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僕はトラビスを睨みつけて、また何か言ってくるのかと身構える。
そんな僕を見て、トラビスは複雑な表情をする。
「…なにも言いませんよ」
「言いたそうにしてるじゃないか」
「心配になっただけです。ゼノ殿、先ほどの男は誰だ?」
ゼノが「マントをしっかりかぶってくださいね」と僕の頭に触れてからトラビスの問いに答える。
「ジルと言う。リアム様の叔父君に仕える騎士だ」
「あんたとは仲良いのか」
「まあな。俺のことをよく知っている。だから捕虜を連れ帰ることが信じられないのだろう。今までこんなことをしたことがないからな」
「それまずくないか?怪しまれているんじゃないのか?」
「たぶんな」
「おいっ」
「トラビス、静かにして」
「…はい」
ただでさえトラビスは身体が大きくて目立つのだから、言動には気をつけてほしい。
僕は小さく息を吐き出すと、トラビスに近寄るように手招きする。
「トラビス、ところでネロを見かけた?」
「いえ、この集団にはいないようですね。まだ宿に留まっているのか、それとも先に逃げたのか…」
「フィル様、ネロとはこの戦の発端になった事件の真犯人ですよね。フィル様から聞いた容姿の男を宿で見つけました。俺達が出発するよりも先に、宿を離れましたよ」
「なんだって?」
驚いて思わず後ろのゼノを見る。
「ご安心を。信頼できる俺の部下に後をつけさせてます。たぶんクルト王子のもとへ向かっていると思われます」
「そう…クルト王子は王城に?」
「はい。そのはずです」
「僕はネロとももう一度話をしてみたい。なぜこんなことをしたのか。なぜ会ったこともない僕のことを憎んでいるのか。それにクルト王子に忠誠を誓ってるようには見えなかったし」
「ちょっと待ってください」
トラビスが話を遮る。
僕は視線をゼノからトラビスに向ける。
トラビスがとても怖い顔をしている。
「なに」
「ネロに会ったのですか?」
「会ったよ。自分がやったことを認めてた。僕を殺したいみたいだよ」
「はあっ?」
「静かにして」
「う…」
僕はトラビスにしばらく口を開くなと命じて、再び後ろのゼノに目を向ける。
「ネロはバイロン国の出身ではないと僕は思ってる」
「たぶんそうでしょう。国内のあなたくらいの歳の騎士を俺はだいたい把握している。だが宿でネロという人物を遠目で見たが、全く知らなかった」
「どういう経緯で第一王子と知り合ったんだろう」
「そうですね、気になります。それにあなたのことも気になります。もうここまで来れば大丈夫だと思いますので、王城に着く前に逃げてくれませんか?」
僕は勢いよく上半身ごと後ろを向いた。ゼノの服を掴んで叫ぼうとする口を手で塞がれる。
「お静かに。あなたまで騒いではダメですよ。わかりましたか?」
僕は何度も頷く。
ゼノが笑って、僕の口から手を離す。
僕はごく小さな声で聞いた。
「どうして?僕はまだ帰らないよ。リアムと会って話すまでは帰りたくない」
そんな僕を見て、トラビスは複雑な表情をする。
「…なにも言いませんよ」
「言いたそうにしてるじゃないか」
「心配になっただけです。ゼノ殿、先ほどの男は誰だ?」
ゼノが「マントをしっかりかぶってくださいね」と僕の頭に触れてからトラビスの問いに答える。
「ジルと言う。リアム様の叔父君に仕える騎士だ」
「あんたとは仲良いのか」
「まあな。俺のことをよく知っている。だから捕虜を連れ帰ることが信じられないのだろう。今までこんなことをしたことがないからな」
「それまずくないか?怪しまれているんじゃないのか?」
「たぶんな」
「おいっ」
「トラビス、静かにして」
「…はい」
ただでさえトラビスは身体が大きくて目立つのだから、言動には気をつけてほしい。
僕は小さく息を吐き出すと、トラビスに近寄るように手招きする。
「トラビス、ところでネロを見かけた?」
「いえ、この集団にはいないようですね。まだ宿に留まっているのか、それとも先に逃げたのか…」
「フィル様、ネロとはこの戦の発端になった事件の真犯人ですよね。フィル様から聞いた容姿の男を宿で見つけました。俺達が出発するよりも先に、宿を離れましたよ」
「なんだって?」
驚いて思わず後ろのゼノを見る。
「ご安心を。信頼できる俺の部下に後をつけさせてます。たぶんクルト王子のもとへ向かっていると思われます」
「そう…クルト王子は王城に?」
「はい。そのはずです」
「僕はネロとももう一度話をしてみたい。なぜこんなことをしたのか。なぜ会ったこともない僕のことを憎んでいるのか。それにクルト王子に忠誠を誓ってるようには見えなかったし」
「ちょっと待ってください」
トラビスが話を遮る。
僕は視線をゼノからトラビスに向ける。
トラビスがとても怖い顔をしている。
「なに」
「ネロに会ったのですか?」
「会ったよ。自分がやったことを認めてた。僕を殺したいみたいだよ」
「はあっ?」
「静かにして」
「う…」
僕はトラビスにしばらく口を開くなと命じて、再び後ろのゼノに目を向ける。
「ネロはバイロン国の出身ではないと僕は思ってる」
「たぶんそうでしょう。国内のあなたくらいの歳の騎士を俺はだいたい把握している。だが宿でネロという人物を遠目で見たが、全く知らなかった」
「どういう経緯で第一王子と知り合ったんだろう」
「そうですね、気になります。それにあなたのことも気になります。もうここまで来れば大丈夫だと思いますので、王城に着く前に逃げてくれませんか?」
僕は勢いよく上半身ごと後ろを向いた。ゼノの服を掴んで叫ぼうとする口を手で塞がれる。
「お静かに。あなたまで騒いではダメですよ。わかりましたか?」
僕は何度も頷く。
ゼノが笑って、僕の口から手を離す。
僕はごく小さな声で聞いた。
「どうして?僕はまだ帰らないよ。リアムと会って話すまでは帰りたくない」
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