銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 好きな人の力ってすごい。リアムに触れられキスをされたら、左腕の痺れが消えたように感じた。
 リアムが僕の腕を優しく撫でながら悲しそうに言う。

「跡が残ってしまったな…。キレイな肌なのに」
「そんなに目立たないから大丈夫だよ」
「フィー、痛かっただろう?俺は一番守りたい人を傷つけた…。自分を許せない」
「許してよ。そもそもは、リアムが僕に剣を向けるように仕向けた、僕のせいなんだから」
「それでもダメだ。なあフィー、俺を殴ってくれないか?」
「ええっ!無理だよっ」
「頼む」
「…仕方ないなぁ」

 僕が座り直すと、リアムが目を閉じた。
 右手を振り上げて、勢いよく振り下ろす。手のひらがペチッとリアムの左頬に当たり、僕はリアムに顔を寄せてキスをした。軽くキスをして顔を離す。
 リアムが目を大きく開いた後に、僕の肩に頭を乗せて苦笑する。

「フィー…もっと強く叩かなきゃ」
「いいんだ。僕にはこれが精一杯。これでもう終わり。二度と自分のせいとか言っちゃダメだよ」
「はぁ…おまえは優しいな。フィー、愛してるぞ」
「僕も、愛してるよ」

 二人で顔を見合せて、ふふっと笑う。
 幸せだな。こんなに穏やかな気持ちは、久しぶりだ。だけど、身体の痛みが幸せな気持ちに水をさす。少しづつ、痛みが強くなってきている。もう少し、もう少しだけ待ってほしい。もう少し幸せな気持ちを感じていたい。リアムの傍にいたい。
 今度は僕が、リアムの胸に頭を寄せて目を閉じる。

「眠いのか?」
「うん…」

 僕の髪を撫でるリアムの手が心地いい。馬車の振動も手伝って、本当にこのまま眠ってしまいそうだ。

「着いたら起こしてやるから、少し眠れ」
「…ありがとう。リアムはどこに向かってるのか知ってる?」
「知ってる。ゼノから聞いてないか?向かっている場所に、俺が準備した家がある。いつかフィーと住みたいと思って」
「そうなの?隠れ家ですとしか聞いてない…」
「あー…ゼノは気が利くからな。俺の口から説明する方がいいと思ったんだろう」
「リアムと…僕の家…。ふふっ、嬉しい」
「とりあえず必要な物しか置いてないんだ。これからフィーが好きに変えればいい」
「うん…ありがとう…」

 リアムの目を見てお礼を言いたかったけど、まぶたが重くて目があかない。なんとか口を開いて感謝を伝えると、僕は眠りについた。
 


 
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