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拘束されその身を王都へと移されたエレノア。
罪状は敵方との内通という事だったが、無論これは濡れ衣である。
もっともそのような疑いを持たれる事には覚えがあったが、さりとて小悪魔が一匹訪ねて来たぐらいで証拠にはなるまい。
ならば証拠は作るしか無いだろう。
エレノアはそう結論付け、拷問吏による尋問に決して屈さぬように身構えた。
しかし待てどもエレノアの元へ訪れるのは苦痛などでは無くただ退屈の毎日。
これは如何なる事か。
内心の不安を拭い去れずそう思案していたエレノアの元に、ある日来客が訪れた。
「キミをこうして罪人として捉えるのはこれで二度目だね」
ここが花咲き乱れる王宮の庭園と勘違いでもしているのか、この国の王子ビョルンが薄暗い地下室の石畳に足を鳴らして現れた。
「その時も冤罪でしたわね」
「あの時もキミは罪を認めなかったね。本当に諦めの悪い……」
ビョルンは一瞬だけ忌々し気に顔を歪めた後、また鳥の歌うような顔を取り戻す。
「だからボクも良い加減に学んださ。キミを裁くには証拠もコチラで用意しなくちゃならないらしい」
「やっぱり……」
エレノアは心底呆れた眼差しをビョルンに向ける。
これが自分の前に顔を見せた瞬間から、ある程度は予想していた事だ。
しかしそんな無茶はそうそう通るものでは無い。
このような物証に乏しい罪を裁く時、世間的にはまず当人の『自白』が最優の証拠となる。
それも『自白』の時は聖職の資格を持つ者を含む、数人の立ち合いが必要だ。
そのような手間を掛けるのは、貴族社会にとって『裏切り』とはそれだけ大事だからである。
社会とは信用で成り立っており、時に容易く打ち捨てられる。
そんな不安定なものを血筋と世代で保証するのが貴族という存在の役目。
それを根底から否定する『裏切り』は、一族郎党根切りも十分にありうる重罪。
そのような罪状を容易くねつ造されるようでは社会の秩序が保てなくなるというもの。
「不敬罪の延長で女一人辺境に飛ばした時とは事情が違いますわよ?」
「ボクがそんな事も分からない馬鹿だと思っているのかい?」
「もちろん」
そう言ってやると、ビョルンは盛大に顔を顰めた。
「ふん。証拠は十分揃うんだよ。お前は村の中に悪魔を招き入れ、我欲の為に魔神と内通した。証言する者は幾らだっているんだ」
「村の者があなたの甘言に釣られるとでも御思いですか?」
ヴァイス村の面々がそんな不義理を冒すとは思えないし、仮にそんな事をすれば村も巻き込んで処罰される事もあり得る。
だからそんな事態は道理が通らない、とエレノアは鼻先で笑うがビョルンの不敵な顔は変わらなかった。
「キミは本当に学習しないねえ。欲で釣れば恩を忘れる者は出るものだよ。援助していた他の村の事を忘れたのかい?」
「やはりアレはアナタの手が入っていましたか」
「そんな大げさな事じゃない。百の内の一つ二つの声を大きくしてやっただけさ。そして今回も一人でも裏切ればこちらの勝ちだ」
ビョルンは勝ち誇ったように腕を組み、言った。
「周りから少しばかりちやほやされて忘れてたようだが、キミは辺境へ飛ばされた罪人でヴァイスは50そこらの小村に過ぎない。無理でも無茶でも、押しせば大抵の事はまかり通るんだよ。無論彼らがこちらの言う事を聞くのなら、ボクもちゃんと身の安全と報奨は約束するからね」
朗々と語られるビョルンの言葉を聞いて、不覚にもエレノアの胸の内に不安の虫が疼く。
そうでなければ世の中に冤罪など生まれず、町役人に賄賂を贈る平民も、権力に怯える貧民もこの王国には居ないだろう。
盗難事件が起きた時、治安のメンツの為に貧民街から適当に犯人を連れて来るなど良くある話だ。
そしてビョルンから齎された次の情報に、エレノアの自信は打ち砕かれた。
