銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 俺はフィル様と第二王子の家の前に立っていた。
 ゼノが、街の入口まで二人を迎えに行くと話していたから俺も行こうとしたが、ここで待つように言われた。その方がフィル様が驚くだろうからと。
 早くフィル様に会いたかったが、仕方がない。二人が到着するまで四半刻はある。俺は待っている間、これからのことを考えた。しばらくは当初の予定通り、フィル様の近くで暮らそうと思う。そう決めてイヴァル帝国を出てきたのだから。そしてフィル様の幸せが永遠に続くと確信できたら、ラシェット殿の城に赴き、騎士寮に住みながらゼノと働くのもいいかもしれないとも思い始めていた。フィル様のいるこの国に骨を埋める覚悟もできている。だがたまには、フィル様と共に、イヴァル帝国に帰りたい。フィル様と過ごした王城に行き、懐かしい人達に会う。俺は特に何も思わないが、フィル様がネロやトラビス達に会いたいだろう。彼らに会いに行くことを、第二王子も快く承諾し…ないかもしれない。あの男は嫉妬深いからな。だが俺が否とは言わせぬ。それにフィル様が少しでも寂しい顔をなされば、渋々ながらも頷くに違いない。ただ、ついて来られたら困る。困るというよりも邪魔だな。
 まだ起こりもしない先の日々を想像していたら、時間がすぐに過ぎた。気がつくと、もう見える距離に騎乗したフィル様と第二王子、ゼノと数人の騎士がいた。
 向こうからも俺の姿が確認できたらしく、一際小柄な人物が飛び出した。フードを深くかぶり髪や顔が見えなくてもわかる。フィル様だ。
 俺は走りたいのを我慢して、フィル様が到着するまで動かなかった。
 フィル様が門の手前で馬を止めて、転がる勢いで飛び降りたので、焦った。思わず走り寄ろうとしたが、フードを脱いだフィル様が笑っていたので、俺も両手を広げて微笑んだ。

「ラズール!帰ってなかったの?また会えてうれしいっ」

 俺の愛しい人が、腕の中に飛び込んできた。愛しくて可愛くて、一瞬強く抱きしめたけど、遠くから第二王子が鋭い目で睨んでいたので、仕方なく腕を緩める。

「フィル様おかえりなさいませ。体調はどうですか?疲れてませんか?」
「元気だよ!ねぇ、ラズールはいつまでいるの?」

 俺の胸に手を当てて、見上げてくる瞳が宝石のように輝いて、いつまでも見ていられると俺は目を細める。

「期限はありません。ずっとお傍にいますよ」
「どういうこと?」
「ここから四半刻ほどの場所に家を購入したんです。ノアの家の近くに」
「ええっ!ほんとにっ?」
「フィル様のお部屋もあります。どうぞ遊びにいらして下さい」
「行く!今すぐ行きたいっ」
「もちろんいいですよ。と言いたいところですが、後ろの方に許可をもらわねばなりませんね」
「え?」

 フィル様が小さく首を傾けて後ろを向く。
 すでに到着していた第二王子が、思いっきり嫌そうな顔をして、フィル様の真後ろで腕を組んで立っていた。
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