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第2章 魔法の使える世界

第44話 一司への疑惑

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「それって、宇宙人か何かと入れ変わったというやつか?」
「映画とかでよくありますね。入れ替わったり、乗っ取られたり」
「一度サンプル取って、DNAでも調べてみるか?」
「彼最近、入院していますから…… あれは、変わる前か」

「そうですね、白く脱色したからダンジョンの影響を調べるとか言って、調べてみましょうか」

「それで調べて、変わっていた場合どうするのですか?」
「どうした方がいいかね。変わり方によるが、彼だけじゃなくてダンジョンのせいですべての人間が変わってきている可能性もあるぞ」
「魔法も使えるように、なりましたしね」



 報告を受けた上層部。
「駆除を行っている者の中に、空間魔法を使えるものが現れたと、報告書が上がってきています。空間魔法については、こちらの注釈が付いています」
「ラノベによくあるやつだな。現実に使える者が現れたって?」
「そうですね」
「すぐに転移防止の魔道具を作らなきゃいかんだろう」
「どうやって作るのですかね?」
「そんなものは、ドワーフに聞け」

 そう言われて、言葉に詰まる事務官。
「大臣、ドワーフってどこにいるのですか?」
「魔法は、イギリスだろう?」
「いいのですか? 本気で問い合わせますよ」
 事務官はまじめな顔で問いかける。すると大臣、
「本気か?」
 と言ってきた。

「大臣が言ったのでしょう?」
「いやまあそうだが、でも転移防止の魔道具は要るだろう」
「だからそれを、誰が作れるかということです」
「公示して入札で募集するか?」
「さっきのイギリスよりは、ましかもしれませんが、本気で出しますよ」
 少し悩みながらも、
「ああ出してみてくれ、仕様書は君が書け」
 そう言って投げてきた。
「そんな謎の物。どういう仕様で書くのですか?」
「考えろ。ある程度の範囲に転移してこられなければいい」
「はあ、わかりました」

 年明け早々の官報に、転移阻害の魔道具について資料等の提供招請が公示されていた。仕様書が書けなかったようだ。

 時は少し戻る。
 子どもたちが冬休みに入って、さっさと宿題を済まさせ。近場の駆除対象になっている、アリダンジョンを今日は回っている。
 思うところがあり、中学生の2人も連れて来ている。

 さあ、これに火をつけたら穴に放り込め。蓋を閉めて、よし今だ。この上に乗れ。
「「はーい」」
 真魚と壮二が乗る。
 何匹か上がってきたから、負けるなよ。取っ手はつかんでもいいが、縁はだめだぞ。アリに食われるからな。

 そう、子どもたちの、レベル上げだ。
 アリの野良ダンジョンと、蜘蛛の野良ダンジョンはいろんな所に沸く。定期的につぶさないと困る代物だ。

 中学生のレベル上げは、ダンジョンでは基本的できない。なので、アリダンジョンだ。技術は上がらないが、レベルは上がる。

 基礎的レベルが上がれば、ホントの攻略時に余裕が持てる。

「よし終わった。降りていいぞ」

「よしこれで、閉じて…… 終了と」
「一司兄さんみたいに、ダンジョンを閉じるのって、どうやるのですか?」
「ああ? この前、他のダンジョンで、このクリスタルに触っただろう。その時に情報は来なかったのか?」
「基本的管理と、設定あとはマスター特権だけですね」
 壮二は、俺にまだ慣れないのか、口調が固いな。
「ああそうか、クリスタルの管理部分だけか。二人ともそうなのか?」
「はい」
 真魚と二人が頷く。

「えーとな。ダンジョンマスター。つまり一番奥にいるボスだ。それが殺されると、管理者が不在状態になる。そこでクリスタルに触ると、マスターになれる。その後、ダンジョンに対して閉じろと命じるとダンジョンは閉じる」
「でも一司兄さん、クリスタルに触っていないのに、ダンジョンコントロールしていますよね」
「ああ、ダンジョンマスターには幾種類かあるらしくてな。おれはダンジョンが作れるからな。管理者が居なければ、ダンジョンを乗っ取れる」

「すごいんですね」
「たまたま拾ったスキルのおかげだ」

「さあ次に行くぞ」

 都合6か所ほどつぶして、子供たちは家に帰す。俺は役所へ報告と、魔石を売りに行く。
 報告書にサインをしていると、背後に誰かが立つ気配がする。

 おもむろに回り込み、ふと見ると、高梨さんだった。
「いやだなあ、高梨さん背後に立たないでくださいよ」
「君は某有名なスナイパーなのかね。さっきの動きは見えなかったのだが?」
「トレーニングのたまものですよ」
「本当に、トレーニングか? サンプルをくれないか?」

「は?」
 サンプルって何?
「最近君が人間じゃないと噂があってね。DNA検査するからサンプル頂戴」
「いや頂戴って」
「口腔粘膜細胞で良いから」
「はあ、良いですけど」

 専用のブラシを取り出して、ぐにぐにした後、先端部分を専用バイアルに切り離して入れキャップを閉じる。
「これでいいですか?」

「じゃあ預かるけれど、神崎さん人間だよね?」
「まあたぶん」
「たぶん…… か」

 後日、高梨さんから連絡が来た。
「残念ながら、普通だった」
 そう語る高梨さんの電話越しの声が、本当に残念そうだったのが気にかかる。あの人は俺に何を期待していたんだ。

 普通の人間だったか…… 宇宙人とかヒーローとかって、現実にいるなら彼くらいだったんだけどなぁ。変身とかしてくれると楽しかったのに。
 どこかに変身ベルトでも落ちてないかな。
 変身ヒーローにあこがれるお年頃、高梨誠54歳…… そっと天を仰ぎ見る。
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