銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 俺はフィル様に向かって深く頭を下げた。

「ありがとうございます。大切にします」
「うん。式典の時や長旅の時に使ってほしいな」
「はい。どこに行くにも持って行きます」
「いや、常備するには派手だし重くない?それは式典に合う派手さがあるし、長旅の時にはお守りになるから」 
「お守り?」
「うん、僕が剣に魔法をかけてある。ラズールを守るように」
「それは…ありがたいことです。身に余る光栄です」

 目の奥がツンと痛くなり、俺は何度も目をまたたかせた。フィル様に涙を見せても構わないが、トラビスがいる。トラビスには絶対に見られたくない。

「無事に渡せてよかった」と笑う、フィル様のまぶしい笑顔に俺は目を細める。俺の胸の中が、とても嬉しい気持ちで満たされている。だが気になることもある。俺の不安に気づいたフィル様が、小さく首を傾けた。

「なに?」
「…お聞きしたいことが。先ほど…」
「フィル様、入ってもよろしいですか」
「あ、レナードが来た。入って」
「失礼します」

 俺はフィル様に気づかれぬよう、舌を打った。トラビスといいレナードいい、なぜ俺の邪魔をするのか。フィル様とゆっくり語りたいのに、肝心のことが聞けぬではないか。
 レナードが入ってきた。レナードの後ろに、フィル様と同じ銀髪が見えている。

「あっ、ネロ!元気にしてる?僕から会いに行こうと思ってたのに、来てくれたの?ありがとう」
「あーあ、驚かそうと思ってたのに、もうバレちゃった」

 面白くなさそうに、レナードの背後からネロが出てきた。だがすぐにフィル様を見て、笑顔になる。
 ネロはイヴァルの現国王だが、少々言動が幼い気がする。遥か昔をさかのぼれば、フィル様と血筋が同じなのだが、王都から離れた田舎育ちのせいか、フィル様に比べて品がない。トラビスは、ネロは王族としての教養を教えこまれているから何ら問題ないと言うが、俺はそうは思えぬ。俺は八歳の頃から見てきたフィル様は、生まれた瞬間から尊かった。

「ふふっ、残念だったね。ねぇネロ…」

 フィル様がネロに近づき手を握る。
「ん?どうした?」とネロが目を丸くした。

「ネロに大変な役目を押しつけてしまったこと、申しわけないと思ってる。そして感謝してる。本当にありがとう」
「なんだ、まだそんなこと言ってるのか?俺は断ろうと思えば断れた。でも王位継承の話を聞いた時、やりたいと思ったんだ。だからフィルに押しつけられたわけでも、嫌々引き継いだわけでもない。だからもう、謝るなよ」
「うん…」


 
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