小太刀の籐伍奇譚帖〜鬼神狩り
大坂西町奉行所の仮役与力、阿刀籐伍は芝居好きのまだ半人前の廻り方役人である。ある日、吟味方より奉行からの下命として大坂市中を騒がせる骨董品専門の盗賊「鬼没盗」の探索を命じられた。
籐伍は盗賊探索など全く初めてだったが、従兄弟の同心、真壁恭一郎や定町廻りの河原崎などの協力を得て、鬼没盗の足取りを追おうと苦闘する。そうしたときに、表で売買できない盗品の密売競市「閻魔の市」の情報を得る。籐伍は鬼没盗の次の押し込み先として閻魔の市に注目した。そして閻魔の市に潜入して探索し、鬼没盗に接敵することに成功した。市から逃げる男・巨勢渦彦と戦うことになってしまう。彼は賊一味ではなかったが、渦彦の追う死んだ父の仇も鬼没盗なのではなかと推察し、互いに協力しようと申し出たのだった。こうして渦彦と籐伍は互いの探索の相棒になったのである。
次の探索に行き詰まった籐伍は、父念十郎の親友、東町奉行所の与力・大塩平八郎より鬼没盗を誘う餌、「聖徳太子の未然記」と、囮策の助言をもらう。籐伍は渦彦の紹介で豪商鴻池家の御隠居に協力を要請し、鬼没盗を罠にかける囮一座を開始する。見事に鬼没盗を誘い出すことに成功したが、同時に渦彦は自分と同じ蹴速術を使う賊の首領を取り逃してしまう。
渦彦は一族の門外不出の蹴速術をなぜ使う者がいるのかを確かめる為に、師である叔父・椎根津の元に向かった。姿を消した渦彦を追って籐伍もまた大和に向かう。椎根津の元で二人はある事実を知る。椎根津の弟子であった古瀬稀人という男が蹴速術を学び、渦彦の実家徳陀子神社の秘薬・鬼変薬をも求めているらしいと。鬼変薬は肉体能力を鬼にまで高め、蹴速術を使うと無敵の鬼神術になるという。渦彦の父は鬼変薬譲渡を拒んだので殺されたらしい。鬼変薬入手に失敗した稀人は、薬再現のための記録を求めて歴史遺物を盗んでいるのではないかと想像された。鬼変薬は古代唐の渡来薬だった。全てを語り終えた椎根津は様々な責任を背負って自害した。
大和から戻った籐伍と渦彦は、鴻池の御隠居から噂を聞いた。賊の出現する夜の天保山に灘と行き来する船があらしい。籐伍は鬼没盗が船を足として移動していると考えた。灘で船の船屋を発見した籐伍は鬼没盗を一網打尽にすべく天保山と灘に捕り方を配置して捕縛を決行する。天保山に臨んだ籐伍と渦彦は蹴速術を使う複数の賊と戦い、稀人らを船に逃してしまった。だが二人は出航直前の船に乗り込み船上での決戦に挑んだ。渦彦と稀人は兄弟弟子になるが技は兄弟子稀人が上だった。渦彦は最後の助言「蹴速を忘れろ」を実行する。そして格上の稀人と相討ちに持ち込むことに成功した。そして籐伍も想像しなかった結末を迎えることになるのだった。
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