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旅路〜王都〜
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コンタンの父、フォダン・オンリールとは温厚なオンリール家にとっての薄暗い汚点である。
アマンドよりも4歳上のフォダンは若き頃より、賭け事や享楽の闇の魅力にハマり多くの問題を起こしてきた。
先代当主や弟のアマンドが助言しても聞く耳を持たず、自分がオンリールの嫡男だと言い渡し、多くの店で料金の踏み倒しまで行っていた。
見かねた先代当主は領地のはずれに屋敷を与え、伯爵家から遠ざけた。
その際、嫡男であろうとも犯罪を起こせば許さぬと言い放った。
自由を奪われたフォダンは欲に勝てずに、荒くれ者達を集め伯爵邸を襲う計画を立てた。
結局、先代当主の手によって鎮圧された、クーデターは失敗に終わった。
捕らえられたフォダン・オンリールは後悔と慈悲を叫びながらも、父である先代当主に許される事なく伯爵家から席を外され隔離という名の牢獄・・・誰の目に留まらない一室に閉じ込められ、体を蝕まれて若くして亡くなった。
弟でありながらアマンドが伯爵位を継ぎ、オンリールの街を盛り立ててきたのは、兄が迷惑をかけた街への贖罪もあったのかもしれない。
________
「其方の父は多くの過ちを犯した。
そのツケを息子である其方が払うのなど、納得いかないのも理解はする。
しかし、魅了に手を出したのは許される事ではない。」
淡々と話す国王アルフレッドをコンタンは悔しそうに睨みつける。
「母は私が伯爵になるのだと言っていた。
幼い頃より、それだけが私の生きる道筋だった。」
アルフレッドはコンタンへは一種の憐れみを持っていた。
それでも、あの時オンリール家は選択しなければいけなかったのだ。
気まずい空気が流れる中、真っ黒な若者がヒューゴと騎士に抑えつけられているコンタンにスタスタと近づいた。
「だから、オンリール家の子供達を殺したんですか?」
「何っ?」
「ハッ?!」
「・・・。」
「まさか!」
イオリの言葉にアルフレッドを始めギルバート、ディビット、宰相のグレンは驚いたように目を見開いた。
当のコンタンは感情もなくイオリを見上げていた。
「一緒に行ったピクニックでアマンドさんの息子さんとお孫さんをボート事故に見せかけて殺した。
ボートに細工をしたんでしょう。
木製のボートです。穴の一つ開けておけば、徐々に沈んでいきます。
自分1人なら、なんとかなっても息子さんは・・・ジレさんは子供2人を見捨てる事が出来なかった。」
イオリは自分が口にする残酷な真実に吐き気がしていた。
「他の子供達は、もっと簡単だった。
馬車の事故も使用人を買収して実行させたし、病死の子は毒を盛ればいい。
最後に一番上の子は・・・魔獣討伐の時に紛れて殺せば証拠もなくなる。」
「・・・イオリ。
それは本当の事か?」
自身の目を覆いながら振り返ったイオリにアルフレッドは険しい顔で頷くしかなかった。
「オンリール家の血筋を減らせば伯爵になれると考えたんでしょう。」
「ならば、何故にアマンドは今まで生かせていた。
本来なら、一番に狙われるはずだ。」
「・・・この世襲に正当性をもたらす為ですかね。
憔悴しながらも領地を守る老伯爵を支え、領地で確実な実績を積んでいく。
邪魔になれば、いつでも抹殺はできますから・・・。
現に、今回がそうです。
アマンド・オンリール伯爵自らが甥に譲ると言えば、本来、残っている子供の為に余計な詮索を招くでしょう?
比べて、伯爵がミスを犯した事によって、歳を理由に引退。
後継が成人を迎えてない上に母の実家に篭りきりとなれば、甥が引き継ぐ形も少しは許されるんじゃないんですか?」
イオリの言葉に部屋は静まり返った。
「随分と時間をかけたな。」
ギルバートの呟きにイオリは肩を竦めた。
「アマンドさんを苦しめたかったんじゃないでしょうか?
