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本物のミレイユ様

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夢の中。私は目覚めた。そこはまるでこの世ではないどこかのような、幻想的な風景。花が咲き乱れ、蝶が飛び交う。

「ミレイさん、気がつきましたか?」

「ここは…?貴女は、誰ですか?」

目の前には美しい少女。

「私はミレイユ。ミレイユ・モニク・マルセルと申します」

「え…?」

それって、私が乗り移った醜い女の子!?

「驚かれるのも無理はありません。順を追ってお話致しますので、私の話を一度聞いていただけますか?」

「は、はい」

ー…

私はミレイユ・モニク・マルセル。マルセル公爵家の長女です。私は所謂『神の愛し子』と呼ばれる位の高い聖女として生まれました。私には双子の妹がいました。次女のマノン・ルシール・マルセルです。

私が生まれたため、マルセル公爵家には神の加護が与えられました。そのため大人達は私達のどちらかが神の愛し子だと思い、見極めることにしたそうです。

成長し、それを知った妹は自分こそが神の愛し子だと嘯きました。私は私こそが神の愛し子だと主張しましたが、妹は私からの『虐め』を偽装工作し、こんなことをする人が神の愛し子であるはずがないと言いました。私はその日から公爵家で腫れ物扱いされ、妹だけが可愛がられるようになりました。

妹は更に、私に毎日死なない程度の毒を盛りました。その結果私の肉体はあのように酷いことに…。醜くなった私は益々公爵家での居場所をなくして、全ては妹の思い通りになりました。

そんな現状を神は嘆き、私を天に召し上げました。それに貴女は巻き込まれてしまったのです。

私は神に、空になった私の身体にミレイさんの魂を繋ぎ止めて欲しいと願いました。そして今に至るのです。

ー…

「…そんなわけですから、私なんかの身体は要らないと思ったらすぐに仰って下さい。ミレイさんは私に巻き込まれたのですから、天の国にも好待遇で迎え入れます」

「ありがとうございます、ミレイユ様…でも、そういうことなら、私まだ生きていたいのでこのままでお願いします」

「そうですか…わかりました。ではそのように」

ミレイユ様はどこかほっとしたように息を吐く。

「あの」

「はい。なんでしょうか?」

「そうなると、もうマルセル公爵家には加護は無くなるのですよね?妹さん、偽物だってバレると思うんですけど、私も私で疑われませんか?」

「その…ミレイさんには大変申し訳ないのですが、その辺は知らぬ存ぜぬで通して欲しいのです。最悪の場合は、今のように夢を通じて家族に本当のことを伝えます。でも、そうでなければ黙っていて欲しいのです。本当の私が天の国で幸せだと知ったら、あの妹なら追いかけてきて天の国ごと破壊しかねませんから。それに…私を信じてくれなかった両親とは顔も合わせたくありません」

「…わかりました」

「本当にごめんなさい。ああ、ただ、婚約者には話してくれて構いませんよ。いずれは中身が別人だと気付くでしょうし」

「え」

「あの人、私が妹に虐げられているのに気付いていながら助けて下さらなかった冷血野郎ですもの。知られてもどうせなにもされませんわ」

「そ、そうですか…」

「…私の身体では、何かと不便かとは存じますが、どうか上手くやってくださいね」

「はい。何から何までありがとうございます!」

「ええ。またいつか」

「はい、またいつか」

こうして私は、ミレイではなくミレイユ・モニク・マルセルとして生きていくことになりました。
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