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愛し子の帰還

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 空が暗闇に包まれ、ランプの灯りに照らされた木々の中でイオリ達は夕食の片付けをしていた。
 カッチェの店で散々食べたにも関わらず子供達のリクエストによりカツ丼をたいらげたところである。
 イオリとスコルが食器を洗い、ヒューゴが竈門の掃除をしパティがテーブルを拭いているとニナの甲高い声が響いた。

「テオ様!」

 ナギと共にアウラのブラッシングをしていたニナが嬉しそうに走り寄るとテオルドと従者ノアは笑みが溢れていた。

「おぉ、ニナ。
 今日もお腹一杯に食べたかい?」

「はい!カツ丼の日はみんな嬉しいの。」

 カツ丼と聞いて生唾を飲むテオルドであったが用があった事を思い出し、イオリに声をかけた。

「少し時間をもらえるか?」

「勿論です。
 みんな、後は良いよ。
 お風呂に入っておいで。」

「「「「はーい。」」」」

 子供達とアウラを見送るとイオリとヒューゴはテーブルに向かった。

「どうぞ。食後のデザートです。」

 フルーツゼリーとハーブティーを出されると2人は嬉しそうに微笑んだ。

「何かありましたか?」

 イオリの問いかけに2人は神妙な顔つきをした。

「イルツクのダンジョンに“エルフの里の戦士”が無理矢理侵入したらしい。
 以前の目撃情報で警護に力を入れていたようだが、奴らを止めるのは無理だったようだ。
 負傷者が出たと報告があった。
 それでな、イルツクの領主であるアナスタシア・ギロック伯爵が王都をはじめ各地から高ランク冒険者や兵士を要請している。
 現在までにダンジョンが破壊された報告がない事から、まだ攻略はされていないと考えている。」

「そこに俺が行けば良いんですか?」

 テオルドは静かに頷いた。

「できれば、そうして欲しい。
 お前が天空のドラゴンを探したいのは知っている。
 しかし“エルフの里の戦士”を放っておくわけにはいかない。」

 イオリは数分間、テオルドを見つめるとニッコリ頷いた。

「今日、カサドさんから武器や防具を受け取ってきたんです。
 いつでも行けますよ。」

「そうか・・・行ってくれるか。
 感謝する。」

 本当は行かせたくないと顔に書いてあるテオルドにイオリは優しく微笑んだ。

「気にしないで下さい。
 元々、イルツクには行こうと思っていたんです。
 それに“エルフの里の戦士”を野放しに出来ないには賛成です。
 どちらにせよ。
 いつか会う事になるでしょう。
 イルツクで仕事を終えたら、王都に向かいます。
 アルさん達に挨拶したらダグスクから船に乗ってスカイヤを探しに行ってきます。
 道中にも天空のドラゴンの情報を得る事が出来れば良いんですが。」

 旅の話をするとテオルドは寂しそうに頷いた。

「分かった。
 イルツクと王都には私から連絡を入れておこう。
 アースガイルではなく他国へ向かうのなら、お前達の身分証は冒険者ギルドのカードだけになる。
 友好的な国には一報入れておくが、今までと違うと心得よ。」

「はい。ご心配お掛けします。
 家族揃っているんで大丈夫です。
 何かあれば逃げちゃいますよ。」

 いつも通りのイオリにテオルドとノアは苦笑するのだった。


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