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建物の周りに他に人がいないことを確認すると、ゼノが扉に手のひらを向けてなにかを呟く。するとカチリと鍵が外れる音がした。
静かに扉を開けて、ゼノとラズールが座り込んでいる二人の兵を中に入れる。そしてゼノが扉を閉めると「こちらです」と右側へと進んだ。
まっすぐに進み壁に突き当たる。左側に階段があり、その手前でゼノが足を止めてこちらを向く。
「この階段を登りきった所にある部屋が、王族に使われる牢です。一気に登りますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。行こう」
僕は頷き、ゼノを先頭に階段を登り始めた。何度か折り返しながら進み「この先にあります」と最後の角を曲がったゼノが、部屋がある場所を見上げて動きを止めた。
「ゼノ?どうし…」
聞きながら曲がった僕も、前方を見上げて固まる。
最後に来たラズールが、「なぜここにいる」と低い声を出した。
「遅かったな。もっと早く来ると思っていたが」
階段の一番上に、クルト王子が座っていた。こちらを見下ろしながら、少し不満そうな顔をしている。
「退屈で捜しに行こうかと思っていたぞ」
「…僕達が来るのを、わかっていたのですか?」
「まあな。貴様は玉座を他の者に譲ると言った。ならば自由な身になる。当然リアムを助けに来ると予想できる。それに引き上げるバイロン軍に紛れれば、簡単に王都まで来れるしな」
「そこまでわかっていて、王には話してないのですか」
「誰にも話していない。俺が頭の中で予想していただけだ」
「どうして?」
「…さあな」
そう呟いて、クルト王子が立ち上がった。
素早くゼノとラズールが身構える。
しかしクルト王子は剣を掴んだり魔法を使う素振りもなく、顎をクイと上げた。
「なにをしている。早く上がってこい。リアムをここから出したいのだろう」
「しかし、あなたが邪魔をするのでは…」
「バカめ。邪魔をするなら貴様らが現れた瞬間に、攻撃している。俺は協力してやろうと言ってるのだ。早く来ないと侵入者がいると人に知らせるぞ」
「わかった」
僕はゼノの横を通って階段を登った。
ラズールが慌てて僕の隣に来て、ゼノが後ろをついてくる。
部屋の前に着くと、クルト王子が小さな革袋を僕に差し出した。
それを手に取り、見つめて聞く。
「これはなんですか?」
「リアムの解毒薬だ。これで完全に毒が抜ける。すぐに飲ませるといい」
僕は勢いよく顔を上げてクルト王子を見つめた。
クルト王子も目を逸らさずに見つめ返してくる。嘘を言ってる様子はない。本当に助けてくれようとしているらしい。
僕は革袋を両手で握りしめて「ありがとう」と言おうとした。でも喉が震えて声を出せなかった。
静かに扉を開けて、ゼノとラズールが座り込んでいる二人の兵を中に入れる。そしてゼノが扉を閉めると「こちらです」と右側へと進んだ。
まっすぐに進み壁に突き当たる。左側に階段があり、その手前でゼノが足を止めてこちらを向く。
「この階段を登りきった所にある部屋が、王族に使われる牢です。一気に登りますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。行こう」
僕は頷き、ゼノを先頭に階段を登り始めた。何度か折り返しながら進み「この先にあります」と最後の角を曲がったゼノが、部屋がある場所を見上げて動きを止めた。
「ゼノ?どうし…」
聞きながら曲がった僕も、前方を見上げて固まる。
最後に来たラズールが、「なぜここにいる」と低い声を出した。
「遅かったな。もっと早く来ると思っていたが」
階段の一番上に、クルト王子が座っていた。こちらを見下ろしながら、少し不満そうな顔をしている。
「退屈で捜しに行こうかと思っていたぞ」
「…僕達が来るのを、わかっていたのですか?」
「まあな。貴様は玉座を他の者に譲ると言った。ならば自由な身になる。当然リアムを助けに来ると予想できる。それに引き上げるバイロン軍に紛れれば、簡単に王都まで来れるしな」
「そこまでわかっていて、王には話してないのですか」
「誰にも話していない。俺が頭の中で予想していただけだ」
「どうして?」
「…さあな」
そう呟いて、クルト王子が立ち上がった。
素早くゼノとラズールが身構える。
しかしクルト王子は剣を掴んだり魔法を使う素振りもなく、顎をクイと上げた。
「なにをしている。早く上がってこい。リアムをここから出したいのだろう」
「しかし、あなたが邪魔をするのでは…」
「バカめ。邪魔をするなら貴様らが現れた瞬間に、攻撃している。俺は協力してやろうと言ってるのだ。早く来ないと侵入者がいると人に知らせるぞ」
「わかった」
僕はゼノの横を通って階段を登った。
ラズールが慌てて僕の隣に来て、ゼノが後ろをついてくる。
部屋の前に着くと、クルト王子が小さな革袋を僕に差し出した。
それを手に取り、見つめて聞く。
「これはなんですか?」
「リアムの解毒薬だ。これで完全に毒が抜ける。すぐに飲ませるといい」
僕は勢いよく顔を上げてクルト王子を見つめた。
クルト王子も目を逸らさずに見つめ返してくる。嘘を言ってる様子はない。本当に助けてくれようとしているらしい。
僕は革袋を両手で握りしめて「ありがとう」と言おうとした。でも喉が震えて声を出せなかった。
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