銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「いいのか?」
「うん、十分なお世話できないしリアムに手がかかるし?」
「ふっ、そうだな」

 リアムが目を細めて僕の唇に触れ、顔を寄せてキスをする。
 甘いなぁ。リアムは僕に対して本当に甘い。二人で暮らし始めてから、毎日幸せで好きが募っていくよ。
 僕は軽く閉じた目を開けて「子犬はどうなったの?」と聞いた。

「しばらく兄上と一緒に、夢中になって子犬と遊んだ。兄上とも少し話すようになってきた頃に、兄上の母親が侍女をつれて兄上を捜しに来た。そして嫌そう俺を見て、兄上を連れて行ってしまった」
「ひどいね…」
「まあ、父上が母上の部屋に入り浸っていたからな。母上の体調が悪くなってからも、毎日来てたし。だから父上を奪った憎い女の息子も憎かったんだろう。子犬は、ゼノの親が引き取ってくれたんだ。たまに会わせてもらってたんだが、二年前に死んでしまった」
「そっか…寂しいね」
「その頃に母上も亡くなって辛かったな。とても辛かった。だから俺はもう、誰も失いたくないんだ。なによりも大切なおまえは、絶対に失いたくない」

 リアムの顔が苦しそうで、見ていて辛い。
 僕は手を伸ばすと、リアムの頭を抱き寄せた。

「…僕もだよ。大切な人を亡くしてるから、もう誰も失いたくない。リアムは、僕より先にいなくならないでね。約束して」
「無理。俺は一度、フィーが死ぬ場面を見ている。死んではいなかったけど、あんなに辛い想いは二度としたくない。だからさ、俺はフィーより先に死にたい」
「嫌だよ。そんなこと言うなら僕は、リアムが死んだ後、他の誰かと再婚するよ」
「ダメだっ」

 リアムが勢いよく顔を上げる。

「じゃあ僕より先に死ぬなんて言わないで。ずっと長生きして。そして死ぬ時は一緒に死のう?」
「そうだな、それがいい」

 ホッと安心した顔をするリアムに、今度は僕からキスをする。

「ん…フィーの唇は柔らかい」
「リアムもだよ…。ね、その後はクルト王子と遊ばなかったの?」
「ああ。母親に厳しく言われたのか、兄上は俺を見ても避けるようになったからな。俺は何度か、子犬の様子を伝えようとしたんだけどな」
「それって…きっとクルト王子も寂しい思いをしてたよね」

 僕が目を伏せていると、頬をそこそこの力でつままれた。

「いひゃい」
「なぁ、フィーが他の男のこと考えてるの、嫌なんだけど。それにアイツがどう思ってようが関係ない」
「もうっ、僕はラズールやネロやトラビスやゼノやラシェットさんとかの、たくさんの男のことをいつも考えてるよ!でもいつも一番たくさん考えてるのはリアムのことっ。だから意地悪言わないで!」
「うっ…ごめん」

 リアムはすぐ拗ねるけどすぐに反省するから、僕も本気で怒りはしない。
 項垂れたリアムの頭を再び抱き寄せて、僕は金髪に顔を埋めた。

 

 
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