父や自分の立場を奪ったのは先代当主であり、アマンドさんですからね。」
この時、初めてコンタンは顔を背けた。
「どうやら、当たりのようです。
でも・・・。
あなたには、そんな資格ありませんよ?」
イオリはコンタンに目を外す事を許さないと顔を自分に向けた。
「だって、あなたはアマンドさんのお兄さん。
フォダン・オンリールの子ではないのだから。」
コンタンだけではない。
困惑が部屋中に巡った瞬間だった。
アマンドよりも4歳上のフォダンは若き頃より、賭け事や享楽の闇の魅力にハマり多くの問題を起こしてきた。
先代当主や弟のアマンドが助言しても聞く耳を持たず、自分がオンリールの嫡男だと言い渡し、多くの店で料金の踏み倒しまで行っていた。
見かねた先代当主は領地のはずれに屋敷を与え、伯爵家から遠ざけた。
その際、嫡男であろうとも犯罪を起こせば許さぬと言い放った。
自由を奪われたフォダンは欲に勝てずに、荒くれ者達を集め伯爵邸を襲う計画を立てた。
結局、先代当主の手によって鎮圧された、クーデターは失敗に終わった。
捕らえられたフォダン・オンリールは後悔と慈悲を叫びながらも、父である先代当主に許される事なく伯爵家から席を外され隔離という名の牢獄・・・誰の目に留まらない一室に閉じ込められ、体を蝕まれて若くして亡くなった。
弟でありながらアマンドが伯爵位を継ぎ、オンリールの街を盛り立ててきたのは、兄が迷惑をかけた街への贖罪もあったのかもしれない。
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「其方の父は多くの過ちを犯した。
そのツケを息子である其方が払うのなど、納得いかないのも理解はする。
しかし、魅了に手を出したのは許される事ではない。」
淡々と話す国王アルフレッドをコンタンは悔しそうに睨みつける。
「母は私が伯爵になるのだと言っていた。
幼い頃より、それだけが私の生きる道筋だった。」
アルフレッドはコンタンへは一種の憐れみを持っていた。
それでも、あの時オンリール家は選択しなければいけなかったのだ。
気まずい空気が流れる中、真っ黒な若者がヒューゴと騎士に抑えつけられているコンタンにスタスタと近づいた。
「だから、オンリール家の子供達を殺したんですか?」
「何っ?」
「ハッ?!」
「・・・。」
「まさか!」
イオリの言葉にアルフレッドを始めギルバート、ディビット、宰相のグレンは驚いたように目を見開いた。
当のコンタンは感情もなくイオリを見上げていた。
「一緒に行ったピクニックでアマンドさんの息子さんとお孫さんをボート事故に見せかけて殺した。
ボートに細工をしたんでしょう。
木製のボートです。穴の一つ開けておけば、徐々に沈んでいきます。
自分1人なら、なんとかなっても息子さんは・・・ジレさんは子供2人を見捨てる事が出来なかった。」
イオリは自分が口にする残酷な真実に吐き気がしていた。
「他の子供達は、もっと簡単だった。
馬車の事故も使用人を買収して実行させたし、病死の子は毒を盛ればいい。
最後に一番上の子は・・・魔獣討伐の時に紛れて殺せば証拠もなくなる。」
「・・・イオリ。
それは本当の事か?」
自身の目を覆いながら振り返ったイオリにアルフレッドは険しい顔で頷くしかなかった。
「オンリール家の血筋を減らせば伯爵になれると考えたんでしょう。」
「ならば、何故にアマンドは今まで生かせていた。
本来なら、一番に狙われるはずだ。」
「・・・この世襲に正当性をもたらす為ですかね。
憔悴しながらも領地を守る老伯爵を支え、領地で確実な実績を積んでいく。
邪魔になれば、いつでも抹殺はできますから・・・。
現に、今回がそうです。
アマンド・オンリール伯爵自らが甥に譲ると言えば、本来、残っている子供の為に余計な詮索を招くでしょう?
比べて、伯爵がミスを犯した事によって、歳を理由に引退。
後継が成人を迎えてない上に母の実家に篭りきりとなれば、甥が引き継ぐ形も少しは許されるんじゃないんですか?」
イオリの言葉に部屋は静まり返った。
「随分と時間をかけたな。」
ギルバートの呟きにイオリは肩を竦めた。
「アマンドさんを苦しめたかったんじゃないでしょうか?
父や自分の立場を奪ったのは先代当主であり、アマンドさんですからね。」
この時、初めてコンタンは顔を背けた。
「どうやら、当たりのようです。
でも・・・。
あなたには、そんな資格ありませんよ?」
イオリはコンタンに目を外す事を許さないと顔を自分に向けた。
「だって、あなたはアマンドさんのお兄さん。
フォダン・オンリールの子ではないのだから。」
コンタンだけではない。
困惑が部屋中に巡った瞬間だった。
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