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第1章 王都編

第37話 大人げない執事 ノアside

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 ぼくは別邸で毎日のように魔術や跡取りとしての勉強をしている。アリアちゃんも魔力制御訓練をしている時だけ一緒にいたけど、今は別々だ。
 理由はアリアちゃんの魔術の使い方が独特過ぎて、講師をできる者がいなかったから。
 
 
「師匠、今日はいつ終わりますか? アリアちゃんに早く会いたいです」 
「魔力制御もすでに完璧ですし、昼過ぎには帰れますぞ。しかし、坊っちゃんは本当にお嬢様がお好きですな」
「アリアちゃんを好きなのは当然です。ぼくの夢はアリアちゃんが幸せになれる世界を作ることですから。
 そして、ぼくの幸せはアリアちゃんといることです。だから、もう少し早く帰れませんか?」
 
 毎日繰り返し、お馴染みになったやりとりにセバスは苦笑をもらす。
 
「難しいですな、諦めてくだされ。そうそう、今日から一緒に学ぶ仲間が増えますぞ。第2王子のリカルド様です。張り合いが出ますな」
「あぁ、昨日うちに来ましたね。アリアちゃんと同じ赤い瞳とかうらやましい……。
 あの、王子と別々に学ぶのは無理ですか? ぼくは自分のやるべきことをやって少しでも早くアリアちゃんの元に帰りたいんです」
「坊っちゃん、そのように自分のことばかり考えてはなりませんぞ。公爵家の次期当主として知り合っておくのも悪いことではありませんからな。
 それに、顔を広く持っていた方が何かあったときにお嬢様を守れるのでは?」
 
 確かにセバスの言うとおりだ。今後のためにも仲良くなっておいて損はない。まともなヤツならの話だけどね。
 アリアちゃんの話では可哀想なやつみたいだけど。あまり期待はしないでおこう。アリアちゃんは優しいからクズみたいなやつも悪く言わないだろうし。
 
 仕方がなく頷き、一緒に修行することに同意をすると、別邸に第2王子が来た気配を察知した。魔術を使ってセバスと門まで移動する。
  
 少し離れたところから風魔法を使い、セバスと第2王子の会話を聞いて様子を伺う。
 
 セバスがいつものように丁寧に挨拶しているのに対して王子は失礼な態度を崩さない。しかも、「へぇ。まぁ、よろしく頼む」って言いやがった。 
 信じられない。これから、指南してくれる相手に向かって偉そうに。
 
 身内であるセバスに横柄な態度をとられて腹が立ち、高速移動で王子の元へと向かう。
 
「ねぇ、それが人に教わる態度なの? 第2王子とは聞いていたけど、王族だからって指南してくれる人にそんな態度をとれるくらい偉いわけ?」
 
 少し文句を言えば驚いたように僕を見て返事もしない。
 
 こいつ、話になんないや。仲良くなっても意味ないな。
 
 ぼくは王子に見切りをつけ、やはり一緒に修行はできないと訴える。セバスも分かってくれると思ったのに……怒られたのはぼくだった。殴られた頭が痛い。だけど、ぼくにだって言い分はある。
 
「こんなのに謝りたくない。礼儀を知らないやつに何で礼を尽くさないといけないの!?」
 
 ぼくの言葉を聞いていたセバスに一瞬だが魔力で圧をかけられて、仕方なく黙ると諭された。
 
「坊っちゃん、リカルド様は今初めてお城という場所を離れて誰かに指南される立場にあります。親元を離れて初めて学ぶのです。
 立場は自分の方が上でも、教えを乞う時は礼儀を尽くさねばならないことを誰も教えてくれなかったのでしょう。王子様ですから、常に上からものを言うことが当たり前になってしまったんですな。
 自分よりも精神的に幼い子を相手していると思えば、例え相手が年上でも腹は立ちません。
 それに、相手と同じところに態々合わせて、自分の格を落とす必要はありませんよ。そんなことをしていたらこちらの品位が疑われてしまいますからな」
 
 諭しながら王子を批判するという大人気ないことをしていて、少し第2王子を気の毒に思って盗み見れば、今にも泣きそうな顔をしていた。しかも、感情に釣られて魔力が乱れている。
 
 どれくらい魔力制御できるかみていることは予想がついたが、傷口を抉るようなことを言いたい放題……。
 絶対楽しんでる。まぁ、その傷口を作ったのはぼくなんだけど。
 相変わらず、意地の悪い執事だ。流石、父上の執事というべきか。
 
 この調子だと直に魔力が溢れるだろうな。
 
 王子の魔力制御に期待もできないので、自分の周りに結界シールドを張って待機した。
 すると案の定というべきか、地面が揺れ始めのだった。
 
 
 
 
 
 
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