銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「僕達はラシェットさんの城へ向かってる途中なんです。クルト王子はなぜここへ?」

 クルト王子が中に入り、後ろで扉が閉まる。
「奥へ」とクルト王子が部屋の中央に進み、僕とリアムもそれに続いた。

「俺もおまえの伯父君の城へ向かっていたのだ。ここで会えたのは奇遇だな」

 僕達の方へ振り返りながら、クルト王子が口を開く。
 リアムが僕の肩を抱き寄せて「伯父上に何用か」と聞く。

「ラシェットに用があるのではなく、おまえに用がある。おまえの住んでる場所がわからないから、呼び出してもらおうと思っていた。だがここで会えたから、ラシェットの城へは行かぬ」
「俺に?なに…」
「今から話す内容は、上層部の者しか知らぬ話だ。大っぴらに話すなよ」
「だからなに?」
「父上が病に伏している。医師が言うには、もう先は長くはないとのことだ。よって、俺が即位することになった」
「へぇ、そうか。兄上なら大丈夫だろ。バイロンのために頑張ってくれよ」

 リアムがまるで他人事のように言う。
 ちょっと待って。今重大なことを聞いたけど?王が病って、リアムは会いに行かなくていいの?
 僕はリアムのシャツを引っ張って見上げる。
 リアムが首を曲げて僕の顔を覗き込んだ。

「ん?なんだ?」
「父上に会わなくていいの?」
「俺は王族を抜けている。王に面会できる立場ではないし、会わなくてもいい」
「そんなっ。もし会えるなら会った方がいいよ」
「父上が俺に会いたくないだろう。そうだろ?兄上」
「ああ。父上は、城を出たおまえを許していない」
「だってさ」
「リアム…」

 僕は悲しくなった。大切な人がいなくなった後に後悔しても遅いんだよ。バイロン王は素直になれないだけで、きっとリアムに会いたいと思ってるよ。だって愛した人の息子でしょ?
 鼻の奥がツンと痛くなる。するとリアムが僕の鼻をつまんで優しい目で見てきた。

「また泣きそうになってる。俺は大丈夫だぞ、おまえがいるからな」
「…うん」

 スズっと鼻を鳴らした僕の頬を、リアムが愛おしそうに撫でた。
 その時、隣で咳払いが聞こえて、僕とリアムは同時に横を向く。
 クルト王子が、片眉を上げて溜息をついた。

「俺の存在を忘れるな。リアム、わざわざ父上に会うために来なくてもいいが、三ヶ月後に俺の即位式がある。それには参加をしてほしい。フィーも一緒に来てくれないか?」
「えっ、いいの?」

 リアムが口を開くよりも早く、僕が驚きの声をあげた。
 いいの?イヴァル出身の僕が参加しても。
 僕の疑問がわかったのか、クルト王子が深く頷く。

「ああ、ぜひ来てほしい。フィーはリアムと結婚した。まあ…こういうことを口にするのは気恥ずかしいが、俺達は家族だろう?」
「え…家族…ええ…」
「なんだ、不満か?」

 僕は慌てて首を振った。
 違う、嬉しすぎて驚いたんだ。僕は家族を失ったけど、また新しい家族が増えていく。嬉しい、すごく嬉しくて幸せだ。
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