しんとりかえばや。

友坂 悠

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パラレル世界。

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 この世界はたぶんとりかえばやの世界だっていうのは間違いないと思う。
 それでも随分とおはなしの中身とは変わっている。
 わたしが内侍になるのは物語の強制力なのかもしれないけど、本当だったらここでわたしとにいさまは入れ替わり、ちゃんととりかえは完了するはずだったのに。

 まさか男の体のわたしが帝の后になるだなんて、なれるだなんて、そんな幸せなことが起こるだなんて思ってもみなかった。

 帝は自分の名前を「令」だと名乗った。
 本来の平安の歴史だと、この次代の帝は後冷泉帝だ、もちろんそんな諡が今呼ばれているわけじゃないことはわかってるし、後冷泉帝であればわたしとは従兄弟になるはず。藤原道長、お祖父様の孫だから。実在の歴史では頼通の娘寛子を皇后としたはず。そしてついぞ寛子との間には皇子に恵まれなかったとあった。

 そういう意味では、帝とわたし寿子が結ばれ子に恵まれなくても歴史通りと言えなくもない。
 とりかえばやの世界とは違ってるけれどね。

 そういえば。
 わたしに寿子という女性名をつけたのはおたあさまだ。
 仏のお告げで女子として育てられたわたし。命がつなげるのならそれでもいいと、おもうさまも納得してくれたらしいけれど、そのおかげでわたしはわたしとしてちゃんと入内できると考えたら、わたしに寿子という名を授けてくれたことには本当に感謝しかない。

 この世界はとりかえばやの世界と実在の歴史をミックスしたパラレル世界になっていってるのかな。
 そういえばもう一つ。

 わたしが内侍として出仕するにあたり、先帝のお子で東宮のお世話や話し相手というお役目もあるらしい。ただし、その東宮は姫ではない。
 とりかえばやでの女一宮ではなくて、ちゃんとした男宮、名を悠宮はるのみやといった。
 まだ元服前の宮は東宮として立てられたもののまだ幼く、帝に皇子ができさえすればとりかえられてもおかしくない、そんなお立場だ。

 多感なそんな時期に、そういう不安定な立場でいらっしゃるのはお可哀想。そう同情もしてしまうし、またわたしが出仕するのだから間違いが起きることもない、と、安心もする。
 とりかえばやの女一宮と弟姫のことについては、あの物語では完全に悲劇だし。
 ああいう出来事が起こりようがないことに感謝した。
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