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お狐様が夢枕に立つ

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「ううん…」

目が覚めた。

目元を擦って身体を起こす。

そこで気付いたのは、知らない場所にいたことと兄様が隣にいないこと。

おかしい。

今日も兄様と一緒に添い寝したはず。

「…兄様?」

知らないその場所で、兄様を求めて歩き出す。

ここは屋内らしい。

和風な建築。

歩き回っていると、ふと厳かな雰囲気の場所に出た。

そこには、九尾の狐といつぞやの女の子。

「ムーンリット様と…お狐様?」

思わず、なんの警戒心も持たず困惑のまま話しかけてしまった。

ムーンリットはこちらを向き、バツの悪そうな顔で目をそらす。

お狐様はゆったりとした仕草でこちらを向く。

「おやおや、もうお目覚めかな」

狐の表情なんてわからないけれど、微笑まれた気がした。

柔和な雰囲気に少し安心する。

「ムーンリット、少し席を外しておくれ」

「…」

ムーンリットは部屋を出る。

すれ違う前に少し頭を下げられた。

「すまないね。彼女には声が出ないよう術を掛けているから」

「いえ…」

別に謝ってほしいわけではないから。

「でも、どうしてキューはここに?」

「僕が連れてきたんだ。ちょっと、あの子に聞かれたくない話があって」

「ここで話しても結局は、キューが兄様に言ってしまいますよ」

私の言葉にお狐様は笑う。

「それはそれは。私の愛し子がこんなにたくさん愛されていると思うと嬉しいね」

「…そうだ。キュー、お狐様に一言言いたかったの」

「そう。大体想像がつくけど、なにかな」

「兄様を愛してるなら、もっと大事にして」

「ふむ」

お狐様は微妙な表情になった…気がする。

「僕なりに、最大限愛してるし大事にしているつもりだよ。あの子の魂は前世で人のために尽くしてきた綺麗なもの。だから、今世では苦労しないようにと思って精神的な成長を早めたり知識をたくさん与えたり…他にも色々なものを与えた」

「兄様はそれを望んでなかった。兄様を大事に思うなら、本人の意思をまず尊重して」

私の言葉にお狐様はきょとんとする。

「本人の意思を…?」

「コミュニケーションの一番初歩だよ?」

「あの子の意思か…」

お狐様は突然頭を抱える。

「それで言うなら、僕はあの子の意思を無視していた。バッドコミュニケーションだったかな」

「そうだよ。兄様お狐様のこと嫌いだよ」

「え!?」

ショック!という顔をしたお狐様に内心呆れる。

とはいえ、兄様に対して善意と好意の塊っぽいからこれから気をつけてくれたら嬉しい。

「…ぐぅっ。嫌われてたなんて。ちょっとした反抗期かなと思っていたのに」

「これから気をつけて」

「むむむむむ…わかった」

本当にわかったのかなぁ。
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