非日常的日常は平穏とは言えない~間違って覚醒したのが淫魔の血ってどういうことですか?~

市瀬雪

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【閑話】○○しないと出られない部屋(ラファ×ギル)

(2)

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魔法草マジックハーブの鉢植えを壊した……って聞きましたけど」

 ラファエルは仕方ないように手を下ろし、改めてギルベルトに声をかけた。

 部屋にはベッドやテーブルセットが置いてあり、狭いながらもゲストルームとしても使えそうな設備が整えられていた。まぁ、今だけで言うなら、軟禁室という方が正しい気もするが。
 そんな状況で、気がつくとギルベルトは悠長にテーブルに用意されていたお茶と焼き菓子に手を付けていた。

「どういうことなんです?」

 ラファエルは頭が痛くなるのを感じながら、ギルベルトの方へと歩いて行く。
 いまのところ、外界との連絡手段も見つからないし、どうすれば出られるのかも分からない。このままでは、アンリの機嫌が直るまでずっとこのままかもしれない。

 ……このギルベルトおばかな悪魔のせいで。

 ギルベルトはかじって割ったクッキーをくわえたまま、開き直るように言った。

「勝手に壊れたんだよ」
「勝手に?」
「そう。鉢が勝手に飛んでって……」
「ばかなんですか」

 いえ、知ってましたけど。
 子供でももっとましな言い訳しますからね。

 ラファエルは諦めたように正面の席に腰を下ろすと、まるで最初からその予定だったかのように、目の前に置かれていた二つ目のカップを手に取った。魔法のせいだろうか、まったく冷めた感じのない、温かなハーブティの香りが鼻腔を擽る。

「俺は悪くない」

 ギルベルトは相変わらず不遜な態度で言葉を重ねた。



 *  *

 風や太陽光に当てるため、アンリの家では今日、サンルームに置いてあった鉢植えの大半が庭に出してあった。
 そのいくつかを、ギルベルトが壊したのだ。

 昨夜、ギルベルトは一人の男をナンパして、そのまま近くの宿で飲んでいた。もちろん、ほどよく酔わせた後には別の意味でも楽しむ予定で。
 なのに気がついたときにはギルベルトの方が先に酔い潰れていて、そのまま朝を迎えてしまった。
 しかも、目が覚めたらそこに相手の姿はなく――それどころか、ギルベルトの有り金も全て消えていた。

 もともとギルベルトは酒に強い方ではない。しかし、それにしても昨夜は潰れるのが早すぎた。きっと薬でも盛られたに違いない。
 要はかもられたのだ。それに気付いたギルベルトは、むしゃくしゃして物に当たってしまった。

 とはいえ、さすがにアンリの所有物に直接当たったわけじゃない。たまたま遠くから蹴飛ばした石や木の枝が、思ったよりも勢いよく飛んでしまい、結果、弾かれた小さな鉢植えが木の幹に当たって粉々になったのだ。他にもドミノ倒しのようになってしまったものもあった。

 なんで鉢植えがあんな軽いんだよ……。あ、もしかして魔法の何か?
 あれってもしかして、めちゃくちゃ大事なものだったりする?

 固まったまま、しばし冴えない頭で考えていたギルベルトだったが、

「あ……つーか、ここってアンリの家――」

 思い至ったギルベルトは、弾かれたように羽を出して飛び立とうとした。
 もちろん、逃げるために。

 だがそれも叶わなかった。その一部始終を屋根の上から見ていた青い鳥リュシーに現行犯で捕まったのだ。
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