「それにキミを拘束した時、護衛は何をしていた? 気付いた後に少し騒いだものの、適当に誤魔化したらあっさりと引き下がったよ」
「え……?」
「あの老人は竜狩りだったね。シュテルン伯の言葉じゃ傭兵上がりって話だ。損得勘定が出来なければ生き残っていけない稼業さ。うん、よく商売ってものを理解してるじゃないか、彼は」
ヨトゥン老人。
エレノアの記憶にあるあの老人の姿は、他の村の者とはどこか距離があった。
魔法薬を強請った時など、付いて行くのは『利』があるからだという態度であったようにもエレノアには見受けられた。
こうなると、ビョルンの言葉も一概に笑い捨てることは出来なかった。
「もちろん平民の言葉だけじゃ足りないからね。信用ある者の言葉を借りる」
「そ、そんな人、村には……」
「シュテルン伯だよ。彼が常々ヴァイス村の内情を探っていたのは諸侯も知る所だ。しかも彼はキミの親族。自らの恥にもなりかねない告発を、公正な彼は苦渋の思いで告発するのだ。正義の為にね」
ビョルンの工作への対抗策として、既にシュテルン伯からは協力を取り付けているはず。
だが実際に彼がビョルンの側に付いて、『証拠』とやらをねつ造するのならこんな厄介な事は無かった。
「待ちなさい、叔父様からはそんな事は聞いていません」
「言うわけないじゃないか、バカだな」
「いいえ、幾ら何でも身内から謀反人が出たとまであっては、シュテルン伯爵家の名にも傷が付きます! 我々が血筋を使い信頼を積み重ねる生き物だという事をお忘れですか!?」
「……キミは本当に人間というものを知らない」
ビョルンは小馬鹿にしたようにため息を吐きながら、懐から小瓶を取り出した。
薄暗い地下の部屋に、七色の光が満ちる。
魔術の徒でも無いエレノアにも、それが強力なマナを湛えた逸品だと言う事は簡単に理解できた。
「スゴイだろう、これ? この薬を報酬としてシュテルン伯にお渡しするのさ」
「クスリ……?」
「聖女が精霊の力を込め作った『長命の薬』だったかな? どんな傷も病も直し、死者すら生き返すらしい。……シュテルン伯の『病気』。姪なら聞いた事があるんじゃないか?」
そう問われ、確かに心当たりはあった。
元々短命な家系であるし、ここ数年のシュテルン伯は咳も多かったように記憶している。
そしてそれらの予兆が確かなら、この薬はシュテルン伯にとって何に変えても手に入れたい物の一つに違いない。
「……意外ですわね。アナタなら自分に使って不老不死でも目指しそうなものですが」
肩を落としたエレノアは最後にそう嫌味を投げかけた。
しかしそれはビョルンという人間を却って勝ち誇らせるものに過ぎなかった。
「何を馬鹿な。これは聖女の力で作り出したものだと言っただろう。彼女の力を借りてボクが私欲に走ったら、カリンが悲しむじゃないか。愛する者は裏切れない」
ビョルンの瞳は熱に浮かれたようになっている。
勝利の為か、愛欲の為か。
おそらくその両方だろうとエレノアは嘆息した。
「やはり君には分からないか。本気で人と向き合ったことの無い君なんかには」
上機嫌なビョルンの声は止まる事を知らない。
「ボクは真実の愛を知ったんだ。カリンと出会ってね。ボクは彼女の為になら何だって出来るし、何だってすると決めたんだ。だってそれがボクの愛だから! ……例え手と名を汚すことになろうとも、キミはここで始末させて貰う。こんな面倒事を終わらせる好機は魔神の軍勢に世の中が混乱している今を置いて他にない」
話を聞くに、魔神の弱体化はよほどビョルンにとって都合が良かったらしい。
あれを武力で打ち倒す算段が付きでもしたのだろう。
そうでなければビョルンがこんな強硬な手段に訴える事も無いのだから。
「結局キミには天運が無かったんだよ。だからこうして此処にいる。やはり王妃に相応しい人間じゃ無かったってことさ」
