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8 本気だったらどうしよう(※ディオン視点)

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 僕的には運命の相手だと思ったんだよね。

 小柄で、神様が与えたとしか思えない綺麗な顔。
 純真無垢を装ってビシバシ他人を貶める腹黒さ。

 これは、やれんと。
 とても他人にはくれてやれんと。

 僕は思ったわけ。

 こういう顔だから、もう小さい頃から、男にさらわれ、女にもさらわれ、老人にも聖職者にもさらわれ、願望をべったり擦り付けられ、期待を破れば泣き喚かれ、本当に大迷惑だった。
 
 僕が僕のままでいると、悪霊祓いが始まっちゃった事が6回もある。

 だからもう煙に巻くしかないよね?

 少しは恋もしたけど、相手が僕の内面に納得しないもんだから発展もクソもなかった。

 そうこうしているうちに、僕は童顔で背の小さめな生ける天使になっていた。一生独身かなぁーと思い始めて早3年。

 いた。
 僕みたいなのが。


「……」


 うぅーん。
 ああやって黙って歩いていると、神がかって美しいなぁ。

 ズテンッ!!

 
「!」


 バージンロードでコケた!
 で、起きた!

 

 ざわっ

 ざわざわっ


「……」


 なかった事にしてる?
 テヘッとかお茶目な顔しとくところじゃないの?


「……」


 まさか。

 もしかしたらと、そんな予感はじわじわあったんだけど……


「……」


 まったく、結婚式まで楽しませてくれるよね。
 これから仲良くやって行こうよ。シビーユ。


「……」

「……」


 シビーユが隣に並んだ。
 祭司が祈り始める。

 ああ、これから人生、何倍も楽しいんだろうなぁ。
 そう思うと、にやけちゃうよねー。

 そんな僕、天使の微笑み☆彡


「──誓いますか?」

「はい」

「……はぃ」


 ん?

 シビーユの様子が、おかしい。
 なんか、しおらしい?

 やっぱり女の子だな。
 こんな性格でも結婚式は大切な、かけがえのない幸福の瞬間なんだ。

 
「誓いのキスを」


 僕は、ときめいていた。
 僕はシビーユが好きだ。

 最初は揶揄おうと思って、一瞬でほしくなった。
 死ぬまで彼女といたいと思った。

 この日を迎えられて、本当に幸せだ。

 祭司と参列者の視線を浴びながら、向かい合い、ベールに手を掛ける。


「……っ」

「?」


 泣いているみたいだ。
 可愛いところもあるんだなぁ──……

 ひらり。


「ひじゃがイダい」

「!?」


 ぐっちゃぐちゃに泣いてる!
 最高にみっともない花嫁になってる!!

 はなみずーーーーーッ!!

 転んだくらいで鼻水まで出すなこの箱入り娘がぁッ!!


「ああっ、シビーユ! 僕も愛してる!!」

「うぎゅっ」


 僕は熱烈なキスを演じた。
 顔を包むついでに左右の手で鼻水を拭い、すかざずベールで手を拭いた。しょっぱいキスを繰り返し、頬ずりして涙も僕の頬も涙に濡らす。


「え……っ、は、初めてのチュウ……」

「(今それどころじゃない!)」


 僕らのキャラを考えろよ!
 綺麗な結婚式じゃなきゃダメだろ!!


「わあぁぁぁぁん!」


 ああっ、クソ!
 僕がなにしたって言うんだよ!!

 
「──」


 え?
 これって、僕、攻撃されてる?


「……」


 我妻を、凝視。


「ぅあああああんっ。えぐっ、えぐっ」

「……」


 本気だったらどうしよう。

 痛いの? 
 キスが嫌なの?

 えっ? 
 
 どっち!?
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