銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 そうだ、ラズールも僕に対して優しかった。いつも甘えさせてくれた。ラズールの前でだけ、僕は素の自分でいられた。
 自分の全てで僕を守ってくれていたのに、僕はラズールの想いには応えられない。大切な人に変わりはないけど、ラズールは家族なんだ。 
 僕が死ぬ時には、共に逝くとまで言ってくれたけど、その想いは、忠実な家来としてのものだと受け取っておく。それに僕の後を追いかけさせやしない。そんなことをさせないように、死ぬ間際に僕が魔法をかけてあげる。ラズールは生きて。僕にリアムが、トラビスにネロが現れたように、ラズールにも心から愛する人が現れるよ、きっと。

「フィー、やはり疲れたのか?」
「…え?あ、大丈夫。少し緊張してるだけだから」

 リアムの声に、意識を戻した。
 ぼんやりと考え事をしている間に、門を抜け馬を預けて城の中に入っていた。
 このまま伯父様の部屋に行くというリアムに、せめて顔を洗ってホコリを落としたいと頼んで洗面所に案内してもらう。

「リアム、少し待ってて」
「ゆっくりでいいぞ。俺は先に伯父上に挨拶してくるから」
「うん、キレイにしてから行くね」
「そのままでも十分なのだがな…」

 ブツブツと言いながら、リアムがジルを連れて離れて行く。
 僕は洗面所の扉を閉めると、ラズールを見上げた。

「ラズール…治癒をお願い…」
「はい…間隔は?」
「短くなった…気がする…」
「大丈夫ですか?」
「うん…まだ大丈夫」
「わかりました」

 ラズールが僕に手のひらを向けて、呪文の言葉を‪口にする。向けられた手のひらから温かいものが流れ込み、痛みが引いていく。
 しばらくして痛みが無くなると、僕は長く息を吐き出した。

「ありがとう…」
「いえ、今の俺にできることは、これくらいですから」
「すごく助かってるよ。自分でできればいいけど、僕は治癒魔法が苦手だから」
「リアム様には」
「痛みのことは話してないし話さない。だから治癒魔法はラズールがかけて」
「かしこまりました」

 目を伏せるラズールにもう一度感謝の言葉を述べて、僕は顔を洗う。ラズールが差し出した布で顔を拭き、髪を整えて「変じゃない?」と聞く。

「全く。いつもと変わらず可愛らしいですよ」
「おまえに聞いたのが間違いだった。おまえは褒めることしか言わないから」
「真実を言ったまでです。ああ、シャツの衿が曲がってますね。…はい、これで大丈夫。では参りましょうか」
「…ラズール、僕は気に入られるかな」
「当然です。俺の王子ですから」
「ふふっ、俺のってなに」

 ラズールと話したおかげで、緊張がほぐれた。
 僕は早くリアムの元へ行こうと、早足で教えられた部屋へ向かった。
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