。
まだ僕の腕に触れていたトラビスの手を跳ね除けると、僕は袖を戻して再び歩き出す。
「早く行くよ。リアムが…第二王子が気づく前に」
「…かしこまりました」
再び僕に向かって伸ばしかけていた手を引っ込めて、トラビスが頷いた。
僕はトラビスが何を考えて何をしたいのかがわからなくて、気をつけようと気を引きしめた。
「お待ちください。見張りがいます」
「じゃあ…どうするの?」
「お任せを」
トラビスが僕を近くの木の後ろに押しやり、厩舎の方へと歩いていく。
厩舎の周りを歩いていたらしい見張りの男が戻って来て、トラビスと何かを話している。すると突然、男の身体が崩れ落ちた。
トラビスは男を厩舎の裏側へと引きずって行き、すぐに戻って来た。
「さあ、今のうちに馬を連れ出しましょう。あまり使用されていない門があります。そこから外に出ますよ」
「おまえ…殺したのか?」
「いえ、眠ってもらっただけです」
トラビスが、無表情で指に挟んだ針を見せる。
さすがに優秀だなと息を吐いて、僕は厩舎に近づく。
「ロロ、おいで。イヴァル帝国に帰るよ」
ロロは僕に気づくと、嬉しそうに首を縦に振った。
トラビスがロロと自分の馬を出して「ついて来てください」と歩き出す。
途中で数人の兵に呼び止められたが、トラビスがポケットから紙を出して見せ、何かをこそこそと話すと、すんなりと行かせてくれた。
トラビスに隠れるように歩いていた僕は、フードの下からトラビスを見上げて疑問を口にする。
「その紙はなに?」
「城内を自由に動いていい許可証です。決められた場所だけですが」
「そんなのもらってたの?」
「いえ、勝手に頂戴しました」
「えっ、盗んだの?」
「人聞きの悪い…。少し借りただけです」
「おまえって…やっぱり性格が悪い…」
「なんです?」
「いや…。馬を連れていることは不審がられないの?」
「散歩していると言ったら納得してましたよ」
「……」
僕は黙ってトラビスの琥珀色の目を見つめた。
一瞬目が合い、すぐにトラビスが目が泳がせて顔を背けた。トラビスのさらけ出された首が赤くなっている。
「トラビス、もしや熱があるの?ここ…赤くなってる」
僕は手袋を外すと、手を伸ばしてトラビスの首に触れた。触れた瞬間、素早く手を握られて驚いた。
「びっくりした…。トラビス、手が痛い」
「あ…申しわけありませんっ」
トラビスは慌てて僕の手を離すと、困った顔をして首をさする。
僕に触れられたことがそんなに嫌だったのかと、僕は謝りながら手袋を嵌めた。
「ごめん…勝手に触って。嫌だよね。気をつける」
「いえっ…!そうではっ」
「いいよ。僕は呪われた子だし。証もある。見てみる?」
「え…」
僕はマントから左腕を出してシャツの袖をめくる。手首にまで伸びた蔦のような痣を改めて見て、自分でもゾッとする。
黙って僕の痣を見ていたトラビスが、僕に近づくと大きな手で僕の腕を撫でた。
「なにして…っ!触るな…移るよ」
「大丈夫…なんと美しい…」
「は?ばかなの?目が悪いの?こんなにも禍々しく気持ち悪いのに」
「そんなことはありません。しかしこれは、本当に呪いの証なのですか?」
「そうだよ。ラズールに聞いたことがあるから」
「ラズール…あの男が…」
トラビスがブツブツと口の中で呟く。
まだ僕の腕に触れていたトラビスの手を跳ね除けると、僕は袖を戻して再び歩き出す。
「早く行くよ。リアムが…第二王子が気づく前に」
「…かしこまりました」
再び僕に向かって伸ばしかけていた手を引っ込めて、トラビスが頷いた。
僕はトラビスが何を考えて何をしたいのかがわからなくて、気をつけようと気を引きしめた。
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