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32話

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私達が『何でも屋商会』の寮の建物に向かって歩いていると、建物の中から人が出て来た。

「会長、遅かったですね!!何かあったんですか?」

その人は建物から走って私の元まで来た。
その人に苦笑いしながら答えた。

「少しだけね。それよりも今日来る予定だった経理担当者は来た?」

「はい!!少し前に全員着いたので、それぞれ部屋に案内し、今は広間で懇親会をしています!!」

「流石は副商会長。クリスティーナに任せたのは正解だったわね」

私がそういうと私の元までに走って来た人、『何でも屋商会』の副商会長は、頭の上に犬の耳の幻想が見えるくらいの笑顔になった。

そんなクリスティーナは非魔眼所持者であるものの、元々は男爵家の三女で、年は確か今年で30歳だった。
しかし、結婚する相手が見つけられなかったので、家を出て商会で働いていた。
その商会をクビになった所に、偶々居合わせた私が拾ったのだ。

その後は『何でも屋商会』に入れて経理担当として働かせていたが、いつの間にか人事や依頼の査定なんかにも手を出し始めて、いつの間にかクリスティーナだけ不眠不休で働いているような状態になりかけた。
因みに、その状態になるまでの期間は、クリスティーナが『何でも屋商会』に入ってから1週間という早業であった。

そんなクリスティーナはかなり優秀だったので、私としては当然使い潰すつもりなど無いため、休めと言った。
しかし、それでも休まずに働いていたので、仕方なく副商会長にして、無理矢理仕事量を減らしたのだ。

しかし、経理担当から副商会長にしたのに仕事量が減るというのは、『え、なんで?』と素で聴いてしまう程には異常事態だった。
そんなクリスティーナは私の後ろに隠れるように立っていたアリアに気が付き、アリアに目を向けた。

目を向けられたアリアはビクリと体を硬直させた。
流石に処刑されそうになったばかりで、見知らぬ大人との接触は無理かと思い、私がクリスティーナに説明した。

「この子はアリア、黒色の闇魔法の魔眼所持者で、今の所は私が保護してるけど、処刑されかけたばかりだから、あまり近付かないであげなさい」

「そうでしたか。それならアリアさんに一言だけ、アドバイスをしても?」

クリスティーナの言葉を聞いて、私は「どうする?」とアリアに視線を向けた。
すると、アリアは戸惑いつつも頷いたので、私はクリスティーナに言った。

「まあ、近付かないなら良いよ」

「それでは、アリアさん。ここは良い所です。もちろん、最低限のルールはありますし、『何でも屋商会』が無くなれば、無くなってしまう場所でもあります。それに変人や奇人も居ますが、みんな楽しい日々を過ごしています。

そんな日々を作ってくれたのはフロービス様です。今後のアリアさんが、どんな道を進むかは魔眼を持っていない私には分かりません。

しかし、黒色の魔眼所持者というだけで、良い人も悪い人も寄ってくるでしょうし、何かしらの事件にも巻き込まれるでしょう。

仮にその事件で世界を敵に回すことになっても、フロービス様だけは貴方の、そして魔眼所持者達の味方になってくるでしょう。

それを忘れず、これからの人生を楽しんでください」
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