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4 私のための夜(※パッツィー視点)
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「ん~まっ」
手鏡の中の私の唇って、いつ見ても素敵。
その上の鼻も、睫毛の長い目も、瞳も素敵。
「んままままっ、チュッ」
どんな男も私にイチコロよ。
シーヴァーは残念だった。
有望そうに見えたのに、なんだか嫌われ者っぽいんだもの。
でも私ラッキーだわ。
この夏の舞踏会で新しい男をゲットしちゃうんだから。
最近爵位を継いだばかりという主催者のウィザースプーン伯爵も独身だし、絶対にシーヴァーよりいい男がウジャウジャいる。誰かと婚約していたってかまわない。シーヴァーの時みたいに奪えばいい。
だって、この美貌に、この体よ?
靡かない男なんて、いるわけない。
まあ、ハズレ籤を引く時もあるけど。
しみったれのヴァンス伯爵シーヴァー・ジョーンズが招かれていないのがその証拠。なんであんな男がいいと思ったのかしら。無駄な労力をかけた分、限られた時間が削られた。ほんと損した。
私の美貌は期間限定。
若くて美しいうちに、最高の結婚をしなくちゃ。
私が幸せになるためなら、誰が不幸になっても構わない。
というか、私を差し置いて冴えない女が幸せになるなんて、許さない。
このウィザースプーン伯爵の別荘で開かれる舞踏会に招かれたのは、ブスとガリガリとおばちゃんとおばあちゃんばっかり。
私ほど美しい女は、ほかにいない。
今夜の主役は私!
新米の伯爵には私なんて高嶺の花だけど、せいぜい崇め奉ればいいわ。
有望株なら結婚してあげるし、他の人と結婚したら愛人にしてあげてもいい。
「ふふっ……」
だって、爵位を継いだとたん辺鄙な土地の別荘を買うような男よ?
お金の使い方をよくわかってる。
「さあ、行くわよプリンセス・パッツィー。運命の夜だわ!」
気合を入れて、部屋を出た。
両親の後ろを慎ましく歩く私に、さっそく視線が集まる。
みんな私にメロメロ~♪
それに、冴えない女たちの嫉妬と羨望の視線も、気持ち悪いけど気持ちいい。
羨ましいでしょう? この美貌に、この体。あなたたちにはないものねぇ~♪
「ようこそ! 我が別荘へ!!」
舞踏会が始まった。
少し古いけれど、飾り付けられた別荘内はけっこう綺麗に整っている。美的センスはなかなかみたいね、ブレント。見直したわ。
「お父様。ウィザースプーン伯爵にご挨拶しましょうよ!」
父を急かして第一候補のウィザースプーン伯爵ブレント・ティプトフトに近づいていくと、すでに人に囲まれていた。背の高い夫婦と、背の低い夫婦……? 親子って年じゃないけど、随分小さいわね。変なの。
「これはこれは、ゴールズワージー伯爵令嬢!」
「?」
背の高い方眼鏡の男が、私の顔を見て言った。
まあ、そこそこ素敵な感じがするけど、隣に立ってる大女にずっとベタベタ触ってるからアホな愛妻家っぽい。愛人になってほしいなんて言われてもお断り。趣味が悪すぎる。
でも、私の事を知ってるって事は……ふふふ♪
どうぞどうぞ、ブレントに売り込んでちょうだい♪
「本日はお招きに与り──」
と、父が挨拶をし始めたところで、方眼鏡が言った。
「あなたも招かれているとは! 婚約者のヴァンス伯爵もご一緒ですかな? 最近は厳しい状況のようですが、なに、すぐに上向きますよ。なんといっても、あなたのような麗しい女性と未来を約束されているのですからね!」
「……」
な、なんなの……?
「そうなんですか! いやぁ、これは僕のミスだなぁ。申し訳ありません、ゴールズワージー伯爵。お嬢様のお相手に招待状を出し忘れてしまったようです」
「い、いえ……」
父もしどろもどろ。
それにしてもブレントってやっぱりバカなんだわ。
却下。
「皆さん!」
ブレントが声を張り上げた。
視線が集まる。
「僕の新しい友人を紹介させてください! ゴールズワージー伯爵令嬢パッツィー・マッギル! 美しいでしょう? でも残念! もう婚約者がいます! お相手はヴァンス伯爵! だから紳士の皆さん、求婚は厳禁ですよ! ただ今夜は彼女と踊る最後のチャンスです! 喧嘩しないでくださいね!!」
「……!」
なんてことを。
なんてバカなの!?
せっかく集まった視線が、すっごく白けて冷たいものに変わった。
最悪。
「……っ」
この舞踏会は、もうダメ。
それもこれも全部、シーヴァーのせいだ。
せめて誇りだけは守らなくては……!
手鏡の中の私の唇って、いつ見ても素敵。
その上の鼻も、睫毛の長い目も、瞳も素敵。
「んままままっ、チュッ」
どんな男も私にイチコロよ。
シーヴァーは残念だった。
有望そうに見えたのに、なんだか嫌われ者っぽいんだもの。
でも私ラッキーだわ。
この夏の舞踏会で新しい男をゲットしちゃうんだから。
最近爵位を継いだばかりという主催者のウィザースプーン伯爵も独身だし、絶対にシーヴァーよりいい男がウジャウジャいる。誰かと婚約していたってかまわない。シーヴァーの時みたいに奪えばいい。
だって、この美貌に、この体よ?
靡かない男なんて、いるわけない。
まあ、ハズレ籤を引く時もあるけど。
しみったれのヴァンス伯爵シーヴァー・ジョーンズが招かれていないのがその証拠。なんであんな男がいいと思ったのかしら。無駄な労力をかけた分、限られた時間が削られた。ほんと損した。
私の美貌は期間限定。
若くて美しいうちに、最高の結婚をしなくちゃ。
私が幸せになるためなら、誰が不幸になっても構わない。
というか、私を差し置いて冴えない女が幸せになるなんて、許さない。
このウィザースプーン伯爵の別荘で開かれる舞踏会に招かれたのは、ブスとガリガリとおばちゃんとおばあちゃんばっかり。
私ほど美しい女は、ほかにいない。
今夜の主役は私!
新米の伯爵には私なんて高嶺の花だけど、せいぜい崇め奉ればいいわ。
有望株なら結婚してあげるし、他の人と結婚したら愛人にしてあげてもいい。
「ふふっ……」
だって、爵位を継いだとたん辺鄙な土地の別荘を買うような男よ?
お金の使い方をよくわかってる。
「さあ、行くわよプリンセス・パッツィー。運命の夜だわ!」
気合を入れて、部屋を出た。
両親の後ろを慎ましく歩く私に、さっそく視線が集まる。
みんな私にメロメロ~♪
それに、冴えない女たちの嫉妬と羨望の視線も、気持ち悪いけど気持ちいい。
羨ましいでしょう? この美貌に、この体。あなたたちにはないものねぇ~♪
「ようこそ! 我が別荘へ!!」
舞踏会が始まった。
少し古いけれど、飾り付けられた別荘内はけっこう綺麗に整っている。美的センスはなかなかみたいね、ブレント。見直したわ。
「お父様。ウィザースプーン伯爵にご挨拶しましょうよ!」
父を急かして第一候補のウィザースプーン伯爵ブレント・ティプトフトに近づいていくと、すでに人に囲まれていた。背の高い夫婦と、背の低い夫婦……? 親子って年じゃないけど、随分小さいわね。変なの。
「これはこれは、ゴールズワージー伯爵令嬢!」
「?」
背の高い方眼鏡の男が、私の顔を見て言った。
まあ、そこそこ素敵な感じがするけど、隣に立ってる大女にずっとベタベタ触ってるからアホな愛妻家っぽい。愛人になってほしいなんて言われてもお断り。趣味が悪すぎる。
でも、私の事を知ってるって事は……ふふふ♪
どうぞどうぞ、ブレントに売り込んでちょうだい♪
「本日はお招きに与り──」
と、父が挨拶をし始めたところで、方眼鏡が言った。
「あなたも招かれているとは! 婚約者のヴァンス伯爵もご一緒ですかな? 最近は厳しい状況のようですが、なに、すぐに上向きますよ。なんといっても、あなたのような麗しい女性と未来を約束されているのですからね!」
「……」
な、なんなの……?
「そうなんですか! いやぁ、これは僕のミスだなぁ。申し訳ありません、ゴールズワージー伯爵。お嬢様のお相手に招待状を出し忘れてしまったようです」
「い、いえ……」
父もしどろもどろ。
それにしてもブレントってやっぱりバカなんだわ。
却下。
「皆さん!」
ブレントが声を張り上げた。
視線が集まる。
「僕の新しい友人を紹介させてください! ゴールズワージー伯爵令嬢パッツィー・マッギル! 美しいでしょう? でも残念! もう婚約者がいます! お相手はヴァンス伯爵! だから紳士の皆さん、求婚は厳禁ですよ! ただ今夜は彼女と踊る最後のチャンスです! 喧嘩しないでくださいね!!」
「……!」
なんてことを。
なんてバカなの!?
せっかく集まった視線が、すっごく白けて冷たいものに変わった。
最悪。
「……っ」
この舞踏会は、もうダメ。
それもこれも全部、シーヴァーのせいだ。
せめて誇りだけは守らなくては……!
応援ありがとうございます!
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