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7話
しおりを挟むユーティは今にも逃げ出しそうな顔をしていた。
まぁ、玉の輿だと思っていた相手が、実は全くお金を持っていなかったのだ。
ユーティからすれば当然逃げるだろう。
おまけに男爵家なのに伯爵家に対して真っ向から喧嘩を売り、状況は最悪だ。
勿論、逃がすはずがない。
「どうしたんですかルテイン男爵令嬢。顔色が悪いようですが?」
ユーティはびくりと肩を震わせた。
今まさに逃げようとしたところを呼び止められ、驚いたのだろう。
「あなたにも勿論、慰謝料を請求させていただきますよ? 逃がすわけ無いじゃないですか」
私は笑顔でユーティに告げる。
するとユーティは醜い言い訳を始めた。
「わ、私は悪くないわ! わざとじゃなかったの! 許して!」
「婚約しているクリス様に近づいて不貞を働いたのは、あからさまな故意でしょう?」
「彼が婚約しているなんて知らなかったの! ほ、本当よ!」
「今まで学園で過ごしてきて知らないわけないですよね? 知らなくても、調べればすぐに分かることですけど」
私はユーティの言い訳を一つ一つ丁寧に潰していく。
「……知らなかったって言ってるじゃない!」
ついにユーティはヒステリックに叫びだした。
そして耳をふさいで頭を振り、しゃがみこんでしまった。
「いくら知らなかったと誤魔化しても無駄です。それに、そのみっともない演技をやめてはいかがですか?」
しかしユーティは一向に演技をやめない。
私はため息をついてユーティに告げた。
「それでは、ルテイン家には慰謝料として金貨千百枚を請求することに致しますね」
「せ、千枚!?」
ユーティが顔を上げた。
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