377 / 451
16
しおりを挟む
「僕達はラシェットさんの城へ向かってる途中なんです。クルト王子はなぜここへ?」
クルト王子が中に入り、後ろで扉が閉まる。
「奥へ」とクルト王子が部屋の中央に進み、僕とリアムもそれに続いた。
「俺もおまえの伯父君の城へ向かっていたのだ。ここで会えたのは奇遇だな」
僕達の方へ振り返りながら、クルト王子が口を開く。
リアムが僕の肩を抱き寄せて「伯父上に何用か」と聞く。
「ラシェットに用があるのではなく、おまえに用がある。おまえの住んでる場所がわからないから、呼び出してもらおうと思っていた。だがここで会えたから、ラシェットの城へは行かぬ」
「俺に?なに…」
「今から話す内容は、上層部の者しか知らぬ話だ。大っぴらに話すなよ」
「だからなに?」
「父上が病に伏している。医師が言うには、もう先は長くはないとのことだ。よって、俺が即位することになった」
「へぇ、そうか。兄上なら大丈夫だろ。バイロンのために頑張ってくれよ」
リアムがまるで他人事のように言う。
ちょっと待って。今重大なことを聞いたけど?王が病って、リアムは会いに行かなくていいの?
僕はリアムのシャツを引っ張って見上げる。
リアムが首を曲げて僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだ?」
「父上に会わなくていいの?」
「俺は王族を抜けている。王に面会できる立場ではないし、会わなくてもいい」
「そんなっ。もし会えるなら会った方がいいよ」
「父上が俺に会いたくないだろう。そうだろ?兄上」
「ああ。父上は、城を出たおまえを許していない」
「だってさ」
「リアム…」
僕は悲しくなった。大切な人がいなくなった後に後悔しても遅いんだよ。バイロン王は素直になれないだけで、きっとリアムに会いたいと思ってるよ。だって愛した人の息子でしょ?
鼻の奥がツンと痛くなる。するとリアムが僕の鼻をつまんで優しい目で見てきた。
「また泣きそうになってる。俺は大丈夫だぞ、おまえがいるからな」
「…うん」
スズっと鼻を鳴らした僕の頬を、リアムが愛おしそうに撫でた。
その時、隣で咳払いが聞こえて、僕とリアムは同時に横を向く。
クルト王子が、片眉を上げて溜息をついた。
「俺の存在を忘れるな。リアム、わざわざ父上に会うために来なくてもいいが、三ヶ月後に俺の即位式がある。それには参加をしてほしい。フィーも一緒に来てくれないか?」
「えっ、いいの?」
リアムが口を開くよりも早く、僕が驚きの声をあげた。
いいの?イヴァル出身の僕が参加しても。
僕の疑問がわかったのか、クルト王子が深く頷く。
「ああ、ぜひ来てほしい。フィーはリアムと結婚した。まあ…こういうことを口にするのは気恥ずかしいが、俺達は家族だろう?」
「え…家族…ええ…」
「なんだ、不満か?」
僕は慌てて首を振った。
違う、嬉しすぎて驚いたんだ。僕は家族を失ったけど、また新しい家族が増えていく。嬉しい、すごく嬉しくて幸せだ。
クルト王子が中に入り、後ろで扉が閉まる。
「奥へ」とクルト王子が部屋の中央に進み、僕とリアムもそれに続いた。
「俺もおまえの伯父君の城へ向かっていたのだ。ここで会えたのは奇遇だな」
僕達の方へ振り返りながら、クルト王子が口を開く。
リアムが僕の肩を抱き寄せて「伯父上に何用か」と聞く。
「ラシェットに用があるのではなく、おまえに用がある。おまえの住んでる場所がわからないから、呼び出してもらおうと思っていた。だがここで会えたから、ラシェットの城へは行かぬ」
「俺に?なに…」
「今から話す内容は、上層部の者しか知らぬ話だ。大っぴらに話すなよ」
「だからなに?」
「父上が病に伏している。医師が言うには、もう先は長くはないとのことだ。よって、俺が即位することになった」
「へぇ、そうか。兄上なら大丈夫だろ。バイロンのために頑張ってくれよ」
リアムがまるで他人事のように言う。
ちょっと待って。今重大なことを聞いたけど?王が病って、リアムは会いに行かなくていいの?
僕はリアムのシャツを引っ張って見上げる。
リアムが首を曲げて僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだ?」
「父上に会わなくていいの?」
「俺は王族を抜けている。王に面会できる立場ではないし、会わなくてもいい」
「そんなっ。もし会えるなら会った方がいいよ」
「父上が俺に会いたくないだろう。そうだろ?兄上」
「ああ。父上は、城を出たおまえを許していない」
「だってさ」
「リアム…」
僕は悲しくなった。大切な人がいなくなった後に後悔しても遅いんだよ。バイロン王は素直になれないだけで、きっとリアムに会いたいと思ってるよ。だって愛した人の息子でしょ?
鼻の奥がツンと痛くなる。するとリアムが僕の鼻をつまんで優しい目で見てきた。
「また泣きそうになってる。俺は大丈夫だぞ、おまえがいるからな」
「…うん」
スズっと鼻を鳴らした僕の頬を、リアムが愛おしそうに撫でた。
その時、隣で咳払いが聞こえて、僕とリアムは同時に横を向く。
クルト王子が、片眉を上げて溜息をついた。
「俺の存在を忘れるな。リアム、わざわざ父上に会うために来なくてもいいが、三ヶ月後に俺の即位式がある。それには参加をしてほしい。フィーも一緒に来てくれないか?」
「えっ、いいの?」
リアムが口を開くよりも早く、僕が驚きの声をあげた。
いいの?イヴァル出身の僕が参加しても。
僕の疑問がわかったのか、クルト王子が深く頷く。
「ああ、ぜひ来てほしい。フィーはリアムと結婚した。まあ…こういうことを口にするのは気恥ずかしいが、俺達は家族だろう?」
「え…家族…ええ…」
「なんだ、不満か?」
僕は慌てて首を振った。
違う、嬉しすぎて驚いたんだ。僕は家族を失ったけど、また新しい家族が増えていく。嬉しい、すごく嬉しくて幸せだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
479
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる