【完結】モブの筈の僕がヒロインになった訳

第二章

28:カーディナル様と

サロンに案内された僕がいつものソファの定位置へと座ると、カーディナル様はその隣に腰掛けてくれる。本当は対面に向かって座った方が話はしやすいんだろうけど、僕はカーディナル様とくっついてお話し出来るから嬉しかったりする。

カーディナル様は普段他の人とお仕事で一緒に行動をしている時には笑みも殆ど見せないので見た目は寡黙な、少し怖い感じに見えるそうなんどけど僕に対してはいつも笑みを浮かべて対応してくれるから、僕に対しては特別なのかな？ってちょっとだけ優越感と嬉しさが溢れてくるんだ。

「それでね、ストック侯爵家のアルト君とサルビア侯爵家のネモローサ君とお友達になったんです！僕は覚えてなかったんですけど、王妃様の開いた第二王子殿下の婚約者候補と側近候補を決める為のお茶会に出てたらしくて僕の事も覚えてくれてたみたいなんです」
「.....ああ、城でルテウスに初めて会った時のお茶会の事か？」
「そうです。それで、僕が第二王子殿下の婚約者か側近になる気があるのか知りたかったみたいで話し掛けてくれたんです。あ！勿論僕はきっぱりとどちらもなる気はないって答えたんですよ！そしたらライバルにならないからってお友達になってくれたんです！」

ならライバルだったらお友達にならなかったのか？と言われたらわからないけど、でも２人とも悪い子じゃないからきっと時間は掛かってたかもしれないけどお友達にはなれたんじゃないかなって思う。

「そうか....ルテウスは側近候補にもならないのか？」
「勿論です！僕はカーディナル様のお嫁さんになるんですから！ふふふ」

側近なんかになったら忙しくなってカーディナル様に逢う時間も減ってしまう。

「ふふ。そうか、私のお嫁さんか」
「.....えっと、駄目ですか？側近になった方が良いなら頑張りますけど.....」

嫌だけど....凄く嫌だけどカーディナル様が言うなら..... 

「いや？私の所にお嫁さんに来るならルテウスには花嫁修業も待ってるから側近の仕事をする暇はないと思うよ？」
「はい！あ.....そう言えばこの間、第二王子殿下と学園で一緒にいる子爵家の先輩に第二王子殿下が呼んでるから来いって腕を捕まれて連れていかれそうになったんです....」

お兄様とお姉様にこの間のトラブルの事を話したら、念の為にカーディナル様に伝えておいた方が良いよって言われたんだ。

「.....何？本当か、ルテウス？」
「はい....アルト君とネモローサ君が間に入ってくれて追い払ってくれたんですけどなかなか納得してくれなくて....結果的には先生が通り掛かって注意をしてくれたから行かなくて済んだんですけど....２人が言うにはまた呼び出されるんじゃないかって」

殆ど話した事がない僕に何の用があるのかがわからなくて余計に不安になる。

「.....ルテウスはロティスとは殆ど会話をした事がないと言っていたな？」

ロティス？.....ああ、第二王子殿下の事かな？ 

「えっと、はい。お茶会の時に礼儀としてご挨拶をしたぐらいで会話らしい会話はした事がないです」
「そうか.....ならもし次に何かを強要されそうになったら私の名前を出しても良い」
「え？カーディナル様の名前を？」
「そうだ。２人きりになるのだけは避けた方が良いからな.....事実はどうあれ、既成事実を捏造されたらルテウスはロティスの婚約者にされてしまう可能性も出てくるからな.....」
「こ、婚約者！？そんな嫌です！僕が好きなのはカーディナル様なのに！」

え！？第二王子殿下ってそんな馬鹿な事をするような人なの？
あ、でも第二王子殿下は今学園ではナーレ・コルチカム子爵令息と恋仲の噂があるよね？？

「うん。私もロティスにルテウスをやるつもりはないな.....。私の影の１人にルテウスを見守らせるから安心していい。だがルテウスも気を付けてくれるか？」
「はいっ！！それは、勿論っ」
「ふふ。良い子だ」

チュッチュッと僕の額や頬に優しくキスをしてくれる。そして最後に唇にも。

僕がまだまだ子供だから、本当に唇に軽く触れるぐらいのキスだけど、それをされると僕の心がふわふわと温かくなるんだ。

もっと.....もっとカーディナル様とキスしていたい....ギュッて抱きしめて欲しい....

早く大人になりたいな.....