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 彼はココールド大陸にあるリンプトン国の第一王子。
 わんぱく王子で名が通る、名はカウザー様。歳は確か9歳のはず。

「王子、王宮の使者から来るという連絡もなく、お一人で来ていきなり怒鳴るなんて。何が私のせいなのですか?」

「しらばっくれるな! 母上の部屋に言ったら警備の騎士に離れ森の薬剤師と専属医師に言われて、僕を部屋に入れてばだめだと報告を受けていると言われた!」

 王妃の部屋に入るな?

「あーそのことですか。それ関して王子に理由を申しますと、いまはマリーサ王妃は安定期のため、うるさく騒ぐ、王子の入室は専属医師と相談の上、当分の間は禁止にさせていただきました。この前、部屋で騒ぎ花瓶を割られましたよね」

 そう言ってやると、彼は言葉を詰まらせた。

「うっ! なんで、それを、知っている!」

「王子はそのあと乳母の方に怒られて、お尻を10回叩かれたことも知っておりますよ」

「10回も叩かれてはいない!」

 図星の王子はうぬぬっと唸り、眉間に皺を寄せた。
 おっと、これは、いまにもお泣きになられるかもしれない。

(1人王子だからといって周りが甘やかすから、乳母の方が心を鬼にして叱らなくてはならないと、王妃の検診の時に愚痴っていましたから) 

「僕はただ……庭園のバラが綺麗だから母上と散歩したかっただけなのに……」

「バラですか?」

「そう、今が見頃だと庭園の庭師が言っていたんだ」

 そうだったのですか。
 本当はお優しい王子なのですね。

「では、王子に一つ教えてあげます。あなたの母、マリーサ王妃にお会いされたければ、いまは部屋の中で騒がずベッド横の椅子に座り、王妃の手を握ってあげてください。あなた様はもうすぐお兄様になるのですから」

「え、僕が兄? もしかして母上のお腹の中に、僕の弟か妹ができるのか!」

「そうです、王子はもう直ぐ兄になるのですよ」

 ここまで言えば、お優しい王子に自覚が湧き、王妃の寝室で騒がなくなるでしょう。
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