【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。

櫻野くるみ

文字の大きさ
10 / 13

小さな嫉妬心

目の前でアメリが嬉しそうにナタリアに抱きついているのを、フェルゼンが憮然とした表情で非難していた。
本心では無理にでも二人を引き剥がしたいが、アメリに倒れられたばかりなので触れるのをためらった結果らしい。

「アメリ、ずるいぞ!ナタリアを抱き締める権利は私だけのものだ!!」

いえいえ、意味がわかりません。
なんでこんな高貴な方々が、私を取り合うかのような発言を?
そして、アメリ様は私に怒っていたのではないの?

状況が掴めず、間抜けな顔で首を傾げると、ナタリアは思い切ってアメリに尋ねてみた。

「あ、あの、アメリ様は、今夜のフェルゼン様のパートナーなのですよね?私、知らずに失礼なことを致しまして・・・」

「そんなの全然いいのよ!!それより、わたくしはあなたをずっと待っていたのよ、ナタリア様。あ、ナタリアでいいかしら?もうわたくし達も親戚のようなものだし。ああ、夢みたい!ナタリア、あなたは救いの女神様だわ!!」

ナタリアから腕を離すと、アメリはご機嫌な様子でくるくると回り始めた。
広がるドレスの裾の模様が美しい。

元気になられて良かったけれど、アメリ様の言葉の意味が全然理解できなかったわ。
こんなパッとしない私が『女神』ってどういうこと?

「あ!こうしてはいられないわ。ダンスのパートナーはもう必要ないし、帰って彼に手紙を書いて結婚式を早めてもらいましょう!!ナタリア、近い内に侯爵家に招待するわ。ゆっくりお話しましょう。ではまたね!」

アメリは嵐のように去っていった。
謎の台詞ばかりを残して・・・

「ええと、アメリ様はフェルゼン様の婚約者ではないのですか?私、てっきり怒られると思って身構えてしまいました」

「違うよ!!ただの親戚だよ。確かにいつもダンスパートナーを頼んでいるけれど、それも彼女しか頼めない理由があったからで。これからはナタリアとだけ踊りたい。パートナーをお願い出来る?」

私がフェルゼン様とこれからも踊るっていうこと?夜会の度に?
無理無理、ダンスは楽しかったけれど、本当は一緒に踊るには身分が全然釣り合ってないもの。
それ以前に、ドレスが無いからもう夜会には来られないし。

「あの、私はこれ以外のドレスを持っていないので、もうお城に来ることもないと思います」

正直に言って断ろうとすると、「そんなこと?服ならいつでも用意するよ?」などと言われてしまった。

いやいや、そういう問題でもないでしょう。
婚約者でもない女性に色々おかしくない?

「身分が釣り合った令嬢と踊るべきでは?」

「私はナタリアじゃないと踊れない。いや、ナタリアとしか踊りたくないんだ!」

またしても子犬のような瞳をしていると思ったら、更に切なそうに言い募られてしまった。

「ナタリア、ナタリアは今日、私と出会ってどう感じた?短い時間だったけれど、少しは楽しいと思ってくれた?アメリが現れて、少しでも妬いてくれたりはしなかった?」

うーん、フェルゼン様と過ごせてどう思ったか。
楽しかったよね、格好いいし。
でも妬く?
妬くって焼き餅ってことだよね?
アメリ様はとても美しいから、お似合いだなーとは思ったけれど・・・で、私じゃとても太刀打ち出来ないなーって・・・
あれ?
なんだか今、ちょっと胸がチクッとしたような、しないような?

恋愛に疎いナタリアは、正直に白状した。

「えーと、ちょっとだけ妬いたかもしれません。でもちょっとだけですよ?言われるまで気付かなかった位ですし。でもそれは、フェルゼン様が今まで会った男性の中で一番素敵な方だから当然」

俯きながら答えていると、ガバッと抱き締められてしまった。

「ああ、可愛い!嬉しいよ、ナタリア!!妬く必要なんて全くないけどね。アメリは隣国へ嫁ぐし、私が愛するのはナタリアだけだよ」

は?
愛する??

なんだか衝撃的な言葉を聴いた気がした。

「あの、私は今日フェルゼン様と出会ったばかりですけれど」

「そんなことは関係ないよ。ナタリアは私の天使だと目があったときからわかっていたから」

天使?
私には全然わからないのですが。
その確信はどこから・・・

しかし会話の途中で夜会終了の時間が迫り、兄のクリスがヨロヨロしながらナタリアを迎えに来ると、フェルゼンは名残惜しそうにナタリアの頬にキスをした。

「フェルゼン様!!婚約者でもないのにいけませんよ!!」

「婚約者だったらいいのかな?」

「それは・・・場合によっては?・・・って!そういうことではありません!!」

「怒るナタリアも可愛らしいね。大丈夫、婚約者になればいいだけだから」

「私がなれるわけがないでしょう!!もうっ、お兄様、帰りますよ!!」

埒があかないとばかりに兄を引っ張って会場を去っていくナタリアを、フェルゼンは見えなくなるまで見つめていたが、笑顔を浮かべて一言呟いた。

「逃がさないよ、ナタリア」


あなたにおすすめの小説

急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…

satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!

本日をもって

satomi
恋愛
俺はこの国の王弟ステファン。ずっと王妃教育に王宮に来ているテレーゼ嬢に片思いしていたが、甥の婚約者であるから届かない思いとして封印していた。 だというのに、甥のオーウェンが婚約破棄をテレーゼ嬢に言い渡した。これはチャンス!俺は速攻でテレーゼ嬢に求婚した。

私は真実の愛を見つけたからと離婚されましたが、事業を起こしたので私の方が上手です

satomi
恋愛
私の名前はスロート=サーティ。これでも公爵令嬢です。結婚相手に「真実の愛を見つけた」と離婚宣告されたけど、私には興味ないもんね。旦那、元かな?にしがみつく平民女なんか。それより、慰謝料はともかくとして私が手掛けてる事業を一つも渡さないってどういうこと?!ケチにもほどがあるわよ。どうなっても知らないんだから!

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

貴族のとりすました顔ばかり見ていたから素直でまっすぐでかわいいところにグッときたという

F.conoe
恋愛
学園のパーティの最中に、婚約者である王子が大きな声で私を呼びました。 ああ、ついに、あなたはおっしゃるのですね。

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。