銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕の腕にキスを落とすリアムの金髪を、僕は目を細めて見ていた。太陽の光が当たってキラキラとしている。本当に綺麗でうらやましい。僕もリアムのような金髪がよかったな。
 ふいにリアムが顔を上げて僕の髪を撫でた。そして僕と同じように目を細めて「綺麗だ」と言う。

「…リアムはいつもそう言ってくれるけど、僕はリアムの金髪の方が綺麗だと思う」
「うん、それはフィーが俺を好きだからそう思うんだろ?俺もフィーが好きだからフィーの銀髪が綺麗だと思ってる。たとえばあいつ、俺に敵意むき出しの…ラズールだっけ?」
「え?ラズールがどうかしたの?」
「え?気づかなかったか?ラズールは俺にフィーを取られて悔しいんだろうな。ずっと怖い目で俺を見てたよ。そんなあいつが銀髪だったとしても、俺はちっとも綺麗だとは思わないからな」
「え?ラズールはそんなこと思ってないよ?だってラズールは僕の家族みたいなものだけど、リアムは恋人でしょ?」
「おまえ…純粋すぎか。まあいいか。あと間違えてるぞ。俺は恋人ではなくて夫な」
「あ…でもまだ婚儀してない…」
「してなくても俺はもう、そのつもりでいる」
「リアム…」

 嬉しい。すごく嬉しい。これから先に起こるであろう辛いことも、全て乗り越えていける気がする。
 僕は紫の目を見つめて背伸びをした。
 その目が近づき唇が塞がれる。何度か角度を変えて舌を吸っていると、近くに何かが当たる音がした。
 お互い名残惜しく顔を離して足下を見る。するとバルコニーの下から小さな石が飛んできた。
 リアムと一緒に下を覗くと、トラビスが慌てて手招きをしている。
 それを見たリアムが、大きく息を吐いて僕を抱きしめた。
 
「そろそろ行かなければ。フィー、必ず迎えに来るから待っててくれよ。くれぐれも無理はするな。便りはマメに出すからな」
「うん…リアムも無理しないでね」
「ああ。あとこれを」

 リアムは僕の身体を離すと、腰に差した剣を抜き自身の金髪を摘んで切った。そしてそれを僕の手に握らせる。

「おまえにも俺の髪を持っていて欲しい」
「うん…っ。僕の宝物にするっ」
「そうか。俺も宝物を持ってる」

 リアムが上着の内ポケットの辺りを叩いて笑う。

「フィー、心から愛しているよ」
「僕も…心から愛してる」

 リアムが笑顔で僕の頬を撫でた。そして軽々と手すりを越えて飛び降りた。
 僕は慌てて手すりに飛びつき下を見る。
 トラビスに急き立てられながら、灰色のマントを被ったリアムが去って行く。どんどんと小さくなっていく姿が建物の角を曲がって消えるまで、僕はずっと見ていた。
 
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