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004 意外なお相手?
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書斎へ通されると、テーブルの上に書状が置かれていました。私は父に促されるまま向かいのソファーに腰掛け、その隣にアルドも座りました。
「アルドも来たのか?」
「はい。ベル姉様に婚約のお話とのことで、あまりにも嬉しくついてきてしまいました」
「大した話ではない。しかし、アルドも世話になった御人だからな。まぁ、聞いていきなさい」
父は書状を手にすると、内容を端的に話しました。
「これはアーノルト伯爵からだ。ベルティーナ=ロジエをアーノルト伯爵家へ迎え入れたい。と書かれている」
「私でよろしいのですか?」
「ああ。お前の名が書かれているからな」
父は当たり前だと言わんばかりに真顔で答えました。私の名が書かれていれば、私への婚約のお話になるなんて常識が、この家にあったことに驚きました。
因みに、アーノルトの領土はロジエ領の五倍はあります。辺境伯の名に相応しく、国内随一の騎士団を保有し、経済的にも権力的にも両親が飛び付きそうな名家にございます。
しかし、父は深い溜め息を吐きました。
「全く困ったものだ。前回の婚約者候補は次男坊。今回はなんとアーノルト伯爵だ。ベルティーナに来る婚約も落ちぶれたものだ」
「い、今、どなたとの婚約だと仰いましたか?」
「だから、隣の領地のアーノルト辺境伯だっ。もう病で長くないそうでな。旅立つ前に、ベルティーナを一族に迎え入れたいと書かれている」
それは、同い年のヨハンではなく、そのお父様であるアーノルト伯爵様の後妻と言うことでしょうか。
意外なお相手からの婚約話に、私が呆気に取られていると、隣に座るアルドが大声をあげました。
「はぁっ!? 父上っ。ご、ご高齢のアーノルト辺境伯様にベル姉様を嫁がせるおつもりですか!?」
「それは気が引けるが。会わずに拒否することも無礼極まりない。アルドの師でもあるのだからな。一度お会いして……断れば良い」
断っても良い。そんな言葉が父から出るなど想定外でした。後妻だとしても、アーノルト伯爵家と繋がりが持てるのであれば、喜ぶのだと思っていましたので。
「お断りしてもよろしいのですか?」
「当たり前だ。ベルティーナ、お前がいた方が我が家に二倍の婚約の申し込みが来るのだぞ。最近は大分家格が落ちてはいるが、まだ分からん。お前がいた方が、カーティアによりよい名家へ嫁がせるチャンスが増えるではないか」
やはりカーティアの為なのですね。
一瞬だけですが、期待してしまった自分を平手打ちしてやりたいです。
ですが、今まで一度もカーティアへ婚約の申し込みなど来たことがないのですから、正確には二倍ではありませんが、父が二倍と言うならばそれでいいでしょう。
アルドは隣で頭を抱え「違う、違う……」と呟いていますが、私はこの婚約を成立させて、この家を出ようと決意しました。
あれだけ妹と両親が好き勝手に私の縁談を壊しておいて、今後通常の縁談など来るはずもありませんし、もう、家族に利用されるだけの私ではいたくありませんので。
◇◇
書斎を出るとアルドは雄叫びをあげました。
「ぁぁあああっ! 聞いていた話と全く違うんです。なんでベル姉様が後妻に? 僕、ヨハン様に確認しに行ってきますっ」
「え、ええ。気を付けていってらしてね」
「はいっ!」
アルドは物凄い勢いで廊下を走り去っていきました。
一体ヨハンとどのような取り決めをしていたのでしょうか。
「アルドも来たのか?」
「はい。ベル姉様に婚約のお話とのことで、あまりにも嬉しくついてきてしまいました」
「大した話ではない。しかし、アルドも世話になった御人だからな。まぁ、聞いていきなさい」
父は書状を手にすると、内容を端的に話しました。
「これはアーノルト伯爵からだ。ベルティーナ=ロジエをアーノルト伯爵家へ迎え入れたい。と書かれている」
「私でよろしいのですか?」
「ああ。お前の名が書かれているからな」
父は当たり前だと言わんばかりに真顔で答えました。私の名が書かれていれば、私への婚約のお話になるなんて常識が、この家にあったことに驚きました。
因みに、アーノルトの領土はロジエ領の五倍はあります。辺境伯の名に相応しく、国内随一の騎士団を保有し、経済的にも権力的にも両親が飛び付きそうな名家にございます。
しかし、父は深い溜め息を吐きました。
「全く困ったものだ。前回の婚約者候補は次男坊。今回はなんとアーノルト伯爵だ。ベルティーナに来る婚約も落ちぶれたものだ」
「い、今、どなたとの婚約だと仰いましたか?」
「だから、隣の領地のアーノルト辺境伯だっ。もう病で長くないそうでな。旅立つ前に、ベルティーナを一族に迎え入れたいと書かれている」
それは、同い年のヨハンではなく、そのお父様であるアーノルト伯爵様の後妻と言うことでしょうか。
意外なお相手からの婚約話に、私が呆気に取られていると、隣に座るアルドが大声をあげました。
「はぁっ!? 父上っ。ご、ご高齢のアーノルト辺境伯様にベル姉様を嫁がせるおつもりですか!?」
「それは気が引けるが。会わずに拒否することも無礼極まりない。アルドの師でもあるのだからな。一度お会いして……断れば良い」
断っても良い。そんな言葉が父から出るなど想定外でした。後妻だとしても、アーノルト伯爵家と繋がりが持てるのであれば、喜ぶのだと思っていましたので。
「お断りしてもよろしいのですか?」
「当たり前だ。ベルティーナ、お前がいた方が我が家に二倍の婚約の申し込みが来るのだぞ。最近は大分家格が落ちてはいるが、まだ分からん。お前がいた方が、カーティアによりよい名家へ嫁がせるチャンスが増えるではないか」
やはりカーティアの為なのですね。
一瞬だけですが、期待してしまった自分を平手打ちしてやりたいです。
ですが、今まで一度もカーティアへ婚約の申し込みなど来たことがないのですから、正確には二倍ではありませんが、父が二倍と言うならばそれでいいでしょう。
アルドは隣で頭を抱え「違う、違う……」と呟いていますが、私はこの婚約を成立させて、この家を出ようと決意しました。
あれだけ妹と両親が好き勝手に私の縁談を壊しておいて、今後通常の縁談など来るはずもありませんし、もう、家族に利用されるだけの私ではいたくありませんので。
◇◇
書斎を出るとアルドは雄叫びをあげました。
「ぁぁあああっ! 聞いていた話と全く違うんです。なんでベル姉様が後妻に? 僕、ヨハン様に確認しに行ってきますっ」
「え、ええ。気を付けていってらしてね」
「はいっ!」
アルドは物凄い勢いで廊下を走り去っていきました。
一体ヨハンとどのような取り決めをしていたのでしょうか。
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