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全てはアルバーノに出会う日の為に

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私は5歳になった。
まだアルバーノとの婚約話は残念ながら出ていない。
しかし、いつその時が訪れてもいいように、侯爵令嬢としての自分磨きは欠かせない。

アルバーノとの再会という目標が出来て、私は強くなったのだ。
「今度こそ幸せを掴んでやる!」と前向きになった私は、初めて人生に張り合いが出て、ゲームの強制力に怯える生き方から解放された気がする。
今は自分の為に学ぼうと、意識が変わっていた。

もしアルバーノに結婚の意志がなくたって、私が優秀な女性だったら側に置いてくれるかもしれないもんね。
ああっ、私ってなんていじらしいの!

なんて自画自賛しながら、価値ある日々を過ごしていた。
ただ一つの問題点を除いてはーー。

「おい、レオナ。お前、読めもしないのにこれ見よがしに難しい本を置いておくなよな。女のくせに」

はい、今日も現れましたよ、恒例のイヤミな奴が……。

ふんぞり返って威張っているこの可愛くない少年は、悲しいことに今世の兄である。
3つ年上の8歳だが、前世の兄のアルバーノと違って、非常に残念な性格と頭をしていた。

「あーら、ごきげんようお兄様。お言葉ですが、もう読み終わりましたわ。非常に興味深い内容でしたわよ?我がカートライトの所領がいかにして発展してきたかとても勉強になりましたわ。お兄様はかの土地が以前水害に見舞われることが多く、ひいお祖父様が画期的な治水工事を行ったことをご存じでして?まずは川の水位を下げるため」

「もういい!!お前は本当に可愛げのない妹だな。兄である俺を馬鹿にしやがって。年下で女のくせに」

私の説明を遮り、いつものバカの一つ覚えが始まった。
こいつは口を開く度に、「女のくせに」「年下のくせに」しか言えないのだ。
この年にして、すでにハラスメント体質が出来上がってしまっている。

一方、すでに3人分の人生を生きてきた私には、最初からそれなりの知識と人生経験がある。
字や言葉は勿論最初から習得済みだし、マナーだって最低レベルは身に付いている。
日本の記憶はさすがに曖昧だけど、それでも私はいわゆるチートなのだ。

出来の良い私を、両親は目に入れても痛くないほどに可愛がってくれている。
私は両親譲りで見た目もいいのだ。
「お嫁になんていかなくてもいいぞ?ずっと一緒だ」などと父が言い出すほどで、正直そこは少し失敗したかもと思っているのだが。

さて、そろそろ私にケンカを売っても仕方がないって学んでくれないもんかねぇ。
まあ、私の存在が余計に彼を拗らせてるんだろうけどさ。
私だって、いつまでもモラハラに怯えていたあの頃の私ではないのだよ。

何度かハードな人生を送ったお陰で、私もすっかり逞しい性格になってしまった。
いつかモラハラ男に会うことが出来たら、今度はギャフンと言わせてやると心に誓っている。

「そんな生意気なお前に、俺がいいことを教えてやろう。来月、俺の誕生日パーティーを父上が開いてくださることになった。お前は5歳だが、参加させてやってもいい」

「はぁ、そうですか。それはありがとうございます」

特になんとも思わず、棒読みで答えていたのだが、ふと気付いてしまった。

あれ?もしかしてそれって、アルバーノもよばれるんじゃないの?

「お兄様!そのパーティーって、誰を招待するんですか?」

急に食い付いた私に、兄はフフンと上機嫌で答える。

「そりゃあ、侯爵令息の俺のパーティーだ。それなりの規模で招くことになるだろうな。俺と知り合っておけばーー」

ってことは……。
アルバーノは伯爵令息だったから、招待されるよね!?
じゃあ、ようやく会えるじゃん!!

まだ続いている兄の自慢話など、とっくに私の耳には入っていない。

「お兄様、ナイスですわ!私、生まれて始めてお兄様の誕生日を祝う気になりました。ああ、こうしちゃいられないわ。可愛いワンピースを用意しないと。ではお兄様、忙しいので失礼致しますわ」

バタバタと立ち去る私の後ろで、「生まれて始めてって……」と呟く兄がいたことを私は知らなかった。

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