「……そもそも生まれついてアナタと関わる立場だった事が、我が人生の運の尽きだったのでしょうね」
最後の嫌味にもビョルンは気を悪くする事も無く、心地良さそうに目を細める始末。
そしてそのまま足取りも軽やかに、地下室を後にする。
さながら凱旋する王者のように、悠々とした振る舞いで。
「お、お、王子ぃ~~~ッ!」
「うぉわッ!」
しかしその一人っきりの行軍は、階段の中ほどに差し掛かった辺りで中断された。
パレードの横っ面に、大きな豚が猪のように衝突してきたのである。
エレノアはその豚に見覚えがあった。
謁見の間でいつも王の傍らにいた、でっぷりと肥えたこの国の大臣だ。
「な、何をするか馬鹿者!」
「あ、王子! 聞いた通りやはりこんな所に居ましたか、探しましたぞ! 大変なんですよ!」
ビョルンの怒りの声も聞こえていない様子で、大臣は一気に捲し立てる。
そして横目で牢の中にいる少女の姿を認めると、その顔は一旦停止した。
「……エレノア嬢?」
「ど、どうもご無沙汰しております」
「なぜ貴女がこんな所に!? 王子、あなた本当に何したんですかッ!」
大臣は子供を叱りつけるような剣幕でビョルンを睨み付けた。
「え? 王子、アナタもしかして誰にも内緒で私を拉致したのですか?」
「拉致ぃ!? 王子、何て事をやってるんですか!」
「ええい、うるさい! こちらにも事情があるのだ!」
それから、王子と大臣の取っ組み合い寸前の問答が始まった。
だがビョルンはそのどれにもまともに答えようとせず、それが大臣の更なる怒りを呼ぶ。
そうしていよいよ話が進まなくなった辺りで、エレノアは肩で息をする大臣に声を掛けた。
「あの、何か『大変』な事が起きたから殿下を呼びに来られたのでは?」
「ああっ! その通りです! 殿下、これは大変な事でございますぞ!」
だから何だ、と忌々し気なビョルンに向かって、大臣は一際大きな声をぶつけた。
「50人の叛徒が、竜狩りがッ! 声高に王子の不正を訴えながら、砦を『潰し』、王都へ行軍中です!」
罪状は敵方との内通という事だったが、無論これは濡れ衣である。
もっともそのような疑いを持たれる事には覚えがあったが、さりとて小悪魔が一匹訪ねて来たぐらいで証拠にはなるまい。
ならば証拠は作るしか無いだろう。
エレノアはそう結論付け、拷問吏による尋問に決して屈さぬように身構えた。
しかし待てどもエレノアの元へ訪れるのは苦痛などでは無くただ退屈の毎日。
これは如何なる事か。
内心の不安を拭い去れずそう思案していたエレノアの元に、ある日来客が訪れた。
「キミをこうして罪人として捉えるのはこれで二度目だね」
ここが花咲き乱れる王宮の庭園と勘違いでもしているのか、この国の王子ビョルンが薄暗い地下室の石畳に足を鳴らして現れた。
「その時も冤罪でしたわね」
「あの時もキミは罪を認めなかったね。本当に諦めの悪い……」
ビョルンは一瞬だけ忌々し気に顔を歪めた後、また鳥の歌うような顔を取り戻す。
「だからボクも良い加減に学んださ。キミを裁くには証拠もコチラで用意しなくちゃならないらしい」
「やっぱり……」
エレノアは心底呆れた眼差しをビョルンに向ける。
これが自分の前に顔を見せた瞬間から、ある程度は予想していた事だ。
しかしそんな無茶はそうそう通るものでは無い。
このような物証に乏しい罪を裁く時、世間的にはまず当人の『自白』が最優の証拠となる。
それも『自白』の時は聖職の資格を持つ者を含む、数人の立ち合いが必要だ。
そのような手間を掛けるのは、貴族社会にとって『裏切り』とはそれだけ大事だからである。
社会とは信用で成り立っており、時に容易く打ち捨てられる。
そんな不安定なものを血筋と世代で保証するのが貴族という存在の役目。
それを根底から否定する『裏切り』は、一族郎党根切りも十分にありうる重罪。
そのような罪状を容易くねつ造されるようでは社会の秩序が保てなくなるというもの。
「不敬罪の延長で女一人辺境に飛ばした時とは事情が違いますわよ?」
「ボクがそんな事も分からない馬鹿だと思っているのかい?」
「もちろん」
そう言ってやると、ビョルンは盛大に顔を顰めた。
「ふん。証拠は十分揃うんだよ。お前は村の中に悪魔を招き入れ、我欲の為に魔神と内通した。証言する者は幾らだっているんだ」
「村の者があなたの甘言に釣られるとでも御思いですか?」
ヴァイス村の面々がそんな不義理を冒すとは思えないし、仮にそんな事をすれば村も巻き込んで処罰される事もあり得る。
だからそんな事態は道理が通らない、とエレノアは鼻先で笑うがビョルンの不敵な顔は変わらなかった。
「キミは本当に学習しないねえ。欲で釣れば恩を忘れる者は出るものだよ。援助していた他の村の事を忘れたのかい?」
「やはりアレはアナタの手が入っていましたか」
「そんな大げさな事じゃない。百の内の一つ二つの声を大きくしてやっただけさ。そして今回も一人でも裏切ればこちらの勝ちだ」
ビョルンは勝ち誇ったように腕を組み、言った。
「周りから少しばかりちやほやされて忘れてたようだが、キミは辺境へ飛ばされた罪人でヴァイスは50そこらの小村に過ぎない。無理でも無茶でも、押しせば大抵の事はまかり通るんだよ。無論彼らがこちらの言う事を聞くのなら、ボクもちゃんと身の安全と報奨は約束するからね」
朗々と語られるビョルンの言葉を聞いて、不覚にもエレノアの胸の内に不安の虫が疼く。
そうでなければ世の中に冤罪など生まれず、町役人に賄賂を贈る平民も、権力に怯える貧民もこの王国には居ないだろう。
盗難事件が起きた時、治安のメンツの為に貧民街から適当に犯人を連れて来るなど良くある話だ。
そしてビョルンから齎された次の情報に、エレノアの自信は打ち砕かれた。
「それにキミを拘束した時、護衛は何をしていた? 気付いた後に少し騒いだものの、適当に誤魔化したらあっさりと引き下がったよ」
「え……?」
「あの老人は竜狩りだったね。シュテルン伯の言葉じゃ傭兵上がりって話だ。損得勘定が出来なければ生き残っていけない稼業さ。うん、よく商売ってものを理解してるじゃないか、彼は」
ヨトゥン老人。
エレノアの記憶にあるあの老人の姿は、他の村の者とはどこか距離があった。
魔法薬を強請った時など、付いて行くのは『利』があるからだという態度であったようにもエレノアには見受けられた。
こうなると、ビョルンの言葉も一概に笑い捨てることは出来なかった。
「もちろん平民の言葉だけじゃ足りないからね。信用ある者の言葉を借りる」
「そ、そんな人、村には……」
「シュテルン伯だよ。彼が常々ヴァイス村の内情を探っていたのは諸侯も知る所だ。しかも彼はキミの親族。自らの恥にもなりかねない告発を、公正な彼は苦渋の思いで告発するのだ。正義の為にね」
ビョルンの工作への対抗策として、既にシュテルン伯からは協力を取り付けているはず。
だが実際に彼がビョルンの側に付いて、『証拠』とやらをねつ造するのならこんな厄介な事は無かった。
「待ちなさい、叔父様からはそんな事は聞いていません」
「言うわけないじゃないか、バカだな」
「いいえ、幾ら何でも身内から謀反人が出たとまであっては、シュテルン伯爵家の名にも傷が付きます! 我々が血筋を使い信頼を積み重ねる生き物だという事をお忘れですか!?」
「……キミは本当に人間というものを知らない」
ビョルンは小馬鹿にしたようにため息を吐きながら、懐から小瓶を取り出した。
薄暗い地下の部屋に、七色の光が満ちる。
魔術の徒でも無いエレノアにも、それが強力なマナを湛えた逸品だと言う事は簡単に理解できた。
「スゴイだろう、これ? この薬を報酬としてシュテルン伯にお渡しするのさ」
「クスリ……?」
「聖女が精霊の力を込め作った『長命の薬』だったかな? どんな傷も病も直し、死者すら生き返すらしい。……シュテルン伯の『病気』。姪なら聞いた事があるんじゃないか?」
そう問われ、確かに心当たりはあった。
元々短命な家系であるし、ここ数年のシュテルン伯は咳も多かったように記憶している。
そしてそれらの予兆が確かなら、この薬はシュテルン伯にとって何に変えても手に入れたい物の一つに違いない。
「……意外ですわね。アナタなら自分に使って不老不死でも目指しそうなものですが」
肩を落としたエレノアは最後にそう嫌味を投げかけた。
しかしそれはビョルンという人間を却って勝ち誇らせるものに過ぎなかった。
「何を馬鹿な。これは聖女の力で作り出したものだと言っただろう。彼女の力を借りてボクが私欲に走ったら、カリンが悲しむじゃないか。愛する者は裏切れない」
ビョルンの瞳は熱に浮かれたようになっている。
勝利の為か、愛欲の為か。
おそらくその両方だろうとエレノアは嘆息した。
「やはり君には分からないか。本気で人と向き合ったことの無い君なんかには」
上機嫌なビョルンの声は止まる事を知らない。
「ボクは真実の愛を知ったんだ。カリンと出会ってね。ボクは彼女の為になら何だって出来るし、何だってすると決めたんだ。だってそれがボクの愛だから! ……例え手と名を汚すことになろうとも、キミはここで始末させて貰う。こんな面倒事を終わらせる好機は魔神の軍勢に世の中が混乱している今を置いて他にない」
話を聞くに、魔神の弱体化はよほどビョルンにとって都合が良かったらしい。
あれを武力で打ち倒す算段が付きでもしたのだろう。
そうでなければビョルンがこんな強硬な手段に訴える事も無いのだから。
「結局キミには天運が無かったんだよ。だからこうして此処にいる。やはり王妃に相応しい人間じゃ無かったってことさ」
「……そもそも生まれついてアナタと関わる立場だった事が、我が人生の運の尽きだったのでしょうね」
最後の嫌味にもビョルンは気を悪くする事も無く、心地良さそうに目を細める始末。
そしてそのまま足取りも軽やかに、地下室を後にする。
さながら凱旋する王者のように、悠々とした振る舞いで。
「お、お、王子ぃ~~~ッ!」
「うぉわッ!」
しかしその一人っきりの行軍は、階段の中ほどに差し掛かった辺りで中断された。
パレードの横っ面に、大きな豚が猪のように衝突してきたのである。
エレノアはその豚に見覚えがあった。
謁見の間でいつも王の傍らにいた、でっぷりと肥えたこの国の大臣だ。
「な、何をするか馬鹿者!」
「あ、王子! 聞いた通りやはりこんな所に居ましたか、探しましたぞ! 大変なんですよ!」
ビョルンの怒りの声も聞こえていない様子で、大臣は一気に捲し立てる。
そして横目で牢の中にいる少女の姿を認めると、その顔は一旦停止した。
「……エレノア嬢?」
「ど、どうもご無沙汰しております」
「なぜ貴女がこんな所に!? 王子、あなた本当に何したんですかッ!」
大臣は子供を叱りつけるような剣幕でビョルンを睨み付けた。
「え? 王子、アナタもしかして誰にも内緒で私を拉致したのですか?」
「拉致ぃ!? 王子、何て事をやってるんですか!」
「ええい、うるさい! こちらにも事情があるのだ!」
それから、王子と大臣の取っ組み合い寸前の問答が始まった。
だがビョルンはそのどれにもまともに答えようとせず、それが大臣の更なる怒りを呼ぶ。
そうしていよいよ話が進まなくなった辺りで、エレノアは肩で息をする大臣に声を掛けた。
「あの、何か『大変』な事が起きたから殿下を呼びに来られたのでは?」
「ああっ! その通りです! 殿下、これは大変な事でございますぞ!」
だから何だ、と忌々し気なビョルンに向かって、大臣は一際大きな声をぶつけた。
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