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第3章 七寺英太の革命日記
第58話 すぐキレる間抜け Threat to society
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翌日、現実世界。俺はベッドで目を覚ます。今は何時だ……もう昼近くじゃねぇか。ぼんやりしていると、少しずつ昨晩の記憶が蘇ってくる。
そうだ、あのバーバリアンとかいう男にPKされ、ウンザリしてそのままログアウト、酒をかっ喰らってふて寝したんだった……。
あの野郎、パワー2億5000万だと? 前より1億も増えたって、どんだけ課金したんだ。
数万円というレベルではないな。何十万、いや、何百万だろう。
馬鹿じゃねぇの? ゲームで復讐する、ただそれだけのためにそんなに散財するなんて。
そう、馬鹿なんだあいつは。すぐキレる間抜け、ド低能! 死んじまえ!
クソッ、いらいらしてきたぜ。とりあえずションベンにいこう。
昼飯を食べ終わり、考える。今日は休みだが、さて、どうしよう?
プラネットには行きたくない。行けば絶対に昨日の事を思い出す、そんなの死んでも御免だ。
こういう時は街に行くのがいい。ぶらぶら散歩して、メシ屋でうまいもん食べて、そうやってゲームと関係ないことをしよう。
よし! だったらすぐ支度だ。ぼやぼやしてると日が暮れる。
街はいつだって騒がしい。いろんな店がたれ流す音楽、人々の喋り声、どこかで子どもがダダをこねて泣く。
ったく、どうしてガキの泣き声ってのはこうもムカつくんだ? 殴り飛ばして黙らせてやりてぇ!
……落ち着け、俺。もっと静かな所へ行こう。広場を出て大通りへ。道に沿って歩いていく。
そろそろ役所の建物が見えてくるはずだ。しかし、かわりに群衆の姿が見えてくる。
かなりの数だ。奴らはプラカードを掲げていて、それらにはこんな文字が書かれている。
”デモの自由を! 言論の自由を!”
”言論弾圧を許すな!”
”死者3人の責任をとれ!”
なるほど、デモ隊か。わざわざ休日にご苦労なこった。
連中の前に目をやると、ライアット・シールドを構えた警官隊が展開している。殺気立ってやがるぜ。
俺はデモ隊の後方に近づき、事態の成り行きを見守る。デモ隊の先頭にいる男が拡声器で叫び出す。
「我々は政府の言論弾圧に抗議する! 先日のデモにおける過激な警察活動に抗議する!
諸君らが振るった暴力によって、罪なき市民が3人も死んだ! 君たちはそれを「治安を守るためのやむを得ない犠牲」というが、本当にそうか!
君たちは、「あの時はデモ隊が先に暴力を振るい、それへの正当防衛で武器を使った結果、死者が出た」と主張している。
なるほど、確かにそうだ。公開された映像記録では、デモ参加者が先に殴りかかっている。
しかし! 身を守るためとはいえ、死なせていいのか! 過剰防衛ではないのか!」
先日のデモ、か。知ってる、ネットのニュース・サイトで特集記事を読んだからな。
この男が言ってる通り、デモ隊3人が死ぬ大惨事だった。で、俺が察するに、今日のこのデモはそれへの抗議ってわけだ。
ふん、デモなんてつまんねぇ。でも、もし大騒ぎに発展したら面白いだろうな。ケンカは見てるだけで楽しい。
そう思っていると、俺からちょっと離れたとこにいるデモ隊の男が、バッグから何かを取り出す。
なんだありゃ? 透明な液の入ったガラス瓶だけど、口のとこから布が突っこんである。
男はその布にライターで火を着けると、瓶を警官隊へ放り投げる。瓶は地面に落ちてバリーンと割れ、液体をまき散らして燃え上がる。
炎が警官隊を襲う。
「わぁぁーっ!」
悲鳴がこだまする。だが、投げた張本人はそんなのお構いなしで笑う。
「アハハハハハハハハハ! 死んじまえ! 革命戦争だ!」
彼はバッグからさらなる一本を出して着火し、投げる。またもや炎が飛び散る。
ついに警官隊が動き出す。奴らは警棒を振りかざしてデモ隊に突っこみ、片っ端から叩いていく。
「コラァ! おとなしくしろ!」
「おい、サツだ!」
「抵抗するな、犯罪者ども!」
「黙れ、権力の犬!」
「なんだと!」
「お前ら、やっちまえ!」
「各員、応戦!」
「遠慮はいらねぇ! 反撃だ!」
戦いが始まる。よし、だったら空手キングの俺がデモ隊を助けてやる!
適当な警官を探して……。よし、この男だ! いくぜ!
「おらぁーーーっ!」
空手のスキルを活かし、思い切り拳を振るってぶちのめす。
「ぐあっ……」
「おらおらおら! くたばれ!」
何度も何度も顔を殴り、腹を蹴る。暴力を振るう快感が、昨日PKされた不快感を打ち消していく。
わけのわからない衝動が俺をつき動かし、叫ばせる。
「革命だ! 革命戦争だ! 言論の自由を守れー!」
ハハハハハハ! 楽しい! こういう喜びが欲しかったんだ!
警官ども! こないだのデモで人を殺したのが事実なら、その報いを受けろ!
そうだ、あのバーバリアンとかいう男にPKされ、ウンザリしてそのままログアウト、酒をかっ喰らってふて寝したんだった……。
あの野郎、パワー2億5000万だと? 前より1億も増えたって、どんだけ課金したんだ。
数万円というレベルではないな。何十万、いや、何百万だろう。
馬鹿じゃねぇの? ゲームで復讐する、ただそれだけのためにそんなに散財するなんて。
そう、馬鹿なんだあいつは。すぐキレる間抜け、ド低能! 死んじまえ!
クソッ、いらいらしてきたぜ。とりあえずションベンにいこう。
昼飯を食べ終わり、考える。今日は休みだが、さて、どうしよう?
プラネットには行きたくない。行けば絶対に昨日の事を思い出す、そんなの死んでも御免だ。
こういう時は街に行くのがいい。ぶらぶら散歩して、メシ屋でうまいもん食べて、そうやってゲームと関係ないことをしよう。
よし! だったらすぐ支度だ。ぼやぼやしてると日が暮れる。
街はいつだって騒がしい。いろんな店がたれ流す音楽、人々の喋り声、どこかで子どもがダダをこねて泣く。
ったく、どうしてガキの泣き声ってのはこうもムカつくんだ? 殴り飛ばして黙らせてやりてぇ!
……落ち着け、俺。もっと静かな所へ行こう。広場を出て大通りへ。道に沿って歩いていく。
そろそろ役所の建物が見えてくるはずだ。しかし、かわりに群衆の姿が見えてくる。
かなりの数だ。奴らはプラカードを掲げていて、それらにはこんな文字が書かれている。
”デモの自由を! 言論の自由を!”
”言論弾圧を許すな!”
”死者3人の責任をとれ!”
なるほど、デモ隊か。わざわざ休日にご苦労なこった。
連中の前に目をやると、ライアット・シールドを構えた警官隊が展開している。殺気立ってやがるぜ。
俺はデモ隊の後方に近づき、事態の成り行きを見守る。デモ隊の先頭にいる男が拡声器で叫び出す。
「我々は政府の言論弾圧に抗議する! 先日のデモにおける過激な警察活動に抗議する!
諸君らが振るった暴力によって、罪なき市民が3人も死んだ! 君たちはそれを「治安を守るためのやむを得ない犠牲」というが、本当にそうか!
君たちは、「あの時はデモ隊が先に暴力を振るい、それへの正当防衛で武器を使った結果、死者が出た」と主張している。
なるほど、確かにそうだ。公開された映像記録では、デモ参加者が先に殴りかかっている。
しかし! 身を守るためとはいえ、死なせていいのか! 過剰防衛ではないのか!」
先日のデモ、か。知ってる、ネットのニュース・サイトで特集記事を読んだからな。
この男が言ってる通り、デモ隊3人が死ぬ大惨事だった。で、俺が察するに、今日のこのデモはそれへの抗議ってわけだ。
ふん、デモなんてつまんねぇ。でも、もし大騒ぎに発展したら面白いだろうな。ケンカは見てるだけで楽しい。
そう思っていると、俺からちょっと離れたとこにいるデモ隊の男が、バッグから何かを取り出す。
なんだありゃ? 透明な液の入ったガラス瓶だけど、口のとこから布が突っこんである。
男はその布にライターで火を着けると、瓶を警官隊へ放り投げる。瓶は地面に落ちてバリーンと割れ、液体をまき散らして燃え上がる。
炎が警官隊を襲う。
「わぁぁーっ!」
悲鳴がこだまする。だが、投げた張本人はそんなのお構いなしで笑う。
「アハハハハハハハハハ! 死んじまえ! 革命戦争だ!」
彼はバッグからさらなる一本を出して着火し、投げる。またもや炎が飛び散る。
ついに警官隊が動き出す。奴らは警棒を振りかざしてデモ隊に突っこみ、片っ端から叩いていく。
「コラァ! おとなしくしろ!」
「おい、サツだ!」
「抵抗するな、犯罪者ども!」
「黙れ、権力の犬!」
「なんだと!」
「お前ら、やっちまえ!」
「各員、応戦!」
「遠慮はいらねぇ! 反撃だ!」
戦いが始まる。よし、だったら空手キングの俺がデモ隊を助けてやる!
適当な警官を探して……。よし、この男だ! いくぜ!
「おらぁーーーっ!」
空手のスキルを活かし、思い切り拳を振るってぶちのめす。
「ぐあっ……」
「おらおらおら! くたばれ!」
何度も何度も顔を殴り、腹を蹴る。暴力を振るう快感が、昨日PKされた不快感を打ち消していく。
わけのわからない衝動が俺をつき動かし、叫ばせる。
「革命だ! 革命戦争だ! 言論の自由を守れー!」
ハハハハハハ! 楽しい! こういう喜びが欲しかったんだ!
警官ども! こないだのデモで人を殺したのが事実なら、その報いを受けろ!
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