縁談を妹に奪われ続けていたら、プチギレした弟が辺境伯令息と何やら画策し始めた模様です

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

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005 妹のドレス

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 分からないことだらけですが、それについて思案する暇は、私にはありませんでした。廊下の奥から、こちらへ駆け寄ろうとするカーティアの姿を捉えたからです。

「お姉様っ。ご婚約のお話ですって?」
「ええ」
「ドレスが必要でしょう? お会いするのは一週間後と聞きましたの。仕立てる時間もありませんし、私のドレスを貸してあげますわ。部屋にいらして」
「ありがとう。カーティア」

 私はカーティアに腕を引かれ久しぶりに妹の部屋へと行くことになりました。



 妹の部屋は屋敷で一番広い部屋です。
 二階の南側の部屋なので、日当たりもよく裏の庭園が見渡せる素敵なバルコニーもあります。
 昔はこの部屋の半分が私の部屋でしたが、妹が狭いとごねたので私は部屋を移動することになりました。

「お姉様。どれにします?」

 妹がクローゼットを開くと、色とりどりのドレスが並んでいました。ざっと見て三十着はありそうです。二十五人斬り達成との裏新聞情報は何だったのでしょう。もっとあるではありませんか。

「お姉様は顔が地味だから、青系のドレスが良いかしら?」
「そうね。でも……」

 何でしょう。この胸元の露出が酷い下品なドレスは。
 これだったら夜会用ではありませんか?
 私が持っている夜会用のドレスの方が上品です。 

「あっ。お姉様の体型だと、胸の辺りが寂しいですわよね。でも、これくらいなら一週間以内にお直しできますわ」
「あまり趣味ではなくて。もう少し露出の少ないドレスはないのかしら?」
「ええっ!? 今の流行りはこれですのよ。やだぁ。お姉様って古くさぁい」

 妹が下品なドレスを手に馬鹿笑いしていると、扉が開き母が入室しました。

「カーティア。ベルにドレスを貸すと聞いたのだけれど?」
「ええ。お母様。でも、お姉様に合う様な古いドレスがなくて困ってましたの」
「あら。それなら私の昔のドレスを貸してあげるわ。アーノルト伯爵様も昔のドレスの方が趣味に合っているかもしれないもの」
「そうね。お姉様は後妻ですし。ふふふっ。さすがお母様だわ!」

 二人は仲良くキャッキャッし始めました。
 妹のドレスよりは良いかもしれません。

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