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翌日にゼノは帰った。ラシェット殿の城の敷地に騎士寮があり、そこに住んでるらしい。
デネス大国で怪我をして運び込まれた城で、バイロン国内に住める場所はないかと俺が相談した時、ゼノは騎士寮をすすめてきた。
俺はゼノの提案を丁寧に断わり、フィル様の家の近くに住めるよう、頼んだ。
ラシェット殿の配下になり寮に住めばいいと、俺のために提案してくれたゼノに感謝する。もちろん俺は、ラシェット殿の下で働くことに異議は無い。彼は尊敬するに値する人物だ。だが、俺の主はフィル様だけだ。だから配下ではなく、言い付けてもらえば何でもすると、ラシェット殿の城に寄った時に、ラシェット殿にも伝えてきた。
ラシェット殿は、俺の自由にしていいと言ってくれた。だが月の半分は城に来て働いてほしいと。俺に頼みたいことが山ほどあるそうだ。
俺は快く了承した。バイロン国で住むにも金がいる。イヴァル帝国で貯めた金を全て持ってきてはいるが、いつかは無くなる。そうなれば、フィル様を守るどころか迷惑をかけかねない。そこで俺は、ラシェット殿の臨時の騎士となる契約を交わし、この家に来た。
この家に住むことを、フィル様はまだ知らない。もちろん第二王子も。フィル様が療養されている城から戻られる日に、会いに行くつもりだ。
一体どのような顔をされるだろうか。喜んでくれるだろうか。或いは呆れられてしまうだろうか。フィル様の隣で渋い顔をする第二王子の姿は容易に想像できる。まあ第二王子に何と思われようが、全く気にならないが。フィル様の反応だけが気になる。もしフィル様が少しでも困った素振りを見せたら、その時はゼノが住む寮に行かせてもらおう。ラシェット殿の下で働きながら、時おり城に来るフィル様をお見かけできたらそれでいい。しかし可能ならば、毎日でもフィル様に会いに行けるこの家で暮らしたい。何かあればすぐに駆けつけることができるこの家で、フィル様を見守りたい。
フィル様が帰ってくるまでの数日間、家の中を整えながら、ずっとフィル様のことを考え続けた。そしてこの家に住み始めて十二日後に、ようやくフィル様と第二王子が帰ってくると、三度目の宿泊に来たゼノが教えてくれた。
初日に泊まってから五日後に、再びゼノは泊まりに来た。俺の様子が気になるのと、話がしたいからだそうだ。ゼノなら、たくさんの友がいるだろうに、わざわざ俺のもとに来なくとも…とは思ったが、気にかけてくれることは嬉しい。俺は一人でも全く気にならない。イヴァルでは、酒を飲みながらゆっくりと話す相手もいなかった。だが、ゼノと酒を飲んで話していると、こういうのも良いのかもしれないと、少し心地よく思ったりもした。だから帰り際に「またすぐに来る」と言ったゼノに「いつでも来ていい」と頷いたのだ。
デネス大国で怪我をして運び込まれた城で、バイロン国内に住める場所はないかと俺が相談した時、ゼノは騎士寮をすすめてきた。
俺はゼノの提案を丁寧に断わり、フィル様の家の近くに住めるよう、頼んだ。
ラシェット殿の配下になり寮に住めばいいと、俺のために提案してくれたゼノに感謝する。もちろん俺は、ラシェット殿の下で働くことに異議は無い。彼は尊敬するに値する人物だ。だが、俺の主はフィル様だけだ。だから配下ではなく、言い付けてもらえば何でもすると、ラシェット殿の城に寄った時に、ラシェット殿にも伝えてきた。
ラシェット殿は、俺の自由にしていいと言ってくれた。だが月の半分は城に来て働いてほしいと。俺に頼みたいことが山ほどあるそうだ。
俺は快く了承した。バイロン国で住むにも金がいる。イヴァル帝国で貯めた金を全て持ってきてはいるが、いつかは無くなる。そうなれば、フィル様を守るどころか迷惑をかけかねない。そこで俺は、ラシェット殿の臨時の騎士となる契約を交わし、この家に来た。
この家に住むことを、フィル様はまだ知らない。もちろん第二王子も。フィル様が療養されている城から戻られる日に、会いに行くつもりだ。
一体どのような顔をされるだろうか。喜んでくれるだろうか。或いは呆れられてしまうだろうか。フィル様の隣で渋い顔をする第二王子の姿は容易に想像できる。まあ第二王子に何と思われようが、全く気にならないが。フィル様の反応だけが気になる。もしフィル様が少しでも困った素振りを見せたら、その時はゼノが住む寮に行かせてもらおう。ラシェット殿の下で働きながら、時おり城に来るフィル様をお見かけできたらそれでいい。しかし可能ならば、毎日でもフィル様に会いに行けるこの家で暮らしたい。何かあればすぐに駆けつけることができるこの家で、フィル様を見守りたい。
フィル様が帰ってくるまでの数日間、家の中を整えながら、ずっとフィル様のことを考え続けた。そしてこの家に住み始めて十二日後に、ようやくフィル様と第二王子が帰ってくると、三度目の宿泊に来たゼノが教えてくれた。
初日に泊まってから五日後に、再びゼノは泊まりに来た。俺の様子が気になるのと、話がしたいからだそうだ。ゼノなら、たくさんの友がいるだろうに、わざわざ俺のもとに来なくとも…とは思ったが、気にかけてくれることは嬉しい。俺は一人でも全く気にならない。イヴァルでは、酒を飲みながらゆっくりと話す相手もいなかった。だが、ゼノと酒を飲んで話していると、こういうのも良いのかもしれないと、少し心地よく思ったりもした。だから帰り際に「またすぐに来る」と言ったゼノに「いつでも来ていい」と頷いたのだ。
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