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ミレイという女の子
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僕はフェリクス・グラシアン・エテルネル。このエテルネル皇国の第一王子。
僕には生まれついての婚約者がいた。ミレイユ・モニク・マルセル。彼女は神の愛し子だった。
誰にでも分け隔てなく優しく、正義感のある女の子。僕と彼女は…婚約者としてというよりかは、将来国を共に支え合っていく同士として非常に相性が良かった。恋人というよりかは幼馴染。それでも、誰よりも親しく信頼が置ける。そんな彼女との日々は間違いなく幸せだった。
だが、ある日から突然ミレイユは彼女の実家で腫れ物扱いされ、彼女の妹…マノンだけが可愛がられるようになった。本物の神の愛し子はもちろんミレイユだったが、マノンが洗脳薬まで使って嘘を吐いたらしい。
また、マノンはミレイユに毎日死なない程度の毒を盛った。その結果ミレイユの美しい身体は酷いことになった。醜くなったミレイユは益々公爵家での居場所をなくして、全てはマノンの思い通りになった。
僕は、何もしてあげられなかった。せいぜいがマノンからのアタックを無視するくらい。ミレイユのことは守ってあげたかったが、マルセル公爵家に直接首を突っ込めるほどの権限は僕にはなかった。
そんな中、ある日ミレイユの様子を見に行くと普段なら僕の軽口に応戦してくるミレイユが何も言い返して来なかった。不審に思った僕が訊ねれば、彼女は自分はミレイユではなくミレイという少女なのだと言った。歳は同じ。孤児院育ちの平民。神の愛し子として天の国に召し上げられたミレイユから、その身体を譲られたのだという。
…まあ、正直面白くなかった。ミレイユのことは将来国を共に支え合っていく同士だと思っていたから、勝手に置いていかれて気にくわない。しかし、神の愛し子として召し上げられたのだから仕方がない。ならばこれからはこの子と支え合っていかなければ。でも、ミレイユは僕を冷血野郎呼ばわりしたことは覚えてろよ?天の国に行ったらお返ししてやる。…まあともかく。僕は抜けてるミレイユの代わりに、魔法でミレイにミレイユの記憶を継承させた。ダイエットのアドバイスもして、後は本人の努力に任せた。
しばらくして見に行くと、ミレイは大分痩せていた。まだ醜いけど。そして護衛として雇ったらしい歳の近い男の子を側に控えさせていた。…なんとなくもやもやする。ミレイユが歳の近い人と喋っていてもなんとも思わなかったものだけれど、ミレイが歳の近い男の子を侍らせているのはなんだか面白くない。とりあえず魔法薬の新しいレシピを渡して、せっかく褒めてあげたというのにむすっとするミレイの頬を摘む。こんなこと、ミレイユにはしたことがなかったんだけど。…まあ、ミレイユとミレイは中身は全く別の女の子なのだから対応に差が出るのは仕方ないのかなと無理矢理自分を納得させた。
さらにしばらくして、ミレイの容姿が完全に元に戻ったと報告を受けた。むしろ余計に美しさに磨きがかかったとまで言われていた。僕は、ミレイのために作らせた新しい婚約指輪を持ってミレイの元へ向かった。これは、お互いに何かあれば指輪が光る魔法がかかっている。さらに、ミレイのために僕が直々にデザインした。まあ、僕がデザインしたのは秘密にしておくけどね。だって、ミレイユの時にはそうしなかったんだから。ミレイユへ贈った指輪はこちらで回収して、思い出の品としてしまいこむ。ミレイへの指輪は、やっぱり良く似合っていた。
それからしばらくして、ある日からマノンから鬼のように手紙が届くようになった。内容が内容なだけに僕は疲弊して、ミレイに癒しを求めた。ミレイに会って抱きしめて、その柔らかな頬を摘むだけで癒される。ミレイに説得され、ミレイユのご両親に事のあらましを伝えた。帰る時もう一度ミレイを抱きしめる。ああ、癒される…。
そしてその日は来た。ついにマノンが呪いという強硬手段に出た。僕は指輪が光った直後にミレイの元へ転移し、ミレイユのご両親から許可を得て解呪、呪詛返しを発動する。回復したミレイを抱きしめると、安堵と愛おしさが溢れてきた。そして自覚する。
ー…ああ、僕は。ミレイに恋をしたらしい。
きっかけというきっかけはなかった。身体は恋愛対象外と決め付けていた幼馴染のものだし。けれども、僕は、何故かこの子に心惹かれる。僕はこの子が、好きなんだ。
僕に泣きついて、わんわん泣いたミレイを黙ってただ抱きしめる。この子のことは、絶対に失わない。そう誓った。
そして季節は移ろい貴族学園に入学することになった。入学パーティーではミレイと楽しくダンスを踊った。無邪気なミレイが可愛らしかった。どんな学園生活になるかはわからないけど、ミレイが一緒なら、きっとすごく楽しくなるだろう。今から楽しみで仕方がない。
僕には生まれついての婚約者がいた。ミレイユ・モニク・マルセル。彼女は神の愛し子だった。
誰にでも分け隔てなく優しく、正義感のある女の子。僕と彼女は…婚約者としてというよりかは、将来国を共に支え合っていく同士として非常に相性が良かった。恋人というよりかは幼馴染。それでも、誰よりも親しく信頼が置ける。そんな彼女との日々は間違いなく幸せだった。
だが、ある日から突然ミレイユは彼女の実家で腫れ物扱いされ、彼女の妹…マノンだけが可愛がられるようになった。本物の神の愛し子はもちろんミレイユだったが、マノンが洗脳薬まで使って嘘を吐いたらしい。
また、マノンはミレイユに毎日死なない程度の毒を盛った。その結果ミレイユの美しい身体は酷いことになった。醜くなったミレイユは益々公爵家での居場所をなくして、全てはマノンの思い通りになった。
僕は、何もしてあげられなかった。せいぜいがマノンからのアタックを無視するくらい。ミレイユのことは守ってあげたかったが、マルセル公爵家に直接首を突っ込めるほどの権限は僕にはなかった。
そんな中、ある日ミレイユの様子を見に行くと普段なら僕の軽口に応戦してくるミレイユが何も言い返して来なかった。不審に思った僕が訊ねれば、彼女は自分はミレイユではなくミレイという少女なのだと言った。歳は同じ。孤児院育ちの平民。神の愛し子として天の国に召し上げられたミレイユから、その身体を譲られたのだという。
…まあ、正直面白くなかった。ミレイユのことは将来国を共に支え合っていく同士だと思っていたから、勝手に置いていかれて気にくわない。しかし、神の愛し子として召し上げられたのだから仕方がない。ならばこれからはこの子と支え合っていかなければ。でも、ミレイユは僕を冷血野郎呼ばわりしたことは覚えてろよ?天の国に行ったらお返ししてやる。…まあともかく。僕は抜けてるミレイユの代わりに、魔法でミレイにミレイユの記憶を継承させた。ダイエットのアドバイスもして、後は本人の努力に任せた。
しばらくして見に行くと、ミレイは大分痩せていた。まだ醜いけど。そして護衛として雇ったらしい歳の近い男の子を側に控えさせていた。…なんとなくもやもやする。ミレイユが歳の近い人と喋っていてもなんとも思わなかったものだけれど、ミレイが歳の近い男の子を侍らせているのはなんだか面白くない。とりあえず魔法薬の新しいレシピを渡して、せっかく褒めてあげたというのにむすっとするミレイの頬を摘む。こんなこと、ミレイユにはしたことがなかったんだけど。…まあ、ミレイユとミレイは中身は全く別の女の子なのだから対応に差が出るのは仕方ないのかなと無理矢理自分を納得させた。
さらにしばらくして、ミレイの容姿が完全に元に戻ったと報告を受けた。むしろ余計に美しさに磨きがかかったとまで言われていた。僕は、ミレイのために作らせた新しい婚約指輪を持ってミレイの元へ向かった。これは、お互いに何かあれば指輪が光る魔法がかかっている。さらに、ミレイのために僕が直々にデザインした。まあ、僕がデザインしたのは秘密にしておくけどね。だって、ミレイユの時にはそうしなかったんだから。ミレイユへ贈った指輪はこちらで回収して、思い出の品としてしまいこむ。ミレイへの指輪は、やっぱり良く似合っていた。
それからしばらくして、ある日からマノンから鬼のように手紙が届くようになった。内容が内容なだけに僕は疲弊して、ミレイに癒しを求めた。ミレイに会って抱きしめて、その柔らかな頬を摘むだけで癒される。ミレイに説得され、ミレイユのご両親に事のあらましを伝えた。帰る時もう一度ミレイを抱きしめる。ああ、癒される…。
そしてその日は来た。ついにマノンが呪いという強硬手段に出た。僕は指輪が光った直後にミレイの元へ転移し、ミレイユのご両親から許可を得て解呪、呪詛返しを発動する。回復したミレイを抱きしめると、安堵と愛おしさが溢れてきた。そして自覚する。
ー…ああ、僕は。ミレイに恋をしたらしい。
きっかけというきっかけはなかった。身体は恋愛対象外と決め付けていた幼馴染のものだし。けれども、僕は、何故かこの子に心惹かれる。僕はこの子が、好きなんだ。
僕に泣きついて、わんわん泣いたミレイを黙ってただ抱きしめる。この子のことは、絶対に失わない。そう誓った。
そして季節は移ろい貴族学園に入学することになった。入学パーティーではミレイと楽しくダンスを踊った。無邪気なミレイが可愛らしかった。どんな学園生活になるかはわからないけど、ミレイが一緒なら、きっとすごく楽しくなるだろう。今から楽しみで仕方がない。
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