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第三章 本当の終末

第24話 強制出陣

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 いやあ。サポートアーマーを量産して、軍が無謀な偵察を行っていることは知っていた。研究所自体は、ウハウハだろう。

 だが新型は、大きくなって、さらに俺のドーピングが効いたらしく、初期型よりも体感が十倍くらい速く感じるらしい。
 それは、メカニックがすねたから。
 一歩目だと言ったのに、伸び側全部にサポートを入れやがった。
「えっ、タンクは大きくなったし、ボディも大きくなったし、新世さんは何でもかんでも、お早いほうが良いんでしょううっ?」
 いやみったらしい言い回し。

「俺でも骨が折れそうになったと、リポートに書いただろう」
 そう注意してみる。

「今回のは、手足が直接入っている訳でもないし、良いじゃ無いですか」
「入ってなくても、加速はするの。首が、常人だと加速に耐えられないんだよ。全力だと館野が気を失うんだぞ。ノーマルな人間は首が折れる」
 そう言うと、嫌そうな顔をする。

「一応、三段階のスイッチつけました」
「NMSの奴だろ。普通、一番上がノーマルかと思うだろ」
「Nがノーマルですよ。パワー全開」
 それを聞いて、思わず膝を突く。

「Mは何だ?」
「Mid。中間。です」
「じゃあSはSmall辺りか?」
「嫌だなぁ、サポートなしだからストップですよ」
「普段ON、OFFで書くだろ。なんで今回Stopなんだ?」
「パワーアシストだから?」
 そう言いながら、首をかしげて右頬に人差し指を当てる。

「かわいくない。書き直せ、一番上はNじゃなく最強、最凶でも良いぞ」
 そう言うと、やる気がなさそうに、歩いて行く。
「あ~だりぃ~」
 そんな声を、大声で現場へ残して。

「おい、首は大丈夫か?」
「やばいかもしれねえ。ぐきっとかじゃなく、ぶちって言った」
「まあ、プラントを活性化しろ。それで大丈夫だろ」
「いい加減だな」
「慣れろ。俺達はすでに人間をやめている」
「違いない」
 お互いに嫌そうな顔になる。

 いま、訓練場では、彩佑と葵が模擬戦をしている。
 スイッチは、Mのはず。

 実際、外から見ると、とんでもないスピード。停止状態からの蹴り足でコンクリートがめくれる。
「あれって、足首のジョイント、すぐベアリングとか潰れそうだよな」
「ああ。ベクトル的には、こじるからな。膝もやばそう」
「一応骨を二本にして腕と同じ感じで、ねじれても大丈夫な感じで造ってあるらしいがどうだろうな?」
「メカの言い草じゃないが、まあ折れても、中に生身は入っていないから、大丈夫だろう」

 そんなことを言っていた、ある日。
 現場では、やばそうな敵が出て、新型をもってしても、負けたそうだ。
 三台ほど手足をもがれた。
 量産型は、人間が乗れる程度に、デチューンされている。

 パワーアップかと思ったら、そこで何故か、俺達に命令が来た。
 試作機を持っていって現地で試せという事だ。
「行くのは良いけれど、武器は?」
「ああ゛っ? 肩のところにビームが出てくる、剣がくっ付いているだろう」
 すこぶる機嫌が悪いメカニック。

「この出っ張りは、急遽組んだ酸素ボンベじゃないのか?」
「そうだよ。よく分かったな。はああぁ。俺の創ったマシンが、俺以外に壊されるなんて」
 そう、この研究所では、組んでばらして、彼が自分で行っていた。
 それが、出撃が決まり、此処の機体が持って行かれる。そう思った瞬間に愛に目覚めたようだ。愛する機体が、どこの誰ともしれない敵に攻撃を食らって壊される。
 そんなこと許さないわ!!
 と、まあ本人も壊れた。

 孤高のメカニック、器会 司(きかい つかさ)。三十五歳。

 結局武器は、20mm機関砲をカスタマイズをして搭載。
 後は、背中に背負っていた、剣が復活。
 弾切れ時の非常用と、背後の防御用。

 そして、敵は体長五メートルを超えるトラ型の機械のようだ。
 口の中に機関砲が搭載されている変態機械。
 噛みつきもあり、全体サポートを、トリぽい航空タイプ、蛇ぽい奴、亀ぽい奴がセットで動いているらしい。

「これって、聖獣だよな」
「性獣?」
 アクセントが違ったようだが、館野だしな。
「中国で、青龍・朱雀・白虎・玄武とか伝承が在っただろう」
 そう説明するが、皆知らないようだ。

「まあ良いか。ロボットみたいで、襲ってくるから倒せってさ。見た目は変わっていても、機銃と、ミサイル、ランチャーでの攻撃。亀タイプは背中にランチャーを背負っている。重くて鈍足だそうだ」
 情報を一応共有する。

「うーん。それじゃあ各個撃破?」
 彩佑がかわいく聞いてくる。戦術は、アニメで覚えたそうだ、帝国側と、民主主義で別れて宇宙規模で戦争をする奴。

「鬱陶しいから、目になっているであろう朱雀が先。それから各個撃破。先に通信とかレーダーかく乱用に長時間浮揚タイプジャミングスプレーを噴霧するってさ。見た目透明だから通信は赤外線するようにと言っていた。通じないなら外部マイクで怒鳴れってさ。覚えておいてくれ」

「はーい」
 葵ちゃんと館野は実戦経験があるが、俺と彩佑はそれが無い。緊張してしまう。

「あっそれと、何か伝言がくっ付いている。攻撃対象に人間は搭乗しておらず。攻撃を受けないようにしつつ、遠慮なく敵を破壊するように。だってさ」

「それは、あれだな。軍本部から班長になった、お前向けのエールだな。暴れても人殺しにはならないと」
 館野のフォロー。確かにそれならば、気持ちとして罪悪感は少しはましだ。

「一方的な死か。それも嫌だな」
「当たらなければ、だいじょぶ」
 葵ちゃんが、軽い感じで言ってくれる。

「まあ、行ってみるか。皆当たるなよ」
「館野さん後ろから撃たないでくださいね。この前も撃ってる時に手を滑らして自身の足撃ち抜いたんですから」
 彩佑が館野をいじる。

「ほら、あれはサポートアーマーが大きくなったから、ちょっと手が滑っただけだよ」
「メカさん泣いていましたよ」
 そう、器会だから通称メカさん。

「まあ、良いじゃないか行くぞ」
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