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「フィル様、俺は少し出てきます。バイロン国の騎士にこちらの動きを知られては困りますので足止めをしてきます。フィル様はまだ休んでいてください」
「嫌だ、僕も行く。すぐに着替えるから待って」
「しかし、危険を伴うかもしれません」
「一人よりは二人の方がいい。だから僕も行く。これは命令だ」
「…わかりました」
僕はベッドから出ると素早く着替えた。すでに机の上に用意されていたタライの水で顔を洗い、ラズールに髪を結い上げてもらう。カツラをかぶり面をつけマントをはおると、村長に「また戻ってくる」と告げて裏山に向かった。
昨夜、ラズールは穴の奥に罠を仕掛けていたらしい。
採掘場の入口が見える場所に着くと、入口を警備する騎士の姿があった。六人いる。黒の軍服の騎士が四人、青の軍服の騎士が二人だ。黒の軍服の二人に対して他の四人が頭を垂れている。ということは、今朝に村に来たのはあの二人か。…あれ?あそこに立っているのって。
僕の知ってる人がいた。
ラズールも気づいたようだ。
「あれは…隣国の王子の部下ではないですか?共に使者として来ていた…」
「ゼノだ。リアムの側近だよ。でもどうしてゼノがここに?リアムと一緒に王城に帰らなかったのかな」
僕とラズールは、岩陰に隠れて入口の様子を観察する。
ゼノともう一人の位の高そうな騎士が、四人に何かを話している。そして領主配下の騎士と王都の騎士を一人ずつ残して、穴の中に入っていった。
ラズールがゆっくりと立ち上がる。
「あの入口を見張る二人が邪魔ですね。少しお待ちを」
そう言うなりラズールが顔の前で指を鳴らした。直後に穴の奥からボン!という大きな音が連続で聞こえ、遅れて数人の叫び声が聞こえてきた。
残っていた二人の騎士が、慌てて穴の中へと走って行く。その後を追いかけるように、僕とラズールも穴の奥へと走った。
走りながらラズールに聞く。
「なにをしたの?爆発のような音がしたけど」
「危険なことはしていません。数箇所の壁の中に皮袋に入れた薬を埋め込んでおいたのです。それを魔法で膨らませて爆発させました」
「薬って…なんの?」
「しびれ薬ですよ。この村は薬草を育てて薬を作っているそうですが、我が国にも薬草を栽培して効果の高い薬を作っている村があります。先ほどの薬は怪我の治療の時に身体を麻痺させるための物なので害はありません。だが、薬は時には毒にもなる。その逆も然りですが」
「…そんなの持ってたんだ」
「あらゆる状況を想定してますから」
「そう…」
そんな薬があるなんて知らなかった。でも昔に僕が矢に貫かれた時には持ってなかったよね…?
僕の考えてることがわかったのか、ラズールが申しわけなさそうに言う。
「あの時は持っていなかったのですよ。とても反省しました。ですからあれ以降、常備するようにしたのです」
隣に顔を向けると、ラズールが手を伸ばして僕の肩に触れた。微かに薄く矢傷が残っている箇所だ。今は蔦のような痣に隠れて見えなくなっているけど。
「嫌だ、僕も行く。すぐに着替えるから待って」
「しかし、危険を伴うかもしれません」
「一人よりは二人の方がいい。だから僕も行く。これは命令だ」
「…わかりました」
僕はベッドから出ると素早く着替えた。すでに机の上に用意されていたタライの水で顔を洗い、ラズールに髪を結い上げてもらう。カツラをかぶり面をつけマントをはおると、村長に「また戻ってくる」と告げて裏山に向かった。
昨夜、ラズールは穴の奥に罠を仕掛けていたらしい。
採掘場の入口が見える場所に着くと、入口を警備する騎士の姿があった。六人いる。黒の軍服の騎士が四人、青の軍服の騎士が二人だ。黒の軍服の二人に対して他の四人が頭を垂れている。ということは、今朝に村に来たのはあの二人か。…あれ?あそこに立っているのって。
僕の知ってる人がいた。
ラズールも気づいたようだ。
「あれは…隣国の王子の部下ではないですか?共に使者として来ていた…」
「ゼノだ。リアムの側近だよ。でもどうしてゼノがここに?リアムと一緒に王城に帰らなかったのかな」
僕とラズールは、岩陰に隠れて入口の様子を観察する。
ゼノともう一人の位の高そうな騎士が、四人に何かを話している。そして領主配下の騎士と王都の騎士を一人ずつ残して、穴の中に入っていった。
ラズールがゆっくりと立ち上がる。
「あの入口を見張る二人が邪魔ですね。少しお待ちを」
そう言うなりラズールが顔の前で指を鳴らした。直後に穴の奥からボン!という大きな音が連続で聞こえ、遅れて数人の叫び声が聞こえてきた。
残っていた二人の騎士が、慌てて穴の中へと走って行く。その後を追いかけるように、僕とラズールも穴の奥へと走った。
走りながらラズールに聞く。
「なにをしたの?爆発のような音がしたけど」
「危険なことはしていません。数箇所の壁の中に皮袋に入れた薬を埋め込んでおいたのです。それを魔法で膨らませて爆発させました」
「薬って…なんの?」
「しびれ薬ですよ。この村は薬草を育てて薬を作っているそうですが、我が国にも薬草を栽培して効果の高い薬を作っている村があります。先ほどの薬は怪我の治療の時に身体を麻痺させるための物なので害はありません。だが、薬は時には毒にもなる。その逆も然りですが」
「…そんなの持ってたんだ」
「あらゆる状況を想定してますから」
「そう…」
そんな薬があるなんて知らなかった。でも昔に僕が矢に貫かれた時には持ってなかったよね…?
僕の考えてることがわかったのか、ラズールが申しわけなさそうに言う。
「あの時は持っていなかったのですよ。とても反省しました。ですからあれ以降、常備するようにしたのです」
隣に顔を向けると、ラズールが手を伸ばして僕の肩に触れた。微かに薄く矢傷が残っている箇所だ。今は蔦のような痣に隠れて見えなくなっているけど